発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

ルールが守れない 発達障害

【発達障害児に見られるルールが守れないことへの対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチ

投稿日:

発達障害児は、発達特性などが影響して、生活の様々な所で困り感が生じる場合があります。

著者は長年、療育現場で発達障害児支援を行っていますが、個々の発達特性や発達段階等を踏まえたオーダーメイドな支援はとても大切だと感じています。

 

それでは、発達障害児に見られるルールが守れないことに対して、どのような対応方法が有効だと考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児に見られるルールが守れないことへの対応について、SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチを通して理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.」です。

 

 

スポンサーリンク

 

ルールが守れない状態はなぜ生じるのか?

著書を参考に6つの視点から、ルールが守れない背景要因について見ていきます。

 

1つ目として、〝時間処理の苦手さ″です。

発達障害児(ASD・ADHDなど)の中には、時間処理に苦手さが見られる場合があります。

例えば、ゲームに集中し過ぎてしまい時間を忘れて没頭し続けてしまう、まだ間に合う、大丈夫だといった時間感覚から、時間配分を見誤るなどがあります。

そのため、約束の時間に遅れてしまう、ゲームを長時間してしまうなどがよく起こります。

2つ目として、〝実行機能の弱さ″です。

実行機能″とは、やり遂げる力のことを言います。

実行機能に弱さがあると、計画的に物事を進めることが難しくなったり、他の事に注意が向いてしまい本来やろうとしていた当初の計画が狂ってしまうことがあります。

3つ目として、〝ワーキングメモリの弱さ″です。

ワーキングメモリ″とは、記憶の保持・操作に関する力のことです。

ワーキングメモリに弱さがあると、ルールや約束について理解はしているものの、少し時間が経つと忘れてしまうことがよく起こります。

4つ目として、〝理解力の問題″です。

先のワーキングメモリとは異なり、そもそもルールなどの指示が理解できていないとった認知能力の問題が挙げられます。

5つ目として、〝不注意・衝動性の問題″です。

ADHD児の特徴でもある〝不注意・衝動性″があると、ルールを理解はしているものの、うっかりミスでルールを忘れてしまう、ついつい衝動的な行動からルールを破ってしまうことが起こります。

6つ目として、〝誤学習の問題″です。

誤学習″とは、本来習得すべき正しい学習とは異なり、誤った学習をしてしまっている状態です。

そのため、過去にルールを破ってもうまくいったという誤学習をしてしまうと、ルールを破る行為を繰り返すことがあります。

 

 

スポンサーリンク

 

ルールが守れない状態への対応について

著書には、ルールが守れないことへの対応として、〝①SST(ソーシャルスキルトレーニング)″〝②ペアレントトレーニング″〝③感覚統合療法″の3つからのアプローチ方法が記載されています。

 

 


それでは、次に、①②③のそれぞれのアプローチ方法について具体的に見ていきます。

 

① SST(ソーシャルスキルトレーニング)

以下、著書を引用しながら、SSTからのアプローチを見ていきます。

・日常で社会の基本ルールを教える

 

・タイマーを利用する

 

・「どこで何をするのか」を分かりやすく示す

 

・約束を忘れない工夫を身につける

 

・絵カードなどで気づきを促す

 

まずは、〝社会の基本ルールを教える″ことです。

社会の中には、人とうまくやっていくためのルールがあります。

過度にルールを強制したり、豊富な情報量を提示しないように心がける必要があります。

その中で、最低限のルール(量を少なく・伝達内容は簡潔に)の伝達や、視覚情報の活用も取り入れていくことが大切です。

 

次に、〝タイマーを活用する″ことです。

時間管理が難しい子どもにとって、様々な活動の終わり・切り替えがスムーズいかないことが多いため、そのような時にタイマーの活用が有効です。

 

次に、〝やることリストを分かりやすく提示する″ことです。

例えば、活動の順番(荷物をおく→手を洗う→遊ぶ→おやつ・・・)について、時系列で分かりやすく提示することが大切です。

子どもによっては、写真やイラストの方が理解が進むこともあります。

 

次に、〝約束事を忘れないための策を考える″ことです。

著書には、約束事を忘れないための方法として、子ども自身に約束の内容を復唱させるといった方法が記載されています。

 

次に、〝絵カードを活用する″ことです。

絵カードの活用もまた有効です。

発達障害児の中には、言葉による抽象的な理解を苦手としていることがよくあるからです。

例えば、SSTカードなど、集団でのルールや約束事を教える教材もあります。

 

 

② ペアレントトレーニング

以下、著書を引用しながら、ペアレントトレーニングからのアプローチを見ていきます。

・ゲームはやめるときの約束を決める

 

・ルールを作ったら徹底する

 

まずは、〝ゲームをやめるときの約束を決める″ことです。

例えば、おやつタイム、テレビの時間など、できるだけ楽しい活動・切り替えやすい活動をゲーム後に設定しておき、うまくやめることができたら褒める対応が大切です。

褒める頻度を高めていく好循環をいかに工夫して作っていけるかがポイントです。

 

次に、〝ルールを徹底する″ことです。

ルールを徹底するとは、例えば、大人の都合でルールを急に変えないようにするなど、最初に決めたルールを徹底する対応が大切です。

 

 

③ 感覚統合療法

以下、著書を引用しながら、感覚統合療法からのアプローチを見ていきます。

・実行機能の弱さが原因の場合

 

・状況の把握が難しい場合

 

まずは、〝実行機能をトレーニングする″ことです。

例えば、アスレチックなど、ゴール・目標がある中で、様々なコースやルールを変えていくことで、目標に向けて試行錯誤をする力を高めていくことが期待できます。

 

次に、〝状況把握の力を鍛えていく″ことです。

著書には、状況把握には4の段階があるとしています(易→難)。

最初は、自他共に静止している遊び(カードゲームなど)→自分は動き他者は静止している遊び(椅子取りゲーム、かくれんぼなど)→自分は静止し他者は動いている遊び(相手の動きを観察するなど)→自他共に動いている遊び(追いかけっこ、ドッチボールなど)といったように、徐々に難易度が上がっていきます。

このように、状況把握の発達段階を踏まえて、子どもが楽しんで行える活動を工夫していくことが大切です。

 

 


以上、【発達障害児に見られるルールが守れないことへの対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチについて見てきました。

子どもがルールを守れないことには、様々な背景要因があります。

そのため、背景要因を踏まえて個々に応じた対応方法を考えていくことが支援においてはとても大切だと言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちに良い支援をとどけていけるように、様々な知識を獲得していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【〝集団遊び″がうまくいかない場合の対応方法】〝ルール遊び″を通して考える

関連記事:「【ゲーム依存にならないためのルール作りについて】療育経験を通して考える

 

 

岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.

スポンサーリンク

-ルールが守れない, 発達障害

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【発達障害児に見られる対人関係が発展しない場合の対応】6つのポイントを通して考える

著者は長年、療育現場で発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。 発達障害児の中には、背景要因は多様でありながらも、〝対人関係がうまく発展しない・発展しにくい″ことがあります。 …

【〝パニック″の際に絶対にしてはいけない対応とは何か?】発達障害児支援の現場から考える

著者は療育現場で、子どもの〝パニック″行動への対応に迫られることがあります。 〝パニック″への対応には、事前に環境を調整するといった予防的な視点に加え、〝パニック″が起こった直後の対応もまた重要になり …

生活障害への支援-半歩先を想定することの難しさと大切さ-

発達障害を生活障害と捉える考え方が発達支援の現場でよく耳にするようになりました。 生活障害とは、生活上で何らかの困難さがある状態のことです。   関連記事:「療育で大切な視点-生活障害という …

【不登校の原因について】発達障害と心の病気を通して考える

不登校児童の数は年々増加傾向にあることが分かっています。 不登校に至る要因には、様々なものがありますが、中でも、無気力や不安感などが大半を占めていると言われています。   関連記事:「【不登 …

【発達障害児と信頼関係がうまく築けない理由とは?】力で押さえつけた関わりの反動から考える

発達障害児支援をしていると、時々、スタッフ(支援者・教員など)の対応が〝力で押さえつけた関わり″をしている様子を目にすることがあります。 もちろん、場面や状況によりやむを得ない場合もあります。 一方で …