〝レジリエンス″とは、失敗をしても〝立ち直る力″、〝回復力″だと言われています。
レジリエンスが低いと、様々な困難に向き合うことが難しくなり、チャレンジ意欲も低下してしまいます。
発達障害の子どもたちは特にレジリエンスの観点が重要だと言われています。
それでは、なぜ発達障害の子どもにはレジリエンスが重要だと考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害の子どもにはレジリエンスが必要といったテーマについて、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「藤野博・日戸由刈(監修)(2015)発達障害の子の立ち直り力 「レジリエンス」を育てる本.講談社.」です。
発達障害の子どもにはレジリエンスが必要
以下、著書を引用しながら見ていきます。
レジリエンスをより強く必要としている人もいます。たとえば、発達障害の子どもたちです。彼らはさまざまな特性があるために、生活上の困難に直面することが多く、その結果、傷ついたり、落ち込んだりすることが多くなりがちなのです。
著書の内容から、発達障害の子どもがレジリエンスをより必要とする理由として、発達障害の子どもたちは、特性が影響して、生活上で困難に直面することが多くなり、その結果、失敗経験が増えてしまうことが多いからだと考えられています。
発達障害の〝特性″といっても様々なタイプがあります。
ASD(自閉スペクトラム症)は、対人コミュニケーションの困難さやこだわり行動などが特徴としてあります。
そのため、暗黙の了解事項や他者の意図や心情の理解の難しさ、融通のきかなさなどが生活上の困り感に繋がることがあります。
ADHD(注意欠如多動症)は、不注意・多動性・衝動性が特徴としてあります。
そのため、うっかりミスや忘れ物の多さ、落ち着きのなさや順番を守れないなどが生活上の困難さに繋がることがあります。
SLD(限局性学習症)は、知的な遅れはないものの、読み・書き・計算といった特定の領域において躓きがあるといった特徴があります。
そのため、学校の勉強での躓きに繋がることが多く見られます。
発達障害に見られる〝特性″は周囲からの理解や配慮が無いとうまく環境に適応することが難しくなります。
そのため、困難な出来事に出会った際に自分では対応することが難しくなり、失敗経験を積み重ねてしまう可能性が高まると言えます。
つまり、発達障害の子どもの〝レジリエンス″を育てていくためには、その子の〝特性″を理解し配慮していくことが重要です。
こうした背景から、発達障害の子どもには特に〝レジリエンス″の視点が重要だと考えられています。
著者のコメント
著者はこれまでの療育経験で多くの発達障害の子どもたちを見てきました。
その経験から、〝レジリエンス″の視点は特に発達障害の子どもにおいて重要だと考えています。
それは、定型発達児と同じような関わり方をしていくと、〝レジリエンス″は育ちにくいことを経験則的に理解しているからです。
特に発達障害の子どもには、小学校高学年までは、できるだけ失敗経験を積み重ねていかないような環境設定が必要だと思います。
中には、失敗や逆境を通して子どもは成長すると考えている方もいるかもしれません。しかし、発達障害の子どもたちと多く関わってきた著者の実感として、むしろ、手厚い保護的な環境で成功体験をしっかりと積み重ねてきた子どもの方が、思春期以降のライフステージをうまく生き抜いていけているように思います。
この考え方は、定型発達児にも当てはまるのかもしれません。
ここでは、あくまでも、発達障害の子どもには、定型発達児よりもさらに保護的な環境設定が必要だということを強調しておきたいと思います。
定型発達児と発達障害児の大きな違いの一つは環境への適応力だと思います。
適応力と言えば、例えば、柔軟に他者に合わせることや自分の感情をコントロールすること、自ら進んで学習していくことがなどがあります。
また、適応力とは、ある種の〝自己修正力″とも言えますが、〝発達障害に見られる特性″とは生来的なものであるため、あまり変わらないものだと考えられています。
そのため、発達障害の子どもたちが環境に適応していくためには、特性を踏まえた関わり方がとても重要だと言えます。
そして、〝特性″に配慮していきながら、できるだけ多くの成功体験を重ねていけるような関わりをしていくことが〝レジリエンス″の発達には必要だと思います。
以上、【発達障害の子どもにはレジリエンスが必要】療育経験を通して考えるについて見てきました。
レジリエンスといった立ち直る力は、特に発達障害の子どもたちにとっては必要だということを改めて考えさせられました。
それは、発達障害の子どもたちは、特性が影響して困難な環境に出会うことが多いため、そのまま周囲からの理解と配慮がないと落ち込む経験を積み重ねてしまうからです。
そしてこのことは、著者のこれまでの経験に当てはめても理解できる部分が多くあるからです。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちのレジリエンスを育てていけるように自分の取り組み内容をしっかりと見つめていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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