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【療育(発達支援)の専門性】オーダーメイドの支援で大切な4つの視点

投稿日:2024年1月3日 更新日:

 

著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)をしてきています。

子どもたちとの関わりを通して、子どもたちにはそれぞれ異なる〝心″があり、そして、異なる〝発達″を辿るということを実感しています。

そのため、一人ひとりに応じた〝オーダーメイドの支援″がとても大切だと考えています。

 

それでは、オーダーメイドの支援をしていく上でどのようなことに気をつけていけば良いのでしょうか?

 

そこで、今回は、療育(発達支援)の専門性について、臨床発達心理士である著者の経験談を交えながら、オーダーメイドの支援で大切な4つの視点について理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

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【療育(発達支援)の専門性】オーダーメイドの支援で大切な4つの視点

著者が考える〝オーダーメイドの支援”で大切な4つの視点は以下です。

  1. 心という存在の多様性
  2. 平等と公平について
  3. 自信と達成感について
  4. チーム支援について

 

 

1.心という存在の多様性

子どもたちにはそれぞれ異なる〝″が存在しています。

例えば、学年や年齢が同じ、同じ傾向の〝発達特性″がある、興味関心が似ている、性格が似ている、など子ども同士ある種の共通性はあっても、それぞれの心″の状態はその日、その場面によって個々に違いがあります。

関わり手は、子どもたちの〝心″の状態を身体・情動で感じながら対応することが必要です。

例えば、困った表情をしていれば困り感に寄り添い個々に応じたサポート方法を工夫していくこと、何かに共感して欲しい発信をした場合には直ぐに応答するなど高い敏感性を見せること、意欲的な姿が見られた場合には肯定的態度を持って褒める、など様々なものがあるかと思います。

〝心″の状態をしっかりと感じながら関わっていくことで、子どもとの関係性はより良いものとなり、子どもの中で次の行動意欲が引き出されていくのだと思います。

 

 

2.平等と公平について

合理的配慮″という言葉があるように、教育現場を中心に、一人ひとりに応じた個別の配慮がとても重要になってきています。

つまり、〝みんな一緒に″〝同じルールを守る″といった〝平等性″の他、〝個別の理解と対応″といった〝公平性″もまた重要だということです。

例えば、遊びの中でルールがうまく守れない子がいたとしましょう。

このような場合には、関わり手の技量、つまり柔軟性が非常に大切であると思います。

〝なぜ、この子はルールが守れないのだろうか?″といった問いを持つことでその子なりの〝発達特性″や〝発達段階″が見えてくることがあります。

つまり、その子に合った配慮を工夫していくという視点に繋がっていくということです。

もちろん、あるルールを決めてそれを守ることは、社会を生きていく上でとても重要な能力ですが、それ以上に、子どもとあるルールという枠組みの中で再度〝折り合い″をつけていけるかどうかもまた必要な能力です。

関わり手は、一度決めたルールを徹底すること以上に、ルールを逸脱する子どもの状態や背景要因を考え、その中で、個別の配慮を考えていくこと(新たな提案による合意を得ること、つまり〝折り合い″を取ること)が大切だと思います。

こうしたやり取りを通して、子どもは大人に相談する力を学び、社会との付き合い方を学習していくのだと思います。

 

 

3.自信と達成感について

療育(発達支援)では、子どもたち一人ひとりの〝心″を満たしていくことがとても重要です。

〝心″が充実するためには、大人との関係性を基軸に、仲間関係や居場所に安心を持つことが必要です。

他者(大人や他児)からの肯定的な評価を得ることで子どもたちの自信、つまり、〝自尊心″は向上していきます。

〝自尊心″が向上することで、何かに挑戦したいといった思いもまた高まっていくのだと思います。

そして、何かに挑戦することで得られる〝達成感″は更なる〝自尊心″や〝自己効力感″の向上に繋がっていきます。

そのためには、繰り返しになりますが、関わり手が子どもたちの〝心″の状態に目を向けることが必要です。

〝心″のエネルギーが満たされることで、自信が湧き、さらに、何かに挑戦する動機が湧き、行動した結果、達成感を得ることに繋がっていきます。

〝心″のエネルギーを満たしていくためにも、一人ひとりの〝心″の状態を感じながら対応していく必要があると思います。

 

 

4.チーム支援について

子どもたちへの支援は一人で行うことはとても難しいです。

そのため、子どもに関わる大人同士が同じ目標・目的に向けて協力して支援に携わる〝チーム支援″が重要です。

もちろん、共通の目標・目的とは、子どもたち一人ひとりの個別の支援の方向性を考えるといった個別性が大事にされていく必要があります。

共通の目標・目的があることで様々な職種の人と連携するメリットが出てきます。

また、療育(発達支援)は、感情労働的な側面も多くあるため、関わり手同士がお互いの仕事を労う姿勢がとても重要だと思います。

チームの質は子どもたちの支援の質に直結するといっても過言ではないほど重要なものであると思います。

 

 


以上、【療育(発達支援)の専門性】オーダーメイドの支援で大切な4つの視点について見てきました。

日本社会は〝均一性″〝同調性″が強い文化です。

私たち大人は周囲に合わせるといった文化の中で強く育っているため、〝オーダーメイドの支援″を考える際には、一度、自分たちが学んできたものを一度脇において考えていく必要があるのかもしれません。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も一人ひとりに良い支援を届けていけるように、子どもたちの個別性にもしっかりと目を向けていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【療育(発達支援)の専門性】療育現場で必要な専門性の視点とは何か?

関連記事:「【療育(発達支援)の専門性】子どもの心を理解する視点

 

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