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【療育で大切なこと】心の発達について:自尊心、自己効力感をヒントに

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著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)を行ってきています。

療育経験を通して子どもの成長を実感でき、子どもの成長に携わることができることが大きな喜びになっています。

子どもは成長する過程の中で、〝能力″と〝″を成長・発達させていきます。

両者は互いに関連性を持ちながらも異なる側面があると感じています。

 

それでは、子どもの成長に見られる能力と心の発達にはどのような様相があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、療育で大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談を踏まえて、心の発達を中心に理解を深めていきたいと思います。

 

 

子どもの〝心″の発達を理解する視点

現場で子どもたちと向き合っていると、その瞬間、その状況、そして、長い時間経過の中で子どもには様々な心情の変化があることに気づかされます。

例えば、これまで一人遊びに夢中で集団遊びが苦手だった子どもが、集団遊びを時々見に来るようになる、そしてある時、勇気を持って混ざろうと意思表示をするなど、その時々で心情の変化を感じることがあります。

子どもの〝心″とは、子どもの主体性を感じることで、その場で共に活動する大人が主観的にくみ取ることで感じ取られるものです。

大人が〝ここ″にいながら、子どもの〝そこ″を感じるといった状態は〝間主観性″とも言われています。

それは、大人の〝主観″によって、相手の(子どもの)〝主観″を感じる・推測することだと言えます。

子どもの〝心″をもう少し療育(発達支援)の現場での〝育ち″という視点で考えた時に、重要となるキーワードが〝自尊心″や〝自己効力感″などがあると考えています。

自尊心″の〝育ち″を実感した例を考えると、これまで自分に自信が無かった子どもが〝イキイキした表情へと変化した″〝明るい声のトーンへと変化した″〝ポジティブな言動へと変化した″〝前向きな動きや姿勢へと変化した″などの様子の変化が様々な状況の中で主観的に感じ取れる場合がよくあります。

自己効力感″の〝育ち″を実感した例を考えると、これまで様々な活動に対して意欲的ではなかった子どもが、〝自ら進んで活動に取り組む様子へと変化した″〝何かに取り組む際に言動が前向きなものへと変化した″などの様子の変化もまた様々な状況の中で主観的に感じ取れる場合がよくあります。

こうした〝心″の成長・発達の理解は、関わる大人の主観によってくみ取られる所が多いにあると実感しています。

 

 

子どもの〝心″の発達を支援する視点

次に、子どもの〝心″の発達を支援する視点(方法)について見ていきます。

著者が大切にしている点は、①子どもの〝主体性″を大切にする②子どもの発信に対して応答性の質を高める、があります。

 

 


次に、それぞれについて見ていきます。

 

①子どもの〝主体性″を大切にする

私たち人間には〝主体性″があります。

子どもたちはその時々において、取り組んでいることに対して様々な思いを抱いています。

主体性″とは、子どもが何かに対して能動的な行為を見せている時に強く感じ取ることができます。

例えば、遊びがうまくいかずイライラしている状態、他児が行っている遊びに興味を抱いている状態、興味のある活動に対して無我夢中で取り組んでいる状態、遊びがうまくできた達成感、他児と共通の話題で盛り上がり気分が高揚した状態、など、その時々によって、そして、個々によって様々な思いを抱いています。

関わる大人はこうした一人ひとりの子どもの今の状態に目を向けていくことが大切だと言えます。

こうした〝主体性″を大切にした関わりの積み重ねが、他者(大人)から理解されたといった他者への信頼感を育み、長い時間をかけて〝自尊心″といった〝心の育ち″の発達に大きく貢献していくのだと思います。

 

 

②子どもの発信に対して応答性の質を高める

子どもたちは、表現方法は異なりますが、様々な気持ちを発信します。

子どもの気持ちの発信に対して、その思いの意味を考え、しっかりと受け止めるといった応答性の質を高めることが大切です。

もちろん、一日中、子どもの発信に対して過敏に反応すれば良いというわけではありません(そもそも現実的に不可能です)。

ここで大切になるので、〝子どもが本当に困っていること″や〝この喜びや発見を心の底から共有したい!″といった思いについて、しっかりと反応・共感することが必要だということです。

つまり、応答する量よりも〝質″が大切だということです。

自分の思いをしっかりと受け止めてもらえた子どもは大人に対して安心感を抱きます。

それは、長い年月をかけて〝自尊心″といった心の発達に繋がる大切な育ち貢献していくのだと思います。

 


こうした〝主体性″を大切にした関わり、並びに、発信への応答の質を高めることは、〝愛情のエネルギー″の充足に繋がっていきます。

そして、〝愛情のエネルギー″の充足は〝意欲のエネルギー″の充足にも関連していくのだと思います。

つまり、子どもは自分の心が満たされていく中で、外の世界に目が向き、意欲的に活動するようになっていきます。

そして、多くの活動を通して少しずつ成功体験が積み重なることで、〝自己効力感″もまた高まっていくと言えます。

〝自尊心″や〝自己効力感″といった心の発達は、関わる大人が子どもの今をしっかりと受け止めていくことで、子どもの〝主体性″が徐々に高まっていく(次に繋がる行動の動機づけの向上)といったループの中で育まれていくのだと思います。

 

 


以上、【療育で大切なこと】心の発達について:自尊心、自己効力感をヒントに、について見てきました。

〝心″の発達は、関わる大人が子どもの思いを汲みとり応答していく中で少しずつ育まれていくのだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちの心の発達に貢献していけるように、子どもたちの今の心の状態をしっかりと受け止めていけるように自分の感性を鍛えていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【療育で大切なこと】能力の発達について:発達の最近接領域と足場づくりをヒントに

-大切なこと, 療育, 自尊心, 自己効力感

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