療育(発達支援)の現場で、子どもの〝イメージする力″を育てることは非常に重要です。
〝イメージする力″が弱いと、遊びの中で象徴遊びといった見立てやごっこ遊びがうまくできない様子がよく見られます。
発達障害児は、定型発達児と比べて〝イメージする力″の育ちにくさが特徴としてあります。
それでは、〝イメージする力″を育てることは子どもの発達上どういった意味で重要になるのでしょうか?
そして、〝イメージする力″を育むためには、どのような取り組みが必要になるのでしょうか?
そこで、今回は、療育(発達支援)で大切なことについて、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、〝イメージする力″を育てることの重要性について理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.」です。
〝イメージする力″の育ちによる子どもの変化
著書には、〝イメージする力″が育つことで以下のような変化が見られるとしています(以下、著書引用)。
①遊びが広がる。
②予測がしやすくなり、情緒が安定する。
③外界への柔軟な対応力が増す(臨機応変に行動できるようになる)。
④生活場面でできることが増える。
⑤対人関係の相互的な広がりが増す(コミュニケーション力が育つ)。
⑥認知的基盤やことばの力が育つ(学習面にプラスにはたらく)。
以上、様々な面でポジティブな変化が見られることがわかります。
〝イメージする力″の育ちとは〝象徴機能″が育つことです。
〝象徴機能″とは、ある物を他の物に置き換える機能のことを言います。
例えば、リンゴという頭の中のイメージを、実物のリンゴや言葉としてのリンゴに置き換えることです(イメージのリンゴ⇔実物のリンゴ⇔言葉としてのリンゴ)。
象徴機能が発達することで、ある物を他の物に見立てる〝見立て遊び″や、頭の中でのイメージを膨らませてストーリー展開していく〝ごっこ遊び″ができるようになっていきます。
〝イメージする力″の育ちは、言葉の発達に大きく貢献していくことで、先に見た著書の6つの変化が見られると考えられます。
〝イメージする力″を育てるために必要なこと
以下、著書を引用しながら見ていきます。
日常的に様々な経験を増やしていく(興味を広げていく)ことが大切です。
物事について一つの考えに偏らず、多方向から語ったり考えたりすることも有効な手立てです。
〝イメージする力″を育てるためには、①経験の量を増やす、②物事を様々な角度から考える、などによって身についていきます。
①経験の量を増やす
発達障害児は、定型発達児とは異なり、経験から様々な意味を学習していく困難さがあります。
一方で、自分の興味関心があることには、没頭するなど特定の領域においては強さを発揮する場合もあります。
興味関心を広げていく意味でも、様々な経験を積み重ねていく必要があります。
また、生きていく上で最低限必要となる、生活スキルや社会スキルも経験として伝えていく必要があります。
著者は療育現場で子どもたちの経験値を高めていけるように、様々な活動を考えています。
その中で感じることは、〝やったことがない″という〝未学習″が思いのほかあるということです。
〝未学習″を発見して一から学習していくことは、療育現場ではとても大切だと感じています。
②物事を様々な角度から考える
例えば、〝ままごと遊び″には様々なシチュエーションや役割があります。
物事を様々な角度から考えることとは、様々なシチュエーションを理解して行動することや、その中での役割を交代して演じることができることが例としてあります。
つまり、ある文脈を一義的に捉えるのではなく、文脈の変化に適応する力が必要だと言えます。
こうした力の発達は、概念の発達と非常に関連していると思います。
概念の発達とは、基準が変われば基準に応じて全体を変化させる力とも言えます。
例えば、ブロックを形で分類するのか?色で分類するのか?大きさで分類するのか?など、基準によって分類の仕方が変わるというものです。
そして、概念の発達とは、言葉の発達であり、思考の柔軟性の発達でもあります。
著者自身、子どものたちとの〝ごっこ遊び″が発展していく様子を見て、〝イメージする力″の育ちを感じる経験がこれまで多くあったように思います。
以上、【療育(発達支援)で大切なこと】〝イメージする力″を育てることの重要性について見てきました。
〝イメージする力″の基礎は〝遊び″の中で育まれていくのだと思います。
子どもは自分の興味関心を他者と共有していきながら、世界を拡張させていきたいという内発性(知的欲求)が備わっていると感じるからです。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちのイメージ力の発達に少しでも貢献していけるように活動内容を工夫していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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