著者は、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)を、これまで10年以上にわたり行ってきています。
子どもたちの様々な成長に励まされる一方で、これまで数多くの〝失敗体験″もありました。
もちろん、〝失敗体験″自体は、後になって気づいたものであり、その時は良かれと思ってやっていたことでした。
一方で、〝失敗″体験を見直し、改善を図ることで、その後の療育(発達支援)の質を高めることに繋がっていくことも確かだと言えます。
そこで、今回は、療育(発達支援)の失敗エピソードについて、臨床発達心理士である著者の3つのエピソードを通して理解を深めていきたいと思います。
【療育(発達支援)の失敗エピソード】3つのエピソードを通して考える
1.過度な介入による失敗
大人は子どもに良かれと思い手出しが多くなることが時折あります。
著者がA君(当時、小学校低学年)と戦いごっこをして過ごしていた時のことです。
A君は著者と戦いごっこをはじめると、とても楽しんでいるリアクションをたくさん返していました。
それに伴い、著者はA君がもっと楽しめるように徐々に遊びをエスカレートさせていきました。
すると、さらにA君のリアクションは高まっていきました。
こうしたやり取りを繰り返していく中で、A君の気持ちは高まり過ぎてしまい、徐々に気持ちのコントロールが効かなくなっていきました。
結果として、A君は、他児に対する攻撃行動が出るほど、制御不能な状態に陥ってしまいました。
このエピソードは、著者が子どもに対して、良かれと思い、過度な介入をしすぎたことによる失敗例です。
そして、この体験を期に、遊びのメリハリや遊びの終わりへの着地の工夫、クールダウンをはさむなど、支援の幅が広がっていったように思います。
2.大人の価値観を押し付けた失敗
社会の中には、様々なルールがあります。
そして、著者が勤める放課後等デイサービスにも様々なルールがあります。
著者が外遊びを男子児童複数名としていた時のことです。
外遊びには様々な遊びがありますが、この時は追いかけっこをして遊んでいました。
追いかけっこを楽しんでいたA君は、途中から、B君から鬼になるように集中攻撃を受けはじめました。
もちろん、著者は特定の子どもが集中攻撃を受けないように、著者も含めて他の子どもにタッチするための注意を促していました。
しかし、一向に集中攻撃はやみません。
B君が集中攻撃してくることに対して、徐々に苛立ち始めたA君はB君をタッチする際に強く押し、B君を地面に倒してしまいました。
それと同時にA君も勢いで地面に倒れ込みました。幸い、両者に怪我はありませんでしたが、A君は体を起こすと走ってその場を去ってしまいました。
慌てて追いかけた著者は、倒してしまったことを謝るようにA君に伝えました。
つまり、理由はどうあれ、手を出した方が悪いということを、A君の気持ちを汲む前に伝えてしまいました。
その時の、A君の〝俺は悪くない″〝なぜ、俺の気持ちを分かってくれないのか″といった表情が手に取るように著者に伝わってきました。
著者が取るべき行動は、社会のルールを伝える前に、まずはA君が取った行動の理由(背景)を聞く・考える姿勢だったのです。
このエピソードを期に、著者は、何か子ども同士でトラブルがあると、まずは子ども一人ひとりの思いを聞く姿勢(子どもの視点に立つということ)を大切にするようになりました。
3.チームの雰囲気の悪さによる失敗
療育には個別療育もありますが、その多くは、チームによるアプローチが多いと言えます。
著者があるスタッフの方(Aさん)と活動に入る前にうまくコミュニケーションが取れていなかった時のことです。
著者はAさんに対して、なぜしっかりと打ち合わせをしないのかと、少しイライラ気持ちでいました。
一方で、Aさんも業務の忙しさから、著者に応対する余裕がありませんでした。
双方の忙しさ・イライラ感は活動にまで引き続いていきました。。
著者とAさんの関係の悪化が、チーム全体にまで影響してしまい、さらには、どんよりかつピリピリした雰囲気が子どもにまで及んでしまいました。
子どもたちは、チーム(大人たち)が醸し出す負の雰囲気、つまり、負の情動が伝搬してしまったのか、表情が暗くなり、活動を楽しめない子どもが多発する結果になってしまいました。
本来、療育において、大人の都合で、子どもにマイナスの影響を与えることはあっていけないことだと思います。
仕事としてやっている以上、プロフェッショナルな姿勢を持つ必要があるのだと、深く反省することになりました。
そして、このエピソードを期に、子どもにとっての安心感は大人たちが作る、心地よく・温かい環境にあるのだと強く感じるようになりました。
以上、【療育(発達支援)の失敗エピソード】3つのエピソードを通して考えるについて見てきました。
これまで見てきた3つのエピソードは、著者の失敗エピソードのほんの一部にすぎません。
人は失敗をしたくはありませんが、失敗を自覚し、改善策を考え実行していくことで、さらに質の高い仕事ができるのだと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践において、様々な挑戦と失敗を通して自己を成長させていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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