〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。
子どもとの愛着関係の中で、〝父親″も重要な存在になります。
子どもが〝父親″に対して、〝どのような父親をイメージ″しているかによっても、愛着の質は変わってくるのだと考えられます。
それでは、子どもが持つ〝父親像″にはどのような要素が重要となるのでしょうか?
そこで、今回は、父親との愛着で大切な父親像について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、母親が持つ父親へのイメージの重要性について理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岡田尊司(2015)父という病.ポプラ新書.」です。
父親との愛着で大切な父親像について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
現実に父親がいるかいないかよりも、どういう父親像をもつかが重要だ。父親とは、現実の存在以上に、いわば社会の掟や秩序の体系を象徴する存在でもある。
重要になるのは、母親が心の中に抱く父親像であり、また母親が子どもの父親をどう思っているかということだ。
著書の内容から、父親との愛着で大切なことは、子どもが持つ〝父親像″であり、中でも、〝母親″が持つ〝父親像″が子どもに与える影響が大きいと考えられています。
〝父親像″とは、その場に父親が物理的に存在し、直接的な関わりを通して感じる部分もありますが、それ以上に、子どもの心の内部にイメージされる〝社会の掟や秩序″といった意味が強くあります。
〝父親″の存在は、〝ブレーキ機能″が重要な役割でもあるため、社会におけるルールや秩序をある意味象徴した存在として子どもが見る場合があります。
もちろん、父親の影響度は個々の親子関係によって異なりますが、一般的には、〝母親″が〝心の安全基地″であるのに対して、〝父親″は〝探索活動を促進する″ための模範となる存在であったり、著書にあるように社会のルールといったある種の〝ブレーキ機能″を学ぶことができる存在でもあります。
ここで大切なことは、〝母親″が〝父親″に対してどのような〝イメージ″を持っているかどうかです。
例えば、〝母親″が強くて頼りになり、人の思いをしっかりと理解してくれる〝父親″の〝イメージ″を持っていれば、子どもも母と同様なイメージを父に抱く可能性は高いと言えます。
一方で、〝母親″が困った時に助けてくれない、自己中心的であり、家族の思いをうまく汲みとってくれないなどネガティブな〝イメージ″を持っていれば、子どもにもそのネガティブなイメージが投影される可能性が高いと言えます。
多くの家庭において、〝母親″の情緒の安定は子どもの安全・安心感を維持する上でとても大切です。
つまり、子どもにとって家庭の中心的な存在は〝母親″である場合が多いと言えます。
その〝母親″をうまく支え、リードすることのできる〝父親″の存在は、家庭全体を安定した状態へと導き、そして、家族の絆を深めるものへと繋げる重要な役割となります。
子どもにとって〝母親″の心理状態が安定していることが何よりも重要であり、その〝母親″が良い〝父親像″を抱くことのできる〝父親″の存在もまたとても大切だと言えます。
著者の療育経験を踏まえても、〝母親″が子どもにとって中心的な存在であることは様々な家族との関わりを通して実感させられます。
そして、〝母親″が安定している場合には、〝父親″の存在が非常にポジティブに働いているケースが多いと感じています。
それは、子どもたちが〝父親像″に対する言動が、ポジティブな内容である場合が多いことからも、おそらくこうした家庭においては〝母親″が子どもに良い〝父親像″を連想させるようなことを子どもに伝えているのだと感じさせられます。
そして、良い〝父親像″を持っている子どもは、〝父親″が目の前にいなくても、〝自己コントロール力″がしっかりと育まれていくなど、〝心″の中に〝社会の掟や秩序″を連想する力が身に付いていく部分が少なからずあるのだと思います。
以上、【父親との愛着で大切な父親像】母親が持つ父親へのイメージの重要性について見てきました。
父親へのイメージは子どもが一人で作り上げる部分もあるとは思います。
一方で、今回見てきたように、子どもにとって愛着関係の中心となる母親が持つ父親へのイメージが、子どもの〝父親像″の形成に強く影響しているのもまた事実であると思います。
そのため、家庭の中で良い夫婦関係ができていることがとても大切だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も愛着について様々な観点から理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【父親が持つ愛着の役割】〝ブレーキ機能″を通して考える」
岡田尊司(2015)父という病.ポプラ新書.