〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。
〝愛着関係″の中で、最も重要な存在だと考えられている人物に〝母親″がいます。
もちろん、〝母親″以外にも重要な他者はおりますし、〝愛着関係″は様々な社会的なネットワークの中で育まれるところも多くあります。
それでも、多くの人が〝母親″の存在が、子どもとの〝愛着関係″ではとても大切だと認識していると思います。
それでは、母親との愛着が安定したものになるためには、どのような要因が重要になってくるのでしょうか?
その一方で、安定した愛着を理解するためには、不安定になる要因について理解をしていくこともまた大切だと考えます。
そこで、今回は、母親との愛着が不安定になる要因について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、〝両親の不和や離婚″〝過度な支配やコントロール″を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岡田尊司(2014)母という病.ポプラ新書.」です。
母親との愛着が不安定になる要因
著書には、母親との愛着が不安定になる要因として、①〝両親の不和や離婚″、②〝過度な支配やコントロール″を上げています。
それでは、次に、この2つについて具体的に見て行きます。
①〝両親の不和や離婚″
以下、著書を引用しながら見ていきます。
安定した愛着を両親と結んでいればいるほど、両親の諍いや片方の親との離別は、その子の愛着に深い傷を負わせる。対人関係や恋愛に対して懐疑的になったり消極的になったり、逆に親代わりを求めようとして過剰に依存する場合もある。
著書の内容におけるポイントは、両親との間に安定した〝愛着″を築いている場合には、〝両親の不和や離婚″によって、より〝愛着″にダメージが加わるという点です。
つまり、これまで親との間で築いてきた強固な関係性が、両親の喧嘩が日々繰り広げられるなどの〝両親の不和″は、自らの安全基地が脅かされる状態になります。
また、〝両親の離別″は、子どもにとって生活が大きく変わることになります。
離別した相手がこれまで仲の良かった父親であれば、なおのこと心理面へのダメージは大きくあると言えます。
著者は療育現場で様々な子どもたちと関わる機会があります。
その中で、時折見られるケースに、〝両親の不和″によって子どもの状態が悪くなるといったものです。
これまで明るく活発であった子どもがどこか表情が暗く、活力が低下してしまうなど、マイナスな状態像へと変化してしまうこともあります。
こうした状態が〝長期化″することは、子どもの発育において、非常にマイナスな影響を及ぼすと感じています。
そのため、著者の療育現場では〝保護者支援″にも重きを置きながら、子どもが安心して活動できるような環境を作っていくことを大切にしています。
②〝過度な支配やコントロール″
以下、著書を引用しながら見ていきます。
母親は最善を尽くし、良い親をしているつもりでも、子どもが求めているものとの間にギャップが広がり、愛着は不安定となっていく。子どもの気持ちを汲みとれていないからだ。
著書の内容におけるポイントは、母親の思いと子どもの思いとのズレ・すれ違いが不安定な〝愛着″へと繋がっていくということです。
母親としては、子どものことを思い、良かれと思って行っていることが〝過度な支配やコントロール″に結果としてなってしまっているといったものです。
安定した愛着関係を築く上でのポイントは、〝無条件の信頼関係″です。
つまり、子どもを〝支配・コントロール″しない関わり方が〝無条件の信頼関係″を作る上では大切だと言えます。
著者は療育現場で関わる子どもたちとの関係づくりの際に、〝子どもの立場で考える″ことを大切にしています。
もちろん、日々の忙しい活動の中で、すべての子どもの思いを汲み取り、期待に応えることは不可能と言ってもよいでしょう。
一方で、子どもから見て〝この人は自分のことを大切に思っていてくれる″〝愛情を持って接してくれる″〝分かろうとしてくれる″〝頼りになる″〝安心できる″などの感覚が持てるかどうかが、その後の信頼関係を形成する上で大切なのだと思います。
つまり、愛着で大切なことは、〝子どもから見て安全・安心を与えてくれる存在″に大人がなっているかどうかがとても重要な意味を持つのだと言えます。
以上、【母親との愛着が不安定になる要因】〝両親の不和や離婚″〝過度な支配やコントロール″を通して考えるについて見てきました。
今回見てきた母親との愛着が不安定になる要因を理解していくことは、安定した愛着関係をどのようにして築き上げていけば良いかのヒントを得ることに繋がると思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちに安全・安心の基地を提供していけるように、日々の子どもたちとの関わりの質を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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岡田尊司(2014)母という病.ポプラ新書.