〝他害″行動とは、他者に対して暴力や暴言を行うことです。
著者の療育現場には、発達障害など発達に躓きのある子どもたちが通所してきていますが、その中にも〝他害″行動が見られるケースが少なからずあります。
もちろん、他者に対して暴力や暴言をはくことは良くないことですが、一方で、関わる大人は〝他害″行動の意味を理解していくことがとても大切だと思います。
それでは、〝他害″行動にはどのような意味があるのでしょうか?なぜ、〝他害″行動を行うのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児の〝他害″行動の意味とは何か?について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.」です。
〝他害″行動の意味とは何か?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
子どもは言葉で表現できないから、やむなく行動で表現しているのです。
「言いたいことがある」「拒否したいことがある」「してほしいことがある」―そんなときに他害行為が出るのです。
つまり、他害行為は、その子なりの表現であり、メッセージです。
著書には、子どもが〝他害″行動を行う意味として、言葉でうまく表現できないことを、やむ終えず取っている行為が〝他害″行動だと記載されています。
つまり、その子なりの〝表現・メッセージ″だということです。
例えば、何か伝えたいことがあるが伝え方がよくわからない・うまく伝わらない、お願いしたことがあるがお願いの仕方・伝え方がよくわからない・うまく伝わらない、などがあります。
こうした本人の欲求や意図が他者にうまく伝わらないことが繰り返されることでイライラ感が高まり、その結果、ある一つの表現方法として〝他害″行動が起こるということです。
押さえておくべきポイントは、子どもは望んで〝他害″行動を行ってないということ、そして、〝他害″行動を取らざるを得ない理由があるということです。
著者の経験談
著者の療育現場でも〝他害″行動は少なからず見られます。
それでは、〝他害″行動を考えていく上で、今回は一人の小学生Aちゃんを例に取り見ていきます。
Aちゃんとは、著者は6年間(小学1年~6年まで)といった長い関わりのある児童です。
Aちゃんが小学1年~3年生頃まではよく〝他害″行動が見られていました。
例えば、近づいてきた他児に対してすぐに手が出てしまう、強い口調で当たる、など当時はトラブルが毎日のように起こっていました。
当時の著者はAちゃんが示す〝他害″行動の意味を深く考えることなく、とにかく止めに入る対応を多くとっていました。
しかし、この対応ではなかなか〝他害″が減ることが少なかったため、少しずつではありますが、Aちゃんが〝なぜ″このような行為を取るのかといった意味を考え始めました。
その結果、Aちゃんは他児が急に近づいてくるとどのように関わっていいのかがよくわからないこと、急に近づいてくるとびっくりする・うるさい(聴覚過敏の問題)などの要因があることがわかってきました。
そして、こうした不安な思いをうまく伝えることができずにいたため、〝他害″行動に繋がっていたことがわかるようになってきました。
こうした理解は、Aちゃんが小学5・6年になり、自分の気持ちをうまく言葉で表現できるようになって初めて当時の不安な気持ちを語る場面から明らかになってきたことでもあります。
つまり、著書にあるように、Aちゃんが当時とっていた〝他害″行動は、Aちゃんなりの〝表現・メッセージ″だったということです。
もちろん、〝他害″行為は良くないことは誰もが認めることだと思います。
しかし、大切なことは〝他害″行動は本人が望んでやっているものではなく、取らざるを得ない行動だという子どもからの〝表現・メッセージ″だという意味を深く理解しようとする姿勢だと思います。
以上、【発達障害児の〝他害″行動の意味とは何か?】療育経験を通して考えるについて見てきました。
〝他害″行動を予防したり、対応する方法はもちろん大切なことです。
それに加えて、今回見てきたように〝他害″行動の意味を深く理解していくこともまた重要なことであると思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も他害行動の意味を理解していく姿勢を大切にしていきながら、他害行動への対応についても学んでいきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.