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【発達障害児を持つ保護者の障害受容への支援】療育経験を通して考える

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保護者自身が自分の子どもに発達障害の可能性があることに気がついた、あるいは、他者からその可能性を指摘されるなど、障害への気づきの経路は様々あります。

著者はこれまで幼児期から学童期のライフステージを対象に療育を行ってきています。

療育を通して、子どもたちへの直接的な支援をすることはもちろんのこと、保護者への支援も同時にとても必要だと感じています。

保護者への支援の一つに〝障害受容″の観点があります。

 

それでは、発達障害児を持つ保護者支援について、障害受容の観点からどのような支援が大切だと考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児を持つ保護者の障害受容への支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岩永竜一郎(2022)発達症のある子どもの支援入門-行動や対人関係が気になる幼児の保育・教育・療育-.同成社.」です。

 

 

※幼児を対象として書かれた本ですが、学童期など他のライフステージでも活用できる視点も含まれていると思います。

 

 

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発達障害児を持つ保護者の障害受容への支援について

一般的に〝障害″といってもその内容は非常に多様です。

また、同じ診断を受けてもその状態像もまた多様です。

 


それでは、〝発達障害(発達症)″を持つ保護者の心境(障害受容の観点から)としてはどのような特徴があるのでしょうか?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

親が子どもの発達症を理解し受け入れることは、子どもに先天奇形や肢体不自由などの障がいがある場合に比べ、時間がかかることが知られています。

 

著書にあるように、目で見てその特徴が分かりやすい障害(先天奇形や肢体不自由)などと比べると、発達症(発達障害)を持つ保護者の方の障害への理解や障害受容には時間がかかると言われています。

 

著者も、これまで様々な発達障害児とその保護者との関わりに加え、身近な障害児・者との関わりを通して、〝発達障害″は分かりにいくことが特徴としてあるように思います。

今でこそ、発達障害に対する認知度は高まってきていますが、一昔前までは、ほとんど認知(理解)されていない状況にあったと思います(ここ10~20年の間に急速に理解が進んだ)。

一昔前から今に至るまで、著者自身、発達障害について学びを深めてきていますが、その学びの過程において、分からないことがとても多かったように思います。

つまり、それだけ外見上では障害の特徴が見えにくい分、理解するのに時間がかかるのかもしれません。

それに加えて、発達障害の概念(診断基準など)も変化してきており、さらに、様々な発達障害は重複するケースが多いこと、二次障害などが加わることで状態像が複雑化するなど、発達の視点を把握していかないと正確な状態像の理解が難しいことも分かりにくさの特徴としてあるように思います。

 

関連記事:「発達障害の強弱・重複(併存)について考える

関連記事:「疑似ADHDとは何か【ADHDの背景には愛着障害が潜んでいる】

 

 


それでは、〝発達障害(発達症)″を持つ保護者が時間をかけて障害を理解し受容していく上で、どのような支援が大切となるのでしょうか?

以下、引き続き著書を引用しながら見ていきます。

親が子どもの発達症を認識し受け入れていくプロセスで、その時々の親の心の変化に応じ、支援をしていくというスタンスが重要だと思います。

 

著書にあるように、発達障害のある子どもを持つ保護者への支援として大切なことは、障害を受け入れていく(理解していく)過程に伴う心の変化に、その都度応じていくことが必要だと言えます。

一般的に、障害受容はスムーズに進んでいくわけではなく、様々な葛藤を伴うものだと言われています。

そのため、保護者の揺れ動く心に対して、丁寧に寄り添っていく姿勢が大切だと言えます。

 

著者は、障害を受容していく(理解していく)過程の保護者の方との関わりを通して、保護者には障害に対する抵抗や不安、周囲からどう見られているのかという戸惑い、孤立感・孤独感、将来に対する漠然とした不安感、など様々な気持ちの揺れ動きが長い時間の中で変化し続けているのだと感じています。

そのため、日々、変わり続ける様々な心境に対して、その思いをまずはしっかりと受け止め、否定せずに、理解しようとする姿勢が大切なのだと思います。

発達障害と言えば、特性への配慮や支援が必要だと考えられていますが、それと同時に、保護者の不安定な心の状態に向き合うこともまた、支援として重要なのだと感じています。

 

 


以上、【発達障害児を持つ保護者の障害受容への支援】療育経験を通して考えるについて見てきました。

保護者支援は発達障害児への直接的な支援同様にとても大切です。

そして、保護者が障害を受容していく過程には、様々な心の変化の違いがあるのだということ、そのため、そうした心の揺らぎを支えることもまた大切だと言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害児を持つ保護者の様々な心情に寄り添いながら、より良い支援を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【発達障害児を持つ保護者支援】子どもの発達上の問題の理解について必要な5つのポイント

 

 

岩永竜一郎(2022)発達症のある子どもの支援入門-行動や対人関係が気になる幼児の保育・教育・療育-.同成社.

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