〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。
幼い時期の子どもにとって養育者(主に親)を中心とした関わりが多くあります。
一方で、親といっても〝母親″〝父親″がいます。
それでは、両者には異なる愛着の質の違いはあるのでしょうか?
そこで、今回は、父親との愛着について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、遊びの質を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岡田尊司(2015)父という病.ポプラ新書.」です。
父親との愛着:遊びの質を例に
以下、著書を引用しながら見ていきます。
父親の方が優れているところもあった。それは、遊びの要素を備えているという点だ。
母親は型通りの遊びやおもちゃを使った遊びを好み、父親は体を使った遊びや型にはまらない、独自の遊びを好んだ。
子どもは、母親と遊ぶことよりも、父親と遊ぶことにより積極的な反応を示した。この遊びに関しては、父親は、母親にはない捨てがたい魅力があるということになろう。
著書の内容から、〝父親″は〝遊びの要素″を備えているといった質的な違いがあると記載されています。
これは、〝母親″が型通りのおもちゃ遊びをするのに対して、〝父親″は、体を使った遊びや〝型にはまらない独自の遊び″をするといった違いがあるというものです。
そして、子どもは〝遊び″に関しては、このような独自な遊びをする〝父親″に積極的な反応を見せることが分かっています。
つまり、〝遊び″を通して、〝父親″は子どもと、より良い〝愛着″関係を築くことができる可能性があると言えます。
著者の経験談
著者は児童発達支援や放課後等デイサービスなどを通して、未就学児から小学生を対象に療育をしてきています。
療育現場には、男性スタッフもいれば、女性スタッフもおります。
これまでの療育経験を踏まえて感じることは、男性と女性において、子どもへの関わり方、質の違いが確かにあると実感しています。
その内容は、今回参照した資料同様に、女性スタッフが型通りの遊びをする傾向があるのに対して、男性スタッフは型にはまらない、独自の遊びをする傾向があるといった印象があります。
もちろん、全ての人に該当するものではなく、女性スタッフでも独自の遊びが得意な方もいましたし、男性スタッフでも型通りの遊びを好んで行う方もおりました。
あくまでも、割合や傾向として見られるものであり、どちらの遊び方が大切といったものではないかと思います。
一方で、確かに子どもたちは〝型にはまらない・独自の遊び″をする男性スタッフが多くとる遊びの方により注意を向ける様子があるのもの事実かと思います。
男性スタッフの方が、本来的な特徴からも〝バカになって遊ぶことができる″のだと思います。
著者が子どもの頃を想起しても、男子の方が、やんちゃで危険な遊びをすることが格段に多く見られました。
このような生物として持って生まれたものの違いが、子育てや療育の違いとして出ているのかもしれません。
そして、子どもたちは、型にはまらない、面白い遊びを著者が行うことで、徐々に遊びへの期待値も高まり、遊びの中で様々な感情を交流する経験が増えていくことから、著者との間に深い〝愛着″関係を築いていくことができるのだと感じています。
つまり、日々の〝遊び″が中心となって、子どもたちとの関係性がより深まっていることが実感できるのだと言えます。
子どもは〝型にはまらない・独自の遊び″を通して、外の世界への興味関心を高めていくことに繋がり、そして、様々な経験を通して内面世界(イメージの世界)も充実していくのだと思います。
〝愛着″と言えば、〝母親″、つまり〝母性″により強みがあると感じますが、〝遊びの要素″に視点を移すと〝父親″にとっても強みがあるのだと理解できます。
以上、【父親との愛着について】療育経験から見た遊びの質を通して考えるについて見てきました。
昔は、父親が仕事、母親が子育てといった役割分担のもと育児を行っていた家庭が多くあったと思います。
一方で、最近では、共働きの世帯が増え、父親も育児をする役割が増えてきています。
こうした労働環境・社会環境の変化によっても、子どもが親との間に築いていく愛着関係が質的に変化していく可能性もあります。
大切なことは、子どもが安全・安心の基地を確保でき、外の世界を広げていけるような関わり方を行うことだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちの世界を少しでも広げていけるように、遊びをはじめとして療育の質を高めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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岡田尊司(2015)父という病.ポプラ新書.