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【発達障害児の過剰適応への理解と対応】療育経験を通して考える

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過剰適応″とは、自分の置かれている環境や周囲の人の考えなどに過度に自分を合わせようとして、自分の思いを抑え込んでいる状態のことを言います。

過剰適応の状態が続くと、精神的疲労の蓄積や適応障害を招く恐れがあります。

また、発達障害児・者の中にも〝過剰適応″の問題は見られると言われています。

 

それでは、過剰適応の子どもは、実際のところどのような状態像なのでしょうか?

また、過剰適応の子どもへの対応策にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児の過剰適応への理解と対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.」です。

 

 

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発達障害児の過剰適応への理解について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

過剰適応の状態の子は「学校ではいい子、家では大変」なのが特徴です。

 

重要なことは、こういう過剰な努力で疲れてしまっている子どもが案外たくさんいるということと、この状態は長く続くわけではなく、行き着く先は完全不登校(外100から外0へ)ということです。

 

著書の内容から〝過剰適応″の子どもの状態像として、学校と家での様子が別人だと言えます。

学校の中では、過剰に自分を合わせようと必死であるため、学校側から見ると特別問題がないケースが多く見られます。

その一方で、家に帰ると学校での過剰な適応の反動がでるため、急な疲労感に襲われたり、イライラなど情緒が乱れることがあります。

 

著者は発達障害児の〝過剰適応″の状態をこれまで見たことがありますが、例えば、自閉症児によく見られる〝白黒思考″が影響して、学校でのルールに過剰に合わせようと頑張った結果(ルールは全て守らないといけない)、その反動が家に帰ると急に生じることがあります。

〝過剰適応″になる子どもの背景要因すべてが発達特性とは言えないと思いますが、逆に、発達特性が影響して〝過剰適応″が生じることもあると感じています。

 

 

発達障害児の過剰適応への対応について

著書には、〝過剰適応″への大まかな対応方針が3つ記載されています(以下、著書引用)。

①まずは家族や学校、その他の支援者と情報を共有する

 

②本人の負担を減らす

 

③母親やきょうだいが疲れきっていればレスパイト(休息)的対応も大切

 

 


それでは、以上の3つについて、著者の意見も交えながら見ていきます。

 

①まずは家族や学校、その他の支援者と情報を共有する

前述したように、〝過剰適応″の子どもは学校と家での様子が全く異なります。

そのため、まずは学校と家の様子の違いを共有する(情報共有)必要があります。

また、家で荒れる様子は母親の前だけで見せるなど、家でも相手によって表出が異なることがあると言われています。

そのため、まずは子どもに関わる関係者に、本人の家での様子を知ってもらうことが大切です。

著者も発達障害児への支援をしているため、家庭や学校との連携を大切にしています。

〝過剰適応″の問題も含めて、環境の違いによる本人の状態像を理解していくために、その子どもに関わる人たちが情報を共有していくことは必須だと言えます。

 

 

②本人の負担を減らす

次の対策が〝本人の負担を減らす″ことです。

そのためには、学校で負荷がかかっていることを取り除く必要があります。

著書には、登校自体が大変であれば、休みを取る日を思い切って決めるなどの決断も必要だと記載されています。

著者がこれまで見てきた〝過剰適応″になっている発達障害児には、頑張りすぎてしまうも、うまく手を抜くことができない(抜きどころがわからない)といったケースがあります。

そのため、本人の頑張りを尊重しながらも、休むことの必要性も伝えていくことが重要だと感じています。

もちろん、漠然と休んだ方がよいということを伝えるよりも、休み方のルールの決めも必要だと感じています。

 

 

③母親やきょうだいが疲れきっていればレスパイト(休息)的対応も大切

3つ目が本人以外へのアプローチです。

つまり、家庭で疲れている人のレスパイト(休息)を調整していくというものです。

本人へのアプローチも大切にしていきながらも、その周囲の人たちへの対応も行っていく必要があると言えます。

著者はそれこそまさに放課後等デイサービスで現在働いているため、学校や家庭以外の場所で子どもたちが過ごせる環境があることで、家の人たちが自分の時間を持てることに大きな意味があると実感しています。

 

 


それでは、最後に著書を引用して終わりにします。

私の診察において、発達障害の子どもの過剰適応が続く期間は、最長で5年くらいでしょう。延々と続くように見えますが、そんなことはないのです。子ども本人が、社会と折り合いをつけられるようになると収束していくからです。

 

 

関連記事:「【自閉症の白黒思考への対応】3つのステップを通して考える

関連記事:「発達障害児にとって大切な〝サードプレイス″の価値について考える

 

 


以上、【発達障害児の過剰適応への理解と対応】療育経験を通して考えるについて見てきました。

過剰適応の問題は学校からすると見えにくい問題だと言えます。

一方で、早期に対応をしていかないと、完全不登校などリスクに繋がることもあります。

そのため、今回見てきたように、過剰適応への状態像の理解と様々な対応方法を学び実施していくことが大切だと言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害に関連する様々な問題について理解を深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.

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