発達障害(神経発達症)とは、簡単に言えば、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)、学習症(SLD)など、様々な生得的な発達特性(AS、ADH、SLなど)に加え、環境への不適応状態(障害:Disorder)が見られる状態のことを言います。
発達障害児支援には、発達特性を踏まえた様々な支援方法があります。
支援を進めていく前提として、支援者の支援に対する構え(スタンス)が必要です。
それでは、支援において大切なスタンスにはどのような視点があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児支援で大切な支援のスタンスについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、7対3の関係を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「前田智行(2024)「できる」が増えて「自立心」がどんどんアップ!発達障害&グレーゾーンの子への接し方・育て方.大和出版.」です。
発達障害児支援で大切な支援のスタンス:7対3の関係
以下、著書を引用しながら見ていきます。
子どもの提案に乗って遊ぶことで、①信頼関係の構築、②話す/聞く力、③我慢して折り合いをつける力、④ルール、マナーを守る力など、さまざまな力が発達していくのです。
著書にあるように、発達障害児支援で大切なこととして、まずは、子どもとの〝①信頼関係の構築″です。
〝この人といると安心できる″〝この人といると楽しい″〝この人は自分のことをわかってくれる″など、子どもが大人に信頼を寄せるような関わりが大切です。
〝①信頼関係の構築″ができてくると、〝②話す/聞く力″が出てきます。
つまり、〝好きな人と話したい″〝好きな人の話なら聞ける(聞きたい)″といった思いが出てきます。
このような信頼関係の基盤と密な関わりができてくることで、〝③我慢して折り合いをつける力″〝④ルール・マナーを守る力″が育っていきます。
例えば、大好きな人からの提案には仕方なく我慢できる(相手に合わせようとする)、好きな人が言ったルールやマナーを守ろうとする行動が出てくるなどです。
私たちは、信頼のおける相手が言ったことなら、我慢したり、約束を守ろうとする傾向があるとかと思います。
それだけ、誰が言ったかによって子どもの行動が左右されるほど、根底にある信頼関係は大切だということです。
以上を踏まえて、著書には7対3の関係の大切さが述べられています。
以下、著書を引用しながら見ていきます。
7割は本人のやりたい遊びに没頭させてあげましょう。
残りの3割は、大人から遊びを提案して、社会性を伸ばす機会をつくってあげることが必要です。
著書の内容を踏まえると、信頼関係ができてきたからといって、大人が提案してばかりしていると、関係が崩れることがあります。
そのため、7割は本人がやりたいことを許容して、残りの3割は後の自立心や社会性を育てるためにも、大人からの提案をしていくことが必要だと言えます。
補足として、信頼関係がまだできていない段階では、子どもの提案に全て乗って(もちろん、乗れないものもあるかと思いますが)、一緒に活動する(遊ぶ)ことが大切だと著書には記載があります。
まずは、子どもを中心に置き、その後は、徐々に大人からの提案も多すぎない程度(7対3の関係)にしていくといった支援のスタンスが大切だと言えます。
著者の経験談
著者がこの7対3の関係を読んだ際に、療育現場でうまく関わることができた子どもたちの顔がはっきりと思い浮かびました。
以前の著者は、事業所や園のルールを優先する傾向がありました。
しかし、こうした内容は部分的には大切ですが、子どもとの信頼関係を作っていく上で、大きな障壁になる場合もあります。
著者がうまく支援が進んだと感じるケースの大多数は、まずは子どもとの信頼関係を最優先にして、子どもの提案に可能な限り乗っていくことだと感じています。
つまり、子どもの思いや興味関心に心を寄せて、共に活動を楽しむということです。
そこから先が面白いのは、信頼関係ができてくると、著者の提案を許容する姿が少しずつ増えていく様子が見られるといったことです。
子どもたちは、日々、成長・発達していきます。
そのため、信頼関係ができていく中で(非常に時間がかかるも長期的にはとても大切)、関係性以外の様々な力の育ち(著書で見た②話す/聞く力、③我慢して折り合いをつける力、④ルール、マナーを守る力など)が成長・発達していきます。
信頼関係ができた後も、子どもの思いに重心を置き、その上で、大人の意思も伝えていくことが、支援のスタンスとしてもとても大切なことだと感じています。
以上、【発達障害児支援で大切な支援のスタンス】7対3の関係を通して考えるについて見てきました。
今回見てきた支援のスタンスは、何も発達障害児支援の現場だけに限って言えるものではないと思います。
私たち大人が子どもと関わる際に大切な心構えだと感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちと信頼関係を構築していきながら、子どもたちの発達に少しでも貢献していけるような関わり方を試行錯誤していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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前田智行(2024)「できる」が増えて「自立心」がどんどんアップ!発達障害&グレーゾーンの子への接し方・育て方.大和出版.