著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。
療育現場では、時々、子どもたち同士での〝喧嘩″が見られることがあります。
〝喧嘩″にも様々な背景がありますし、どのような子どもたちが〝喧嘩″をするかどうかで、その内容もまた変わってきます。
それでは、そもそも喧嘩は悪いことなのでしょうか?
また、喧嘩への対応としてどのような視点が必要なのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児支援で必要な喧嘩への理解と対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤博之(2020)親も教師も悩み解決! こんなときどうする?発達が気になる子への指導・支援Q&A100.明治図書.」です。
喧嘩は悪いことか?
著書には、〝喧嘩″そのものを悪いこととは捉えていません。
逆に、〝喧嘩″を通して、 〝他者と自分の違いを知る″などメリットもあると記載されています。
つまり、〝喧嘩″によって発達が促進されるメリットもあるということです。
著者が療育現場で関わる子どもたちにも、時々、〝喧嘩″が見られることがあります。
〝喧嘩″⇒〝仲直り″を通して子どもたちの関係はさらに深いものへと発展していく場合もあると感じています。
一方で、注意点もあります。
それは、お互いの関係性が非常に悪い場合、発達段階がだいぶズレている場合、自尊心がうまく発達していない場合など、そもそも〝喧嘩″がうまく成立しないことがあります。
そのため、両者の関係性や個々の発達状態(心の成長も含めて)、〝喧嘩″が成立するかどうかもまた必要な視点だと思います。
以上の内容を踏まえて、次に、喧嘩に対する対応方法について見て行きます。
喧嘩への対応について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
時間がかかっても本人同士でその場を解決させることを目指します。そのために、日頃から以下のことを大切にしていきましょう。
上手にかんけをするための土台作り
・情緒の安定を図る(発散、ボディイメージ、静止する力)
・自己コントロール力を身につける(だんだん~する力)
・遊びなどのルールを獲得する(トランプ、すごろく、風船バレーなどのゲームや集団遊び)
著書の内容から、〝喧嘩″への対応として、時間をかけても本人同士で解決を目指すことが大切だと記載されています。
もちろん、先に見たように、ある程度〝喧嘩″が成立する条件をクリアしていること、その上で、暴力・暴言に繋がらないように見守りながら(時に介入し)、子どもたち同士での解決を方向付ける関わりが必要だと言えます。
一方で、〝喧嘩″を行うための土台作りもまた大切です。
著書にある〝土台作り″(情緒の安定を図る、自己コントロール力を身につける、遊びなどのルールを獲得する)はどれも著者の実感としても重要だと感じてます。
〝情緒の安定を図る″に関しては、日頃から関わる大人が安全・安心基地を提供していきながら信頼関係を構築していくこともまた重要であり、子どもは信頼関係(愛着関係)の中で、〝自己コントロール力″を獲得していくところも大きくあると感じています。
さらに、〝遊びのルールを獲得する″ことは、他者と特定の目標に向けて協力して行動する(役割分担なども含めて)体験が積み重なることで、社会性の発達に貢献していきます。
また、遊びの中でルールがあると他者とうまく関わることができたという成功体験もまた必要です。
つまり、〝喧嘩″によって成長していくためにも、その〝土台作り″が重要なカギを握っているのだと言えます。
以上、【発達障害児支援で必要な喧嘩への理解と対応】療育経験を通して考えるについて見てきました。
人によっては、喧嘩はよくないものだと考えている場合もあると思います。
著者はあまり喧嘩をするタイプの人間ではありませんが、喧嘩をした相手と仲直りすることで、お互いの関係性がさらに深まったと感じたこともあったと思います。
また、喧嘩以外にも他者との関係を深める方法はたくさんあると感じています。
そのため、喧嘩を推奨するというよりも、喧嘩そのものを悪いものとは捉えずに、喧嘩によって学ぶこともあるという理解が必要なのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちがより良い発達を遂げていけるように、どのような関わり方が大切であるのかについて学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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