著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。
自閉症をはじめ、発達障害児の中には、〝自由″な場面・活動で自分が何をすればいいのかに困る様子がよく見られます。
著者の療育現場でも、〝自由″場面に苦手さを持つ子どもたちは多くいます。
それでは、なぜ自由場面に苦手さを持つのでしょうか?
そして、自由場面に苦手さを持つ子どもに対してどのような対応方法が必要なのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児支援で必要な自由場面が苦手な子どもへの理解と対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤博之(2020)親も教師も悩み解決! こんなときどうする?発達が気になる子への指導・支援Q&A100.明治図書.」です。
なぜ、自由場面が苦手なのか?
著書には、〝自由″遊びが苦手な子どもにはある特徴があると記載されています(以下、著書引用)。
そのようなタイプの子は、概してごっこ遊びが苦手で、人や遊びへの興味が弱いため、他児と一緒にいても何をしてよいかわかりません。
著書の内容を踏まえると、自由場面が苦手な子どもの特徴として、〝ごっこ遊び″の苦手さ、つまり、〝イメージ力(象徴機能)″の発達に課題があると考えられます。
そして、〝ごっこ遊び″の苦手さは、人と様々な関係や活動を共有・発展させる難しさがあることに関連づいてきます。
そのため、自由度の高い環境に身を置くと、自分でその状況・文脈を把握して、臨機応変に行動することが難しくなると言えます。
それだけ、〝ごっこ遊び″の核となる、〝イメージ力(象徴機能)″は、〝自由″といった場面において必要な力だと言えます。
自由場面が苦手な子どもへの対応について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
「象徴機能」(イメージ力)を育てることが求められます。特に、自閉傾向のある子にとっては、「イメージ力」の獲得は非常に難しく、しかし、何とか育てなければならないと考えられます。
まずは、自由遊びを行う前に、ある程度の枠組みの中で遊ぶ経験を行うとよいでしょう。自由場面が苦手でも、簡単なルールがあれば遊びに参加しやすくなります。
著書の内容には、自由場面が苦手な子どもへの対応として、〝イメージ力(象徴機能)″を育てることが重要であると記載されています。
中でも、自閉症児は定型発達児と比べると、〝イメージ力″の発達に困難さを抱えていることが分かっています。
そのため、〝イメージ力″を少しずつ育てていくためにも、完全に〝自由″といった遊びではなく、ある程度、〝ルール″や遊びの内容が決まっているといった〝枠組み″を整えていくことが、集団参加にも繋がり、効果的だと考えられています。
著者の経験談
著者の療育現場でも自閉症児などを中心に〝自由″場面を苦手とする子どもは多くいます。
一方で、ある程度、遊びの〝枠組み″があることで、他児との集団遊びを楽しむことができる子どもは多くいると感じています。
つまり、苦手とする〝イメージ力″をある程度カバーできる大人の関わり、遊びのルールが必要であり、こうしたサポートを得ることで、自閉症児同士でも、個人差はありますが、共に遊びを楽しむことはできると思います。
また、〝イメージ力″が育っていくことで、子どもは様々な環境・他者との関わり方に柔軟性が出てくると実感しています。
これまで、〝自由″場面が苦手で、何をしてよいか分からなかった子が、〝イメージ力″が高まることで、自分から集団遊びに参加する機会が増えたり、他者と様々なイメージを共有して楽しむ様子が見られるようになったケースも少なからずあると感じています。
それだけ、〝自由″場面への適応には、〝イメージ力(象徴機能)″の育ちが必要だと言えます。
以上、【発達障害児支援で必要な自由場面が苦手な子どもへの理解と対応】療育経験を通して考えるについて見てきました。
自由場面が苦手な子どもの対応として、〝環境調整″の視点もまた必要です。
事前のスケジュールの設定や伝達、安心して過ごせる場所、信頼のおける人との関わりなど、様々な〝環境調整″の方法があります。
今回は、〝環境調整″とは異なる視点、つまり、〝イメージ力(象徴機能)″の視点から自由場面が苦手な子どもへの理解と対応について見てきました。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちのイメージ力を少しでも育てていけるように、遊びの工夫をしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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加藤博之(2020)親も教師も悩み解決! こんなときどうする?発達が気になる子への指導・支援Q&A100.明治図書.