発達障害(神経発達障害)には、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如多動性障害)、SLD(限局性学習症)、DCD(発達性協調運動障害)、ID(知的障害)など様々なものがあります。
著者は長年、療育現場を中心に発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。
その中で、発達障害児は生活・活動において、〝全般的な行動の遅さ″が見られることがよくあります。
それでは、発達障害児の全般的な行動の遅さにはどのような対応方法があるのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児への療育で大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、全般的な行動の遅さへの対応について理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.」です。
全般的な行動の遅さへの対応について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
まずは、遅いということをあまり問題視せず、多少時間がかかるのは仕方ないと受け入れることが大切です。
ほかの子どもよりも少し長めに時間をとってあげたり、スタートを早くして、結果的に取り組む時間を長くしたりしていきます。
著書の内容にあるように、〝全般的な行動の遅さ″への対応として、まずは、行動の遅さを〝問題視しない″ことが重要になります。
そして、次に、〝余裕を持った時間の確保″が必要になります。
行動が遅いと生活・活動の様々な場面で周囲に合わせることができない難しさが出てきます。
一方で、行動の遅さに対して、関わる大人が急がせたり、イライラした態度で関わってしまうと、長期的に見て子どもは自信ややる気を失ってしまいかねません。
長期の発達・成長を見据えて、焦らせない、早くすることを強要しない関わりが大切です。
〝全般的な行動の遅さ″には、〝発達特性″が影響していることもあります。
例えば、ADHD(注意欠如多動症)では、注意力の持続が難しいため、取り組む課題を〝短く小分けにする″ことも必要です。
また、ASD(自閉スペクトラム症)では、注意の向け方が独特であったり、こだわり行動が見られることから、なかなか次の行動に切り替えることが難しいこともあります。
そのため、事前に今後の〝見通し″を具体的に伝えることが必要です。
また、著書には、〝全般的な行動の遅さ″への対応として、以下の視点も必要だとしています(以下、著書引用)。
いまやっていることがその子どもに合っているかどうかをきちんと把握することも大切です。
つまり、〝課題の難易度や内容が子どもに合っているのか?″を把握することが大切です。
課題の内容が子どもに合っていなければ、当然、子どもは意欲的に取り組んだり、集中力を持続して取り組むことが難しくなります。
著者の経験談
今回は、著者が小学校6年間を通して関わりのあったA君を例に見ていきます。
A君には、ADHD・ASDの特性が見られていました。
小学校の低学年のA君は、今やるべきことに取り組むまでに非常に長い時間を要していました。
片づけにしても、活動の準備にしても、他のことに気を取られることが多く、何をやるにしても行動の遅さが目立っていました。
こうしたA君に対して、周囲の大人が行動の遅さを指摘することが多く、A君は徐々に自信を失い、さらに行動の遅さが目立っていきました(もちろん、後になって感じたことです)。
A君が中学年頃になると、著者を含め他のスタッフは、A君の〝全般的な行動の遅さ″に対して、注意するのではなく、できたところを直ぐに褒める、そして、事前にスケジュールを立てる、などの方法を取っていきました。
A君が高学年頃になると、自ら予定を決め、準備や片づけなども一人の力で実行できるようになっていきました。
A君にとって、周囲から認められている(理解されている)という感覚が自信になったこと、そして、日々の習慣が定着していったことが、行動の遅さの改善に繋がったのだと思います。
この事例を通して、著者はまずは〝全般的な行動の遅さをあまり気にしない″こと、〝余裕を持って活動を計画する″こと、〝できたところを具体的に褒める″ことが大切だと実感するようになりました。
以上、【発達障害児への療育で大切なこと】全般的な行動の遅さへの対応について見てきました。
〝全般的な行動の遅さ″は、子どもによって異なります。
そのため、まずは個々の発達段階や発達特性を把握していきながら、関わり方を工夫していくことが重要だと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も行動の遅さが目立つ子どもたちに対して、個別の配慮と個別の支援の視点を考えていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.