アメリカ精神医学会から出版されている精神疾患の診断・統計マニュアルによれば、発達障害(正式には〝神経発達障害″)は、ASDやADHD、SLDなどの従来の〝発達障害″に加えて、〝知的障害″もまたその中に含まれています。
著者は長年、発達障害(ASDやADHDなど)や知的障害のある子どもたちへの療育をしてきています。
長年の療育経験を通して実感することは、支援はできるだけ〝早期″から行った方が良いといった実感です。
それでは、なぜ、早期発見・早期支援が大切なのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害・知的障害で大切な早期発見・早期支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「本田秀夫(2024)知的障害と発達障害の子どもたち.SB新書.」です。
早期発見・早期支援の重要性について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
知的障害や発達障害の子の将来を考えたとき、最も重要なのは「早期発見・早期支援」です。「早く」支援するということです。
早期支援によって知的障害や発達障害の特徴が早く理解できるからです。
まわりの人が子どもの特徴を理解し、対応できるようになると、その子は幼児期から安心して過ごせるようになります。
著書には、発達障害や知的障害の子どもにとって最も重要なものとして〝早期発見″〝早期支援″を取り上げています。
その理由としては、障害の状態像を〝早く″理解することで、その子への理解や関わり方、環境調整などが〝早く″から行われることで、〝早く″から安心して過ごせることに繋がるためです。
〝早く″を繰り返しましたが、子どもは日々の生活の中で、様々な発達を遂げていきます。
その中で、早期の対応が遅れてしまうと、子どもの中で〝うまくいかなさ″〝自信のなさ″が少しずつ体積することがあります。
保護者もまた子どもへの理解が難しいと、子育てに自信を無くしたり、どのように子どもに向き合っていいのかが分からない状態が長く続いてしまうこともあります。
こういった意味でも、〝早期発見″〝早期支援″はとても大切なことだと著者も感じています。
著者の経験談
それでは、なぜ著者が〝早期発見″〝早期支援″が大切だと考えるかには、いつくつかの経験談があるからです。
その一つが長年の療育経験から、子どもが(正確には保護者が)支援機関に早く繋がったかどうかで、その後の発達に大きく影響するといった実感(経験談)です。
今回は、この経験談について、例をもとに見ていきます。
Aさんは未就学の頃から療育機関で支援を受け始めました。
Aさんへの支援が早期から開始されたことで、Aさんを理解しようとする専門スタッフとの接点がAさんにはでき、Aさんにとって安心できる支援(Aさんが好む関わり方・環境調整など)が少しずつ進んでいきました。
もちろん、Aさんへの支援の過程は順風満帆に進んだわけではなく、試行錯誤の連続だったように思います。
しかし、早くから支援を受けることができたAさんは、他者への信頼や自分への自信をゆっくりと獲得していったように思います。
それに対して、Bさんは小学校中学年頃から支援を受け始めました。
それまでのBさんは、自分に合わない環境で周囲からの理解も得られずに必死に頑張ってきた経緯があります。
もちろん、本人に加えて保護者も必死にBさんを支えてきていました。
当時のBさんには、〝誤学習″〝未学習″〝自尊心の低さ″〝意欲の低さ″〝大人への信頼のなさ″など、不適応要因が多数見られました。
そのため、支援を進めていく難しさ、進捗の遅れなどが多くありました。
その後のBさんは、少しずつ様々な成功経験を積み重ねていきながら、自分への自信や他者への信頼を獲得するなど、長い時間はかかりましたが支援がうまく進み始めていきました。
AさんとBさんのようなケースは思いのほか療育現場で多く見られます。
つまり、Aさんのように支援を早く受けることができたケースと、Bさんのように支援を早期から受けることができなかったケースとでは、その後の支援の進み具合がだいぶ変わっていくということです。
著者はこうした実体験から、できるだけ早期から支援を受けた方が良いと感じるようになりました。
以上、【発達障害・知的障害で大切な早期発見・早期支援】療育経験を通して考えるについて見てきました。
〝支援″という言葉を聞くと、〝支援の効果はあったのか?″〝支援の成果はでたのか?″など、個人の能力の成長に重きを置く方もいます。
もちろん、子どもの能力を引き上げることも大切ですが、その前提として、〝子どもを理解していく″〝子どもへの関わり方を学んでいく″〝子どもが安心できる環境を整えていく″ことが必要です。
そのためにも、〝早期発見″〝早期支援″が大切だということです。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も早い時期から子どもの特徴や性格を理解していく中で、その子がより良い発達を遂げていけるような支援を考え実行していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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本田秀夫(2024)知的障害と発達障害の子どもたち.SB新書.