発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

強弱 発達障害 重複

【発達障害の「重複」「強弱」への理解】「DAMP症候群」「ESSENCE」「MSPA」を例に

投稿日:2023年1月20日 更新日:

発達障害と言えば、例えば、自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)であれば、社会・コミュニケーションの困難さやこだわり行動といった特定の特性があります。

一方で、中には、様々な特性が重なりあって(重複して)、それぞれの特性もスペクトラムといった強弱が見られるなど、状態像が多様な場合が多いと言われています。

例えば、ASDの特性は顕著に見られる一方で、ADHDの不注意の特性も少なからず見られるといったように「重複」「強弱」がある場合もあります。

一方で、こうした「重複」「強弱」の両方の視点を重視した研究や理論、評価ツールなどが少ないことが現状としてあります。

 

それでは、こういった現状の中で、「重複」「強弱」を重視した視点などを提唱している研究などはあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害の「重複」「強弱」への理解について、「DAMP症候群」「ESSENCE」「MSPA」を例に理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「本田秀夫(2018)発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち.SB新書.」です。

 

 

スポンサーリンク

 

 

「DAMP症候群」について

DAMP症候群はスウェーデンのクリストファー・ギルバーグ教授が1980年代以降に提唱したもので、その考え方は以下です(以下、著書引用)。

これは、注意や運動、知覚、会話などの各領域に困難がみられることを、総合的にひとつの症候群としてとらえようという包括的な考え方です。

 

「DAMP症候群」とは、例えば、ADHDの特性にDCDやASDの特性が重複しているといった研究結果から、引用文のような〝注意や運動、知覚、会話などの各領域に困難さが見られる″という領域間の関連性を包括的に捉えた考え方になります。

最近では、DCD(発達性協調運動障害)という協調運動に関する研究が広がりを見せる中で、ADHDとの関連が指摘される(DAMP症候群など)研究も増えてきています。

 

 

「ESSENCE」について

ESSENCEもまた、同じくギルバーグ教授が、発達障害の早期発見に繋がる徴候(サイン)があるという考えのもと、2009年に提唱したものです(以下、著書引用)。

ESSENCEの項目として、発達全般の遅れや、運動発達の遅れ、感覚刺激に対する敏感・鈍感、言葉の遅れ、衝動性の高さ、気が散りやすいこと、遊びに対する関心のなさ、常同的な行動、気分の変動、睡眠覚醒リズムの乱れ、偏食といったことをあげています。

 

著書の内容から、ギルバーグ教授は、以上の様々な項目を発達障害の早期の発見のサインとしての考え方を提唱しており、それが「ESSENCE」というわけです。

この考え方からも、発達障害には、様々な特性や発達の遅延などが関連しており、単独というよりも重複している場合が多いと考えられています。

 

 

「MSPA」について

MSPA:発達障害の特性別評価法は、船曳康子教授のグループが2009年から開発してものであり、評価内容は以下です(以下、著書引用)。

MSPAは、発達障害の代表的な特性をコミュニケーションやこだわり、不注意、多動、衝動性、学習などの14項目に分け、それぞれの強さを5段階で評価するというものです。

 

「MSPA」はASDやADHD、DCD、SLDなどの発達特性を含めた14項目の評価が可能になっています。

「MSPA」も、見ての通り、様々な発達特性などの総合的な評価の視点を重視(診断に先立つ評価)しているため、発達障害の「重複」「強弱」への理解を重視したものとなっています。

 

「MSPA」については以下の記事を参照して頂ければと思います。

関連記事:「【MSPAの特徴】発達に躓きのある多様な子どもたちの状態像の理解と評価

 

 


以上、【発達障害の「重複」「強弱」への理解】「DAMP症候群」「ESSENCE」「MSPA」を例について見てきました。

以上の3つ以外にも、今回参考資料で取り上げた書籍の中には、ASとADHの強弱と重複のイメージ図とその説明などが記載されています。

発達障害児・者の支援に携わっている方、身近にこうした特性の人たちがいる方には理解においてとても参考になるとかと思います。

発達障害など、発達に躓きのある人たちの多くは、「重複」「強弱」など状態像が多様です。

著者は今後も療育現場を通して、一人ひとりの状態像について理解を深めていきながら、その知見を実践に役立てていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

本田秀夫(2018)発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち.SB新書.

スポンサーリンク

-強弱, 発達障害, 重複

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

発達障害児と不器用さの関連について【自閉症・学習障害・ADHD・知的障害を例に】

発達障害児の中には、〝不器用”さが多く見られることがあります。 「不器用」という用語も、様々な文脈で使われますが、今回は運動の分野に限定して見ていきます。 最近では、運動の問題を主とした障害として、発 …

【発達障害の診断は100%正確なのか?】診断をする際の〝主観性″〝流動性″を通して考える

発達障害を特定するためには医師による診断が必要です。 診断する医師は、生育歴、発達特性の検査、知能検査、家庭環境、などの情報を踏まえて診断を行っています。 また、診断内容によってはある程度年齢がいかな …

発達障害児の感覚の問題への支援【感覚過敏(過剰反応)について】

発達障害児は、様々な感覚の過敏さや鈍感さといった感覚の問題を持つことが多いと言われています。 関連記事:「発達障害の感覚調整障害について【4つのタイプから考える】」   それでは、発達障害児 …

【発達障害の子どもにはレジリエンスが必要】療育経験を通して考える

〝レジリエンス″とは、失敗をしても〝立ち直る力″、〝回復力″だと言われています。 レジリエンスが低いと、様々な困難に向き合うことが難しくなり、チャレンジ意欲も低下してしまいます。 発達障害の子どもたち …

【発達障害児のタブレットの有効な活用方法とルール設定について】療育経験を通して考える

教育現場では、子どもが一人一台、パソコンやタブレットなどが普及される時代になってきています。 また、家庭でもパソコンやタブレットなどを通して、子どもが様々な情報にアクセスしたり、ゲームやSNS等の活用 …