発達障害(神経発達障害)には、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如多動性障害)、SLD(限局性学習症)、DCD(発達性協調運動障害)、ID(知的障害)など様々なものがあります。
発達障害児の中には、相手との〝距離感″がうまくつかめずに、非常に近い〝距離感″で相手と関わることがあります。
そのため、相手から不快に思われたり、場合によってはトラブルに発展することもあります。
それでは、相手との距離感を教えるためにはどのような方法があるのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児支援で必要な相手との距離感を教える方法について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.」です。
相手との距離感を教える方法について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
片手を伸ばして相手に当たらない距離、または一メートルと数字を示すとわかりやすくなります。相手と握手やハイタッチをして、手を離した距離と決めるとわかりやすいかもしれません。フープを使って自分と相手の間に距離をとることで、距離感を身をもって実感してもらってもいいでしょう。
著書の内容から、相手との〝距離感″を教える方法として、実際に身体を通して具体的に伝えることが重要であると記載されています。
つまり、〝少し離れよう″〝もっと距離をとろう″などと、言葉で伝えることは、抽象的でわかりにくいため、上記のような方法(引用文にあるような方法)が必要だと言えます。
著者の療育現場にも、他者との〝距離感″がうまくとれずに近づきすぎてしまう子どもがいます。
例えば、気になる子どもがいる時に、その子にぶつかるほど近づきすぎてしまう、他児が遊んでいる物が気になり他児にぶつかりそうになりながらその物を見ようとする、など〝距離感″に関わる問題があります。
こうした子どもに対して、著者が言葉で〝少し離れよう″などと伝えても、その時は少し離れることがあっても定着が難しいと感じています。
それは、言葉で漠然と伝えることは非常に抽象的なため、場面に応じて変化し続ける他者との〝距離感″をうまく学ぶことにおいて汎用性が低いことが要因だと思います。
そのため、著書の記載にある身体を通して具体的に教える方法を考えていくことが必要だと言えます。
〝ボディイメージ″を鍛える方法も重要
相手との〝距離感″の理解には、〝ボディイメージ(自身の身体へのイメージ)″を鍛える方法も必要だと考えられています。
〝ボディイメージ″を鍛える方法として、相手の動きを真似る遊び、トンネルくぐり、ジャングルジム、手押し相撲など、様々な方法があります。
自らの身体(特に粗大運動)を使って、自分の体について理解を深めることが大切です。
〝ボディイメージ″の育ちには、〝触覚″〝固有感″〝平衡感覚″といった様々な感覚の発達とその統合が根底的な支えになっていると言われています。
そのため、上記の遊びなどを通して〝ボディイメージ″を育てていく視点もまた必要です。
著者の経験談
著者はこれまで様々な発達障害児・者と関わってきています。
その中で、他者との〝距離感″がうまくつかめていない人も多いと感じています。
そういった人に共通する特徴が、自分の身体・動作のイメージを苦手としていることが多いと思います。
例えば、相手の動きを見てその動きと同じように自分の身体を動かす、アスレチックを見た際に、アスレチックをクリアする動作をイメージして実行に移す(イメージ通りに体を動かす)、などがあります。
こうした全身運動は〝粗大運動″と言われていますが、発達障害の方の中には、自分の身体をスムーズに動かすこと、周囲の環境に応じて身体を協調させて動かすことを苦手としている印象を受けることがあります。
そのため、今回見てきたように〝ボディイメージ″を鍛えていくことが長期的に見ても有効だと思います。
実際に、様々な身体を通した遊びから〝ボディイメージ″が着実に育っている子どもは、他者との〝距離感″がうまくとれるようになってきていると主観的な理解ですが実感するところでもあります。
以上、【発達障害児支援で必要な相手との距離感を教える方法】療育経験を通して考えるについて見てきました。
相手との距離感の把握には、目には見えづらい感覚の問題が潜んでいます。
そのため、今回見てきたように感覚統合の視点について理解を深めることもまた重要だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちが相手との距離感をうまく取りながら過ごすことができるように支援の在り方を見つめ直していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.