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【発達障害児に見られるパニック・癇癪への対応】3つのポイントを通して考える

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著者は長年、療育現場で発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。

その中で、子どもの対応で苦慮するものとして、〝パニック・癇癪″への対応があります。

発達障害児の中には、背景要因は多様でありながらも、〝パニック・癇癪″が見られることがよくあります。

 

それでは、発達障害児に見られるパニック・癇癪に対して、どのような対応方法があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児に見られるパニック・癇癪への対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、3つのポイントを通して理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岩永竜一郎(2022)発達症のある子どもの支援入門-行動や対人関係が気になる幼児の保育・教育・療育-.同成社.」です。

 

※幼児を対象として書かれた本ですが、学童期にも活用できる視点も含まれていると思います。

 

 

パニック・癇癪への対応:3つのポイント

著書には〝パニック・癇癪″への対応方法として、以下の3つのポイントが書かれています(以下、著書引用)。

パニックにつながる背景にある問題を軽減する視点を持つ

 

落ち着きやすい環境を作る

 

子どもの行動の前後の状況をとらえて対応を考える

 

 


それでは、次に、以上の3つのポイントについて具体的に見ていきます。

 

1.パニックにつながる背景にある問題を軽減する視点を持つ

以下、著書を引用しながら見ていきます。

ASD児などの場合、パニックを起こしたことを叱っても解決策にならないことがほとんどです。

 

パニックの原因は自分が言いたいことが上手に伝えられない、他の人が言うことの意味がよくわからない、急にスケジュールが変わった、嫌の音が聞こえた、など

 

著書にあるように、パニック後に対応してもほとんど効果はありません。

パニックが起こるのには、様々な背景要因があるため、まずは、パニックに繋がる背景にある問題を軽減する視点を持つことが大切です。

著者は、パニックがよく起こる子ども対して、例えば、自分の言いたいことがうまく伝わらない→著者が思いを言い当てる・紙に書いてもらうなど、急なスケジュール変更→できるだけ前もって伝えておく、苦手な音→イヤーマフや落ち着いて過ごせる環境調整などを前もって行うことでパニックが軽減したケースが多くありました。

 

 

2.落ち着きやすい環境を作る

以下、著書を引用しながら見ていきます。

叱ったり、感情的になったりせず、おだやかに対応することが必要です。他の子どもが目に入りにくい、刺激が少ない場所で、落ち着くまで待つようにすると良いでしょう。

 

著書にあるように、パニックが起こった際には、冷静に対応し、まずはパニックが落ち着くまで待つことが大切です。

そのためにも、刺激の少ない場所を用意する(作る)必要があります。

刺激の少ない場所とは、例えば、光や音が少ない、人が少ない(できればいない)、物が少ない(投げたり・倒してケガや破損する可能性があるため)環境が大切です(〝落ち着きやすい環境を作る″)。

著者の療育現場でも、パニックがあった際に誘導する場所は、ある程度は事前に決めています。

そして、パニックがおさまるまで待ち、その後、落ち着いたことを褒め、じっくりと振り返る(何が嫌だったのか・次どうすれいいかなど)ことが大切だと感じています。

 

 

3.子どもの行動の前後の状況をとらえて対応を考える

最後の対応のポイントは、〝応用行動分析学″の視点の活用です。

この視点を取り入れることとは、パニック行動に関して、パニック前→パニック・癇癪→パニック後の対応、といったように時系列から分析していくことで、パニック・癇癪への背景要因と対応方法を見出していきます(〝子どもの行動の前後の状況をとらえて対応を考える″)。

分析の結果、例えば、パニック前の問題(苦手な音、予定の変更、遊びが思い通りに進まない、など)に要因があると仮定すると、パニック前の環境調整や関わり方の工夫が必要になっていきます。

また、分析の結果、例えば、パニック後の対応の問題(大人の関わりが逆にパニックをエスカレートさせてしまうような関わりなど)に要因があると仮定すると、大人の関わり方を変えていくことが必要になっていきます。

もちろん、パニック前・後の両方に働きかける場合もあるかと思います。

大切なことは、対応方針に一貫性を持たせることです。

関わる人によってやり方・関わり方が異なると子どもは混乱してしまいます。

そのため、分析の結果、今後どのような支援が必要になるのかを関わる人全てに共有し実施していくことが重要です。

 

 


以上、【発達障害児に見られるパニック・癇癪への対応】3つのポイントを通して考えるについて見てきました。

パニック・癇癪は、定型発達児以上に発達障害児に多く見られる行動だと言えます。

そのため、今回見てきた視点は、療育に携わる人たちに大いに役立つものだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害児に見られる困り感に寄り添い解決策を考えていくことで、パニック・癇癪への理解と対応スキルを向上させていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【発達障害児の〝パニック″直前の基本対応】〝パニック″を予防するために大切な関わり方

関連記事:「【発達障害児の〝パニック″直後の対応について】療育経験を通して考える

 

 

岩永竜一郎(2022)発達症のある子どもの支援入門-行動や対人関係が気になる幼児の保育・教育・療育-.同成社.

-パニック, 癇癪, 発達障害

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