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【発達障害児の〝パニック″への対応について】予防的視点から考える

投稿日:2023年7月10日 更新日:

 

発達障害児の中には、〝パニック″行動が見られることがよくあります。

著者の療育現場でも〝パニック″は、周囲から見ると些細な出来事であっても突如、イライラが高まり噴火して起こることがあります。

しかし、当の本人からすると些細な出来事ではなく、〝パニック″行動に至らざるおえなかった重要なことが起こっているのだと思います。

 

それでは、〝パニック″への関わり方にはどのような対応方法があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児の〝パニック″への対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら予防的視点について理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.」です。

 

 

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〝パニック″への対応:予防的視点について

著書の中には二つの方法が紹介されています。

具体的には二つの言葉がけです(以下、著書引用)。

「興奮しているように見えるよ」

 

「笑って笑って!」とうながす

以上の二つです。

 

 


それでは次に、この二つの言葉がけの意味を深掘りしていきたいと思います。

 

「興奮しているように見えるよ」の対応について

〝パニック″が起こりそうな前兆として、子どもの表情で分かることがよくあります。

著者の経験では、イライラがマックスの時には、顔が真っ赤になっていたり、目が吊り上がっていたり、息が荒くなっていることが多く見られます。

このような状態で、関わる大人がどのような関わり方(声掛けなど)をするかどうかでその後の〝パニック″の表出度も変化することがあります。

何もせずに放っておくことや、〝パニック″を助長してしまうような関わり方は回避する必要があります(そういう著者も失敗に失敗を重ねています)。

 

そのため、今回、著書にある〝興奮しているように見えるよ″といった声掛けは次のような意味があるため大切な関わりと言えます(以下、著書引用)。

これは、相手の抱えている感情を予測し、先回りして言語化する「パラレルトーク」と呼ばれる方法で、自分の状態を言葉で伝えるのが苦手な子に接するときは非常に重要なテクニックです。

発達障害児の中には、自分の感情を言語化するのが苦手な子どもが多くいます。

つまり、自分の感情の状態への気づきが弱いことが多いと言えます。

気持ちの理解には、言葉の力が必要になります。

そのため、著書にあるように子どもの気持ち(感情)を予測して声掛けする〝パラレルトーク″が有効な手段であると言えます。

著者も時々〝パラレルトーク″を無自覚的にではありますが活用しています。

その中で、〝パラレルトーク″が有効になるためには、子どもとの関係性がうまくできている必要が前提としてあるように思います。

子どもによっては信頼関係がうまく築けていない大人から〝パラレルトーク″をされても逆に反発する場合もあると思います。

 

また、やってはいけない対応として、著書には〝励まし″があります。

〝パニック″直前の子どもに〝励まし″の声掛けをすると逆に子どもを追い詰めることになってしまうからです。

 

 

「笑って笑って!」とうながす対応について

著者は〝パニック″になりそうな子どもも含め、マイナス感情を抱えている子どもをプラスの感情へと転換させる働きかけが時に効果を発揮することを実感しています。

プラス感情への促しとして、著書にある通り〝笑顔″にする方法があります。

 

〝笑顔″や〝笑い″は人間の気持ちを切り替える力があります(以下、著書引用)。

人間の脳は単純で、嬉しくなくても口角を上げて笑った顔をするだけで、少し気分が変わるようにできているそうです。

 

著者のこれまでの経験の中で、イライラが高まっている子どもに対して、逆に楽しい話をすることで気持ちが切り替わった例はこれまで数多くあります。

マイナス感情をプラス感情に切り替えるためには、ネガティブ要因を引き起こしている話とは全く異なる話をしたり、その中で楽しい・面白い・笑える内容の話をしていくことで気がつくと〝パニック″寸前の状態から気持ちが沈静化し、穏やかな様子になることはこれまでの療育経験では数多くあったように思います。

人は〝笑顔″になることで、気持ちが穏やかになるようにできているのだと感じます。

 

 


以上、【発達障害児の〝パニック″への対応について】予防的視点から考えるについて見てきました。

〝パニック″行動はできれば〝パニック″が起こる前にくい止めたいものです。

今回見てきた二つの予防策はどちらも効果があると著者も感じています。

そして、その効果を引き出すためには、関わり手との信頼もまた必要だと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちの様々な気持ちをしっかりと受け止め理解していけるように日々の実践を大切にしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.

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