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【療育で大切なこと】〝えこひいき″を通して考える

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著者な長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。

発達障害といっても、その状態像・困り感・発達段階などは非常に多様です。

様々な療育経験を通して、著者は〝えこひいき″が重要であると実感することがあります。

一方で、〝えこひいき″とは特定の人を〝特別視″することからもよくないと考えている人も多いと思います。

 

それでは、療育現場において、なぜ〝えこひいき″の視点は重要なのでしょうか?

 

そこで、今回は、療育で大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、〝えこひいき″を通して理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.」です。

 

 

 

〝えこひいき″はなぜ大切なのか?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

支援が必要な子どもに「できない」と言ってしまうのではなく、少なくとも、そこ子を大事にする姿勢を示すことくらいはできるはずです。可能なかぎり、その子を「えこひいき」するのです。

 

それを見たほかの子が「○○ちゃんだけずるい」と言ってきたら、その子にも「えこひいき」してあげます。そうやって、次々に「えこひいき」をしていけば、子どもは特定の子に手厚く支援している理由がだんだんわかってくるはずです。

 

以上の引用は、〝通常学級″を想定した内容になってます。

著者は特別な配慮が必要な子どもたちが集まる〝療育現場″においても同様に、〝えこひいき″は大切だと考えています。

そう考える理由は、〝合理的配慮″の観点からも説明できます。

合理的配慮″は、〝平等″以上に〝公平″を重視する考え方を取っています。

つまり、一人ひとりの困り感に対して、個に寄り添って配慮すべき事項を考え実行していくという視点です。

世間的には、〝平等″といった〝みんな同じ″といった視点を重視する場合もよく見受けられますが、特別支援教育や療育現場において、非常に重要なのは〝公平″性の視点です。

人はそもそも違った存在・ダイバーシティといった前提があるからこそ、その違いを理解した配慮が必要になるわけです。

 

つまり、〝えこひいき″とは、一人ひとりへの配慮すべき事項を考えていくことだと著者は考えています。

著書にあるように、仮に他児から見て特定の子どもにだけ〝えこひいき″をしているようであれば、その他児にも〝えこひいき″をして関わることが必要だと思います。

大切なことは、〝えこひいき″をしているからそれを廃止するのではなく、一人ひとりを〝えこひいき″していくような関わり方を考えていくことにあります。

 

 

著者の経験談

著者は自分が受けた学校教育の影響もあり、療育をはじめた当初は〝えこひいき″はよくないと考えていました。

そのため、ある種、〝みんな同じ″といったルールや決まり事を優先に対応していたように思います。

一方で、こうした考えのもと療育を行っていく中で、様々な不具合が出てきました。

例えば、過度なルールや全体主義を重視した対応の結果、子どもとの関係が悪化したこと、子どもに不信感を持たれたこと、癇癪やパニックなどが時折見られるなど結果として悪い方向に向かうことが多かったように思います。

こうした行動を修正できたのも、一人ひとりの子どもの発達や心の状態を優先して対応するように少しずつ心がけていったことが大きな要因だと思っています。

一人ひとりについて深く理解し対応しようとすると、どうしても〝えこひいき″せざるを得ない場面が出てきます。

そうなると、今度は関わる子どもたち全員を〝えこひいき″していく必要が出てきます。

しかし、関わる子どもたち一人ひとりを〝えこひいき″していく視点を持つと、自ずと子どもたちが何に困っているのか、何を欲しているのかが徐々にわかるようになるといった実感が出てきます。

さらに、仮にA君を〝えこひいき″しても、B君に対しても〝えこひいき″をすることで、自ずと子どもたちからの不満の声は減っていったように思います。

この人(著者)は、みんなの違いを理解しようとして必死に愛情を持って関わろうとしているといった態度が伝わっていくからだと思います。

 

 


以上、【療育で大切なこと】〝えこひいき″を通して考えるについて見てきました。

現在の教育の方向性は、間違いなく全体主義から個別支援、つまり、〝オーダーメイドの支援″に向かっていると思います。

それは、発達障害など発達に躓きがあろうがなかろうが一人ひとりの子どもにとって必要な考え方だと思います。

そして、〝オーダーメイドの支援″を考えていく際に、今回見てきたような〝えこひいき″といった一見するとネガティブなワードを直視せざるを得ない場面に必ず出会うことになると感じています。

その中で、個に寄り添うこと、個の発達、個の教育において何が大切なのかが少しずつ見えてくるのだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたち一人ひとりをえこひいきしている状態に自信が持てるように自身の療育を見つめ直していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「ASD特性への配慮の重要性について-青年期・成人期を見据えて-

 

 

加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.

-大切なこと, 療育

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