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他害 発達障害

【発達障害児の〝他害″の再発を防ぐための方法について】療育経験を通して考える

投稿日:2023年7月20日 更新日:

 

〝他害″行動とは、他者に対して暴力や暴言を行うことです。

著者の療育現場には、発達障害など発達に躓きのある子どもたちが通所してきていますが、その中にも〝他害″行動が見られるケースが少なからずあります。

〝他害″への対応には、事前の予防や発生時の対応など様々な方法がありますが、再発を防ぐための方法を子どもに伝えていくことも大切です。

 

それでは、〝他害″の再発を防ぐための方法には具体的にどのようなやり方があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児の〝他害″の再発を防ぐための方法について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.」です。

 

 

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〝他害″の再発を防ぐための方法

著書には、〝他害″行動の再発を防ぐために三つの方法が記載されています(以下、著書引用)。

「救援スキル」を教えておく

 

「気持ちの表現方法」を教える

 

子どもと「代替行動」を決める

 

 


それでは次にそれぞれ具体的に見ていきます。

 

「救援スキル」を教えておく

「救援スキル」について著書では以下のような例があります(以下、著書引用)。

「手を上げる前に、先生に相談においで。『先生、困っています』と言うんだよ」

 

「困っているように見えるな。助けてあげるよ。『先生、困ってます』と言えるかな」

 

以上の例は、暴力など他害行動を取る前に、つまり、事前に子どもに〝相談する″といった「救援スキル」を伝えていくといった方法です。

仮に、スキルがうまく使えた場合には、肯定的なフィードバックを与えることで子どもの自己肯定感を高めていくことに繋がります。

著者は他害行動が生じる前に、困ったら大人に相談することを伝えるようにしています。

大人が子どもの困り感に対する発信を敏感にキャッチし、対応策を提案しうまくいったという成功体験が増えた子どもはよく著者の所に相談しにくるようになります。

こうした「救援スキル」とは異なり、強く叱る・注意する方法を取る方もいるかもしれませんが、長期的に見ると「救援スキル」を活用した方が良いと著書には記載されていますし、また、著者も同じ見解です。

 

 

「気持ちの表現方法」を教える

暴力など〝他害″が出てしまった子どもに対して「気持ちの表現方法」を教えることも大切な方法です。

具体的には以下の方法があります(以下、著書引用)。

その行為に及ぶ前の子どもの気持ち・要求などを、大人が汲み取って言語化する

 

子どもが使えるフレーズを埋め込んでその子の思いを代弁します。さらに、そのフレーズを使って子どもと気持ちを伝える練習までできれば、もう完璧です。

 

発達障害児の多くは自分の気持ちを言語化することに苦手さがあります。

そのため、著書にあるように〝他害″に至るまでの子どもの気持ち・欲求を大人が汲み取り、そして、気持ちや欲求を他者にどのようにして伝えれば良いのかを教えていくことが大切になります。

例えば、嫌いな他児が大声で話していたことに腹を立てて手が出てしまったという状況に対しては、〝静かにしてください″といったフレーズを教えていくなどです。

著者もできるだけイライラした子どもの気持ちを汲み取る中で、その思いがうまく他者に伝わるようなフレーズを子どもとの関わりの中で考え・伝えるようにしています。

 

 

子どもと「代替行動」を決める

以下、著書を引用しながら見ていきます。

暴力以外で、「気持ちを鎮めたり、イライラを発散する方法」を決めておいて、他害行為の予防に努めるのも立派な支援です。ただし、暴力の代わりにする行動(代替行動)は、大人が指示するのではなく、子どもと相談して、子どもに決めさせてあげてください。

 

著書の中では、暴力以外の方法としての「代替行動」を事前に決めておくこと、そして、その内容は大人が主導ではなく、子どもに決めさせていくことが大切だと記載されています。

そして、この中でさらに大切な関わりは、前回よりも少しでもできるようになった点を褒めるということです。

それは仮に、結果として他児に暴力を振るってしまってもです。

著者も子どもがイライラした際には、環境を変えるように勧めること(個室、外や車)や、その中で、少しでも我慢できる所を褒めるようにしています。

少しずつではありますが、こうした取り組みを通して、子どもの中でイライラした気持ちをコントロールする力がついてくるのだと思います。

 

 


以上、【発達障害児の〝他害″の再発を防ぐための方法について】療育経験を通して考えるについて見てきました。

子どもが見せる〝他害″行動は、やりたくてやっている行動ではなく、やむにやまれぬ行動です。

子どもにとってそれ以外の発信の仕方がわからないため、〝他害″に及んでしまっているのです。

そのため、今回見てきたような再発を防ぐための方法を試行錯誤していくことは、子どもとの関係性や子ども自身の自信を喪失しないようにする上でも大切な視点だと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもが見せる他害行動を減らしていけるように再発を防ぐための方法についても理解を深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【発達障害児の〝他害″行動への対応方法について】〝環境調整″の視点から考える

関連記事:「【発達障害児の〝他害″を防ぐための方法について】〝発生条件″を見極めることの大切さについて考える

関連記事:「【発達障害児の〝他害″行動時の対応について】暴力が出た時にどのように止めれば良いのか?

 

小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.

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