発達障害児への支援と言えば、本人への直接的な支援も重要ですが、それに加えて、〝保護者支援″もまたとても必要です。
発達障害児(その傾向のある子どもも含め)、特に、年齢が小さい子どもの場合には、診断が付いていない、保護者がその特性に気づいていない場合も多くあります。
その中で、関わる支援者は発達障害児への支援において、同じ共通認識を保護者の方と持ちながら支援にあたることが大切です。
それでは、保護者の方に子どもの発達上の問題をうまく理解してもらうためにはどのような対応が必要だと考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児を持つ保護者支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、子どもの発達上の問題の理解について必要な5つのポイントを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岩永竜一郎(2022)発達症のある子どもの支援入門-行動や対人関係が気になる幼児の保育・教育・療育-.同成社.」です。
※幼児を対象として書かれた本ですが、学童期など他のライフステージでも活用できる視点も含まれていると思います。
子どもの発達上の問題の理解について必要な5つのポイント
著書には子どもの発達上の問題の理解について、以下の5つのポイントが書かれています(以下、著書引用)。
保護者との信頼関係を築く
第三者的な立場の職員が介入する
気になる行動に対する支援を行う
保育者が支援する姿勢を示す
周囲が困っていることではなく、当該児童自身が困っていることを伝える
それでは、次に、以上の5つのポイントについて具体的に見ていきます。
1.保護者との信頼関係を築く
以下、著書を引用しながら見ていきます。
子どもの特性について説明する前に保育者と保護者の信頼関係がどの程度できているかが重要なポイントになります。
著書の内容から、まずは、保育者(養育者)との信頼関係の構築が必要です(〝保護者との信頼関係を築く″)。
逆にうまくいかない対応の例としては、子どもの発達障害に関する問題をストレートに伝える、あるいは、それを醸し出すような伝え方をするなどがあります。
保護者との間で信頼関係ができていない状態で、こうした内容のことを伝えてしまうと、保護者が養育者に対する不信感を募らせる恐れがあります。
そのため、子どもの発達上の問題を指摘する場合には、ある程度、保護者との間に信頼関係ができている必要があります。
著者は子どもの発達上の問題を保護者と共有することがありますが、あくまでも段階を踏んで伝えていくことを大切にしています。
その中で、保護者の方から相談してくれるようになった、また、保護者から見ても養育者のことを子どもが信頼している(好き・安心・頼れる存在になっている)様子が増えてきたことが、様々な内容の事(発達上の問題に関する)を伝える重要な指標であると感じています。
2.第三者的な立場の職員が介入する
以下、著書を引用しながら見ていきます。
理想としては、園外の専門家が伝えることができると良いでしょう。
園外の専門家に依頼することが難しい場合は、園内の第三者に協力してもらい、保護者に説明することを検討すべきでしょう。
子どもの発達上の問題を伝えていく上で、第三者からの伝達の検討も必要になってきます(〝第三者的な立場の職員が介入する″)。
その際に、著書にあるように、第三者には園外(外部)の専門家への依頼、あるいは、園内(内部)の専門家への依頼の検討が考えられます。
第三者、そして、専門家という立場の職員であれば、仮に、保護者が担当の養育者の対応をよく思っていない、あるいは、養育者が対応することでの保護者との関係の悪化を防ぐことができます。
著者の実感としても、担当養育者(著者)が伝えること以上に、第三者の専門家が伝えた方が、保護者の方にうまく情報が伝達された例は少なからずあったように思います。
もちろん、それには、専門家としての技量がとても必要になってきます。
3.気になる行動に対する支援を行う
以下、著書を引用しながら見ていきます。
保護者に子どもの行動の問題を伝えるためには、あらかじめ、保育者が必要な支援を実践してみてその変化を見ておくことが必要になります。
著書の内容を踏まえると、保護者の方に子どもの気になる発達上の問題を伝える際には、まずは、支援をすでに実施している、そして、支援の効果をある程度把握しておくことが大切です(〝気になる行動に対する支援を行う″)。
こうした取り組みの実際を保護者に示すことで、保護者から見て本当に子どものことを考えているといったポジティブな姿勢を示すことができます。
著者の療育現場でも、取り組み内容や今後やろうとしていることを伝えることを大切にしており、具体的な対応を示すことで保護者からの信頼を少しずつ獲得している所が多くあるといった実感があります。
4.保育者が支援する姿勢を示す
以下、著書を引用しながら見ていきます。
保護者に医療機関などの専門家につながることの必要性を伝える場合には、保育者がその子どもを支援していくつもりであると保護者にわかってもらうことが必要です。
保育者(養育者)が子どもとの関わりの中で、外部機関との繋がりの必要性を感じ、そのことを保護者に伝える場合の想定になります。
著書によれば、このような時に大切なポイントは、外部の専門家が加わったとしても、保育者(養育者)もこれまでと変わらずに支援をしていくことを伝えていくことが大切です(〝保育者が支援する姿勢を示す″)。
つまり、保護者の方が養育者と距離ができてしまうのではないかといった不安をしっかりとサポートしていくということになります。
5.周囲が困っていることではなく、当該児童自身が困っていることを伝える
以下、著書を引用しながら見ていきます。
他の子どもや保育者自身が困っている場合にも、当該児童が困っているという言い方をすることが大切です。
問題の指摘よりも支援の重要性を強調することが必要になります。
子どもに関わる保育者・養育者は、当該児童が起こす様々なトラブルに直面することが多くあります。
もちろん、著者も当該児童が起こす問題に頭を悩ませることは多くあります。
一方で、周囲の困り感以上に、最も困っている(今後困っていく)のは当該児童だといった認識を持つことが大切です。
そのため、著書にあるように、様々なトラブルや問題があっても、保護者の方への伝達内容は、当該児童自身が困っていることを伝えていく必要があります(〝周囲が困っていることではなく、当該児童自身が困っていることを伝える″)。
例えば、「○○君は友達とうまく関わりたいのですが、うまく関わることができずに○○してしまっていると思います」などのような伝え方をしていくといったものです。
そして、その中で、「○○の問題を解決していく上で、○○君の特性を理解していきながら支援方法を考えていくことが大切です」などと、支援の重要性を伝えていくことが大切だと言えます
著者も療育実践を通して、子どもに必要な配慮や支援についての伝達を多く行うようにしています。
つまり、子どもを主語にして(中心に置き)、○○の困り感を抱えているため、○○のような配慮や支援が必要だという流れを伝える意識や工夫が重要だと言えます。
以上、【発達障害児を持つ保護者支援】子どもの発達上の問題の理解について必要な5つのポイントについて見てきました。
保護者の方にも様々なタイプがあります。
そのため、保護者支援において、保護者の特徴や性格などを把握していくことも大切だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもへの直接的な支援に加えて、保護者支援についても学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【発達障害児支援の専門性について】療育経験を通して考える」
岩永竜一郎(2022)発達症のある子どもの支援入門-行動や対人関係が気になる幼児の保育・教育・療育-.同成社.