著者は放課後等デイサービスで、発達に躓きのある子どもへの療育をしています。
日々、とても可愛い子どもたちと楽しい日々を送っています。
一方で、支援において何が必要で大切であるのかを試行錯誤する日々でもあります。
時には、支援内容について壁にぶち当たり悩むことも多くあります。
それでは、放課後等デイサービスの中でどのような支援が大切だと言えるのでしょうか?
そこで、今回は、放課後等デイサービスにおける支援で大切な視点として、臨床発達心理士である著者の経験談と様々な書籍からの学びをもとに、〝人″という存在が持つ重要性から理解を深めていきたいと思います。
今回は、①信頼できる大人の存在の重要性と②信頼できる仲間の存在の重要性の2つについて見ていきます。
1.信頼できる大人の存在の重要性
信頼できる大人の存在は、子どもたちが日々の生活を安心して過ごす上で非常に大切です。
子どもは大人との信頼関係をベースに様々なことに挑戦する意欲が湧いてくるものだと思います。
それは、日々の子どもたちの様子を見ていても実感できます。
例えば、大人と興味関心を分かち合おうとする様子が増える、大人に相談しにくることが増える、大人がある活動に促すと意欲的に行動する様子が増えるなどです。
一般的には、小学校低学年においては、大人との関係性(アタッチメント)が非常に重要であり、中学年以降には友人関係へと発展していくと考えられています。
一方で、発達に躓きのある子どもにおいては、中学年・高学年になっても個人差はありますが、大人とのアタッチメント関係が大切だと感じることもあります。
それは、発達がゆっくりである知的障害児や境界知能の子ども、そして人に注意が向きにくい自閉症児や愛着障害のある子どもなど、定型発達児とは異なる様相を示していることも要因としてあると思います。
信頼できる大人の特徴には、子どもの行動や情動への理解が高く、子どもの発信に対して非常に敏感に応答する人たちだと言えます。
これはつまり、〝自分の気持ちを分かってもらえた″〝共感してもらえた″という感覚を子ども自身が持てているかが重要だということです。
そして、信頼できる大人との関係が安定することは、他の様々な能力(実行機能・利他的行動、心の理論など)にポジティブな影響を与えることがわかっています。
さらに、こうした安心できる大人がたくさんいる穏やかで明るい場の雰囲気は、子どもたちの非認知能力の発達において非常に重要であると言われています。
関連記事:「【〝折り合い″をつける力の根底を支えているものとは?】発達障害児支援の現場から考える」
関連記事:「【実行機能への支援で最も大切なこと】療育経験を通して考える」
2.信頼できる仲間の存在の重要性
子どもは同じ興味関心のある活動を通して仲間関係を発展させていきます。
あるいは、他の子どもがやっている遊びや話の内容に興味を持ち、関わりの接点が増えていき仲良くなっていくケースも多くあります。
それ以外にも、信頼関係の取れている大人が子ども同士を繋ぐ役割を担い、徐々に交流が深まっていったケースも多くあります。
子ども同士の信頼関係の発端には様々な経緯がありますが、共通性として、興味関心が似ている点や認知能力が比較的同じレベルであるといった特徴もあるように感じます。
子どもたちは信頼のおける仲間を持つことで、放課後等デイサービスで非常に生き生きと活動する様子が見られます。
そして、仲間関係といった大人よりも年齢的に距離の近い関係において、集団遊びの楽しさを学び、集団の中で自己理解を深めていき、さらに、集団の中で自信を獲得していきます。
仲間関係とは何も同じ年齢の間だけで形成されるものとは限りません。
著者の放課後等デイサービスでは1~6年生までが通所しているため、最大で6つ歳が離れています。小学生の6歳の年齢差は非常に大きなものです。
こうした異年齢集団の中で、年下の子どもは年上の子どもに憧れを持ち、何かを教えてもらうことに喜びを感じることが多くあります。
一方で、年上の子どもは年下の子どもに可愛らしさといった思いを抱き、面倒を見てあげたい、何かを教えてあげたいといった世話をする気持ちが芽生えることが多くあります。
このような様々な年齢の子どもたちの交流の機会を生む放課後等デイサービスは、家庭でも学校でもない第三の居場所(サードプレイス)として、社会性の発達に大きく貢献できる部分があると感じています。
関連記事:「発達障害児にとって大切な〝サードプレイス″の価値について考える」
関連記事:「【年上と遊ぶことの価値とは何か?】異年齢における遊びの大切さについて」
関連記事:「【年下と遊ぶことの価値とは何か?】異年齢における遊びの大切さについて」
以上、【放課後等デイサービスにおける支援で大切な視点】〝人″という存在が持つ重要性について見てきました。
家庭でも学校でもない放課後等デイサービスには、親や先生といった立場以外の大人と関わる機会があり、その関係もまた地域の中の重要な大人といった特徴を有しているのだと思います。
また、別の学校や異なる年齢の他児との関わりを通して、地域といった広い視点で他者と関わる機会を得ることができ、異年齢集団による教える・教えられる関係から多くのことを学ぶことができるのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も放課後等デイサービスで大切だと感じる支援内容について様々な視点から発信していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。