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【療育(発達支援)の成果】象徴機能とスクリプトをキーワードに考える

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療育(発達支援)を長年行っていると、子どもたちの成長を実感する機会に多く出会うことがあります。

こうした出会いは、療育(発達支援)の〝成果″を感じる時でもあります。

もちろん、療育(発達支援)の成果は、複合的な要因が影響していることが多いため、特定の因果関係からは語ることができない難しさがあります。

一方で、〝○○の発達が大きく影響して○○の成果が出た可能性がある″〝○○の支援が大きく影響して○○の成果がでた可能性がある″といった仮説を立てることも可能だと言えます。

そして、長期的な子どもとの関わりを通して、この○○に当てはまるものが徐々に見えてくることがあります。

さらに、多くの事例を通して、仮説の精度を高めていくことが可能になっていきます。

 

それでは、療育(発達支援)の成果を感じる時として、どのような事例があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、療育(発達支援)の成果について、臨床発達心理士である著者の経験談から、象徴機能とスクリプトをキーワードに理解を深めていきたいと思います。

 

 

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【療育(発達支援)の成果】象徴機能とスクリプトをキーワードに考える

事例:小学校中学年のAちゃん(当時)

Aちゃんが小学校一年生の頃から、著者と関わりのある子どもです。

放課後等デイサービスに通所し始めた当時のAちゃんは、一人で特定のおもちゃ遊びを行うことが多いなど、静かな印象がありました。

特定のおもちゃ遊びは、一人で人形を使った遊びが多く、一人ごっこ遊びと言われるものでした。

一人遊びの中には、絵本を見たり、絵を描くことが増えていたことからも、〝象徴機能(あるものを別のものに置き換える機能)″の発達が進み始めている様子が伺えました。

一方で、大人からのアプローチにはあまり反応せず、一人の世界を楽しむ様子が多く見られていました。

また、一度、一人遊びに没頭すると、次の活動への切り替えが悪くなることも度々ありました。

大人からの言葉による促しなども、反応が少ない(注意として入らない)あるいは理解が難しい状態でした。

そのため著者を含めたスタッフは、決まった活動のスケジュールを整えていきながら、短い言葉による促しを繰り返していきました。

つまり、スクリプト(ある出来事に対するまとまった知識のこと)を活用したアプローチ方法を取りながら、それに加えて、言葉の発達(象徴機能)が進み始めていたことから言葉での促しを活用していきました。

それに加えて、Aちゃんが好むスキンシップ遊びや毛布ブランコなど、対人意識を促す遊びも取り入れていきました。

 

 


それでは、次に、象徴機能とスクリプトをキーワードに支援の経過をお伝えしていきます。

 

象徴機能とスクリプトへの支援から見たAちゃんの変化

Aちゃんは学校での学びと放課後等デイサービスでの遊びを通して、様々な言葉が理解できるようになっていきました(単語による理解です)。

この点に関しては、学校での勉強が大きく影響していたと思います。

そのため、以前よりも、言葉を活用した遊び、例えば、お絵描きの中で、吹き出しで言葉を入れる姿も出てきました。

また、絵本を読むとき、これまでよりも文字をはっきりと読む様子も増えていきました。

それに加えて、他児の遊びを傍で観察すると、それを自ら再現しようとする、いわゆる模倣遊びも増えていきました。

こうした遊びの変化は、〝象徴機能″の発達が背景にあったと言えます。

 

〝象徴機能″が発達したことで、Aちゃんは大人の声によく反応するようになっていきました。

例えば、〝おやつだよ!″と言うと、これまで遊んでいた遊びを一度止め、おやつの準備に向かうようになっていきました。

また、おやつの準備=手洗い→おやつ・お皿・コップの準備→おやつをテーブルに置く→いただきますの挨拶・・・といった一連の〝スクリプト(生活のフォーマット)″が徐々に定着していくようになりました。

これは、〝帰るよ!″など、他の〝スクリプト″にも通じる様子がありました。

 

こうした〝象徴機能″の発達や〝スクリプト″の定着の背景として、Aちゃんが安心できる環境の中で、大人との関わり(信頼関係)を持てたことも背景としてあったと感じています。

Aちゃんは、特に女性スタッフとのスキンシップ遊びを好み、スキンシップ遊びを通して情緒が安定する様子がよく見られていました。

そして、情緒が安定すると、その日の活動がよりスムーズに行くといった印象がありました。

このように、Aちゃんのポジティブな変化には、様々な要因が影響しているのだと言えます。

 

 

関連記事:「【象徴機能の発達について】象徴遊びを捉える3つの視点を通して考える

関連記事:「【共同注意行動の促し方④】スクリプトをキーワードに考える

関連記事:「【スキンシップ支援の3つのコツについて】療育経験を通して考える

 

 


以上、【療育(発達支援)の成果】象徴機能とスクリプトをキーワードに考えるについて見てきました。

子どもが言葉を理解する世界に入ることで、これまでとは異なる発達のステージに入るのだと実感できます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を通して、子どもの発達への理解を深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

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