発達障害(神経発達症)とは、簡単に言えば、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)、学習症(SLD)など、様々な生得的な発達特性(AS、ADH、SLなど)に加え、環境への不適応状態(障害:Disorder)が見られる状態のことを言います。
発達障害児支援には、発達特性を踏まえた様々な支援方法があります。
発達障害児の中には、〝勝ち負け″へのこだわりが強く見られることがあります。
こうした子どもは、自分が負けると感情を爆発させたり、自分が負けそうになると途中で遊びから抜け出す様子が見られます。
それでは、勝ち負けのこだわりの強さに対して、どのような対応方法があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児支援で大切な勝ち負けのこだわりへの対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、協力型ゲームを例に理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「前田智行(2024)「できる」が増えて「自立心」がどんどんアップ!発達障害&グレーゾーンの子への接し方・育て方.大和出版.」です。
勝ち負けのこだわりへの対応:協力型ゲームを例に
〝勝ち負け″のこだわりへの対応としては様々な方法があるかと思います。
ここでは、〝協力型ゲーム″を例に見ていきます(以下、著書引用)。
ここで大事なのは、「勝つことが楽しいのではなく、一緒に遊ぶことが楽しい」という事実に気づかせること。
そのために、まずは協力型ゲームで一緒にゴールを目指す経験を積んで、一緒に遊ぶ時間を楽しめる環境設定をしてみましょう。
著書には、〝協力型ゲーム″を通して、まずは、〝勝ち負け″よりも一緒に遊ぶ楽しさを学べるような環境調整をすることが大切だとしています。
著書には、〝協力型ゲーム″の例として、〝ソリティア″〝脱出!おばけ屋敷ゲーム″〝ito″などを紹介しています。
著者は長年、療育現場を通して、様々な子どもたちと関わってきていますが、中には、〝勝ち負け″のこだわりが強く、自分が負けそうになると急に機嫌が悪くなったり、実際に負けると癇癪を起こすなど、対応が難しいケースを見る機会がありました。
その中で、他児と〝協力する″遊びを活用することで、勝ち負けへのこだわりが徐々に緩和されていった例も少なからずありました。
それでは、次に著者の療育経験を紹介していきます。
著者の経験談
遊びで負けると癇癪を起こすA君
小学校中学年のA君は、サッカー遊びやボードゲームなどで自分が負けると癇癪を起こすほど〝勝ち負け″にこだわりが見られる子どもでした。
そのため、著書は子ども同士、〝勝ち負け″が発生しないように互いに〝協力する″遊びを取り入れていきました。
例えば、サッカー遊びでは、大人VS子ども(A君も含め)、戦いごっこでも、大人VS子ども(A君も含め)というルールの中で遊ぶように環境調整をしていきました。
すると、A君は、他児と協力して遊ぶ楽しさが徐々に高まっていき、その中で、仲間意識が芽生え、他児の存在を快く受け入れて遊ぶようになっていきました。
次第に、〝勝ち負け″へのこだわりは減り、少しずつ自分から〝○○君と勝負してみたい!″など、自分から他児と対戦を要求するようになっていきました。
最初は心配でしたが、勝負には負けることもあると事前に伝えていきなが、他児との対戦遊びを初めていきました。
すると、A君が負けることがあっても、思いのほか、不機嫌になったり、癇癪を起こす様子はほとんど見られなくなっていきました。
さらに、A君は相手に負けても、相手の良さ、強さを称賛する言葉を口にする様子も出てきました。
おそらくこうしたA君の行動の変化(成長)の要因には、他児と〝協力する″遊びを通して、共に遊ぶ喜びを感じながら、様々な他児の性格や思いを理解できるようになったこと、そして、自分が負けても悪いことが起こるものではない、といったことに気付けたからだと思います。
以上、【発達障害児支援で大切な勝ち負けのこだわりへの対応】協力型ゲームを例に考えるについて見てきました。
発達障害児の中には、勝ち負けへのこだわりが見られることがありますが、こうしたこだわりに対して、適切な対応や環境調整が取られることで、少しずつ成長と共に軽減していくのだと感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害児への様々な支援の視点を学んでいきながら、その視点を療育実践に繋げていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【発達障害児の〝勝ち負け″へのこだわり】療育経験を通して考える」
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前田智行(2024)「できる」が増えて「自立心」がどんどんアップ!発達障害&グレーゾーンの子への接し方・育て方.大和出版.