発達障害児・者には様々な感覚の問題が見られると言われています。
そのため、発達障害児・者支援に携わる人たちにとって、感覚の問題への理解と対応に関する知識は必須であると言えます。
それでは、感覚の問題を深掘りする視点としてどのようなものがあるのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害を理解する視点について、〝感覚調整障害″をキーワードに、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.」です。
発達障害を〝感覚調整障害″と捉える視点の重要性について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
近年、発達障害を抱える人は脳の各部位の連動が適切にできていない人が多いという研究が広まってきました。
発達障害を抱える人は脳内での情報の連動がスムーズにいかないことが原因で特有の行動が発生していると考えられています。
そのため、発達障害は別名「感覚調整障害」ともいいます。
一般的に人の発達は、感覚と運動が基礎となり、その上に、認知機能や社会性・コミュニケーション能力が発達していくといった発達の順序性・方向性があると考えられています。
つまり、発達初期からの土台形成に重要な要素を占めている感覚機能に問題や偏りがあると(連動が適切にできない)、その後の発達過程において様々な発達の凸凹が生じることが考えられます。
そのため、著書にもあるように、脳の連動がスムーズにいかない人が発達障害児・者には多いことからも、発達障害を別名〝感覚調整障害″と表現されることもあると記載されています。
発達障害を〝感覚調整障害″と視点を変えて見ることで、私たちが見落としがちな〝感覚″の問題や偏りについて分析することの大切さを学ぶことができます。
そして、〝感覚″の問題や偏りが、生活のどのような側面に困難さを与えているのかを考え対応していくことが、発達障害への理解と支援においてはとても大切になってきます。
著者のコメント
それでは、ここから著者の療育現場での支援の経験を踏まえて〝感覚調整障害″の視点の必要性について少しだけ見ていきます。
私たちは、大人になるにつれて、視覚機能・聴覚機能が優位になっていくと言われています(中でも視覚機能がとても優位になります)。
一方で、子どもは様々な感覚世界の中で生きています。
例えば、様々な音をきく(聴覚)、様々なものを触ってみる(触覚)、様々なものの臭いを嗅いでみる(嗅覚)など、感覚を通して自分の世界(認知)を広げていきます。
発達障害児には、様々な感覚において、過敏性や鈍麻が見られると言われています。
実際、著者が見てきた子どもたちの多くが感覚過敏や感覚鈍麻がありました。
一方で、私たち大人にとって、感覚過敏や感覚鈍麻の問題を見過ごしてしまうことがあります。
それは、こうした感覚による苦痛や困難さを共感しにくいことにあります。
例えば、外の世界の特定の音が自分の脳を破壊してしまうほどの音に聞こえる、特定の感触が刃物で触れられているように感じる、など定型発達児・者にとって起こりにくい感覚の問題や偏りは一般的には理解しがたいものだからです。
しかし、こうしたケースは少なからず発達障害児には見られます。
また、感覚の問題や偏りは大人になっても持続する傾向があります。
子どもの頃との違いは、感覚の問題への対処法を自ら取れるようになった、他者にその困難さを伝えることができるようになったなどの違いはあるかと思います。
そのため、発達障害を〝感覚調整障害″としてみる見方は、発達障害児・者に関わる方にとって理解と支援に関して多くの気づきを与えてくれるものだと年々強く感じるようになりました。
以上、【発達障害を理解する視点】〝感覚調整障害″をキーワードに考えるについて見てきました。
発達障害と言えば、様々な側面での発達がゆっくりであったり、対人コミュニケーションの困難さや多動性・衝動性による問題、学習の困難さなどが取り上げられることが多いと思います。
一方で、今回見てきた感覚の問題や偏りに関する知識もまた発達障害について深く知っていく上で必須の学びであると思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害についてより深く理解していけるように、感覚調整障害についての知見も学び続けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「発達障害の感覚調整障害について【4つのタイプから考える】」
前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.