著者は、長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしています。
最近あった大きなエピソードとして、著者が小学一年生の頃から見ていた子どもたちが無事に卒業を迎えたというものです。
6年前を振り返って見ると、一人ひとり本当に成長したことが実感できます。
それでは、療育を通して感じる子どもたちの成長にとって、具体的にどのような要因が大切だったと考えられるのでしょうか?
そこで、今回は、療育を通して感じる子どもたちの成長の要因とは何かについて、臨床発達心理士である著者の6年間の子どもたちとの関わりから学んだことについて考えを深めていきたいと思います。
療育を通して感じる子どもたちの成長
子どもたちの成長の要因には様々なものがあると思います。
その中で、著者が大切だと考えるもとして、①共有経験、②遊び、③社会性、があります。
①~③は、互いに独立して成長していくものではなく、相互に関連し合いながら成長していくものです。
それでは、次に、上記の①~③のそれぞれから見た子どもたちの成長について具体的に見ていきます。
①共有経験から見た成長
療育現場で大切となることが、〝○○の場所で、○○さんと○○の経験をした″といった〝共有経験″を積み重ねていくことだと感じています。
例えば、○○君と○○遊びをした、○○ちゃんと楽しくお昼を食べた、など、誰かと一緒にある体験・経験を共有することです。
共有経験は次に見る〝集団遊び″など遊びの中にも多く含まれており、さらに、〝社会性″の育ちにも寄与するなど、療育を行っていく上で非常に重要なものだと感じています。
共有経験を積み重ねていくことで、人は他者と様々な体験の中で生起する感情を共有したり、過去・未来の体験を共有するなど、時間を超えて様々なエピソードを共有することを可能にしていきます。
実際に、著者が見ている療育現場でも、これまでの共有経験を嬉しそうに話したり、また、これから誰かとやってみたいことを期待して話す様子が多く見られています。
②遊びから見た成長
療育の中で、〝遊び″は活動の中心となる大切なものです。
子どもたちは遊びを通して成長・発達していくと言われているほど、遊びの重要性は高いと言えます。
遊びを大きく分けると〝一人遊び″と〝集団遊び″があります。
〝一人遊び″を通して、子どもたちは創造性を高めていくことがでます。
例えば、工作遊びで自分がイメージしたものを形にしていく際に、道具を操作する手先の巧緻性といった運動機能、イメージを具現化するための認知機能など様々な能力が必要になっていきます。
人間の英知は、手を使うこと、手で物を創作することから生まれるとも言われていますが、それほど、手先の巧緻性といった運動機能の向上は、創造性といった認知機能を高めていくことに影響していくと考えられています。
著者の療育現場でも、年々、自分のアイディアを形にすることがうまくなった子どもたちも多くいます。
そして、一人遊びを通して、運動機能や創造性の育ちだけでなく、集中力や継続力など様々な能力の育ちにも寄与していくと感じています。
一方、〝集団遊び″を通して、他児との関わり方を学ぶこと、そして、人と関わることが楽しいといった力を身につけていくことができると実感しています。
著者が見ている子どもたちの多くは、人との関わり方がどこか不器用であったり、一人遊びを好むケースも多くあります。
しかし、興味関心を通して集団の結びつきがより強固になり、これまで一人遊びを好んでいた子が集団に参加する頻度が高まったり、分かりやすいシンプルなルールによって、他児とうまく遊べるようになった子どもたちも多くいます。
そして、最終的に、ルールがあるとうまく遊べること、人との関わりにその子なりの楽しさを感じられるようになったことがとても成長した点だと実感しています。
③社会性から見た成長
〝社会性″とは、様々な定義がある中で〝人とうまく関わる力″とも言えます。
社会性の育ちは、これまで①②で見てきた、〝共有経験″や〝遊び″の中で成長・発達していくものだと感じています。
著者が見ている子どもたちの中には、一方的に自分の思いを主張するなど他児との折り合いが難しいケース、イライラした気持ちの抑制が苦手など気持ちのコントロールが難しいケース、他児の思いや意図を理解することが難しいケース、など人との関わり方にどこか不器用さが見られることが多くあります。
しかし、その子のなりの成長・発達など個人差はありながらも、〝社会性″の育ちを感じることも実感しています。
例えば、これまで喧嘩ばかりしていた他児同士がうまく距離を取って遊べるようになったケース、トラブルを重ねていた他児同士が共通の興味のある遊びを通してうまく遊べるようになったケース、他児の話を理解しようと耳を傾けるようになったケース、様々な人の考え方の違いを理解できるようになったケース、イライラした気分を言葉で表現することができるようになったケース、相手との会話のターンテーキングがうまくなったケース、など上げれば膨大にあります。
そして、〝社会性″の育ちで大切なことには、嫌いな相手ともうまく距離を取って過ごすことができること、社会には多様な人がいるという認識、そして、先ほどの集団遊びで記載した内容と同様に、人との関わりをその子なりに楽しいと感じることができるようになったことがあると思います。
著者が見ている子どもたちは、多くの人との関わりを通して、その子なりに多様な人が社会にはいるという認識、そして、その中で、人との距離の取り方、人との関わり方、人と関わることの楽しさを身につけていったと感じられたことが成長した点だと実感しています。
以上、【療育を通して感じる子どもたちの成長の要因とは何か?】6年間の関わりから学んだことについて見てきました。
今回取り上げたキーワードは、〝共有経験″〝遊び″〝社会性″はどれも相互に関連性の高いものです。
そして、最後に、子どもたちは、療育現場といった〝社会″の中で、他者から認められ、受け入れられ、自己を発揮することができ、自分の良さや得意が見つかった・伸びたといった〝自己肯定感″に繋がる経験を積み重ねていくことができたこともまた、子どもたちの成長の要因に繋がる大切なものだと実感しています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も日々の実践を大切に、子どもたちの成長・発達にとってどのような療育が望まれるのかを探求していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。