発達障害児・者には様々な感覚の問題が見られると言われています。
そのため、発達障害児・者支援に携わる人たちにとって、感覚の問題への理解と対応に関する知識は必須であると言えます。
中でも、〝感覚過敏″に関する問題は多く見られます。
それでは、なぜ感覚過敏は生じるのでしょうか?
そこで、今回は、感覚過敏の原因について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.」です。
感覚過敏の原因について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
感覚の過敏性が発生する原因は、①過剰に感覚情報を入力してしまう、②防衛反応が発動している、という2つが考えられます。
著書には、〝感覚過敏″の原因は、主に、①感覚情報の過剰な入力、②防衛反応の発動、の2つがあると考えられています。
それでは、次に、以上の2つの原因について、著者の経験談も交えながら見ていきます。
①感覚情報の過剰な入力
著書には、感覚情報の入力の度合いと、それに対する困り感として3つの段階があると記載されています(以下、著書引用)。
・情報入力が少なく、困り感がない人
・やや感じ取りすぎるが意識や練習でなんとかなる人
・感じ取りすぎてしまい、意思ではどうにもできない人
このうち、2番目に相当する〝やや感じ取りすぎるが意識や練習でなんとかなる人″には〝個人へのアプローチ″が必要となり、3番目に相当する〝感じ取りすぎてしまい、意思ではどうにもできない人″には〝環境アプローチ″が必要になります。
つまり、感覚情報の入力の度合いが強く、それによる困り感が強いほど、〝環境へのアプローチ″といった環境調整が重要になってくると言えます。
著者も、この知見はとても納得がいきます。
著者が見てきた発達障害児・者(中でも自閉症の人)のうち、感覚情報が入り過ぎていまい、困り感が生じる(パニック・逃避行動など)場合、まずは未然に困り感を生じさせないような環境調整が必要になってきます。
そして、困り感が減り(環境調整を行うことで)、少しずつ困り感に繋がっている感覚刺激の存在が意識できるようになってはじめて〝個人へのアプローチ″の段階に入っていくのだと思います。
②防衛反応の発動
人間には自分の身に危機が迫ると〝防衛反応″が発動することが生物として備わっています。
例えば、夜道で背後から見知らぬ不審な人が後をつけてきたときに、恐怖を感じる場面を考えてみましょう。
このような場合、〝防衛反応″が発動し、〝闘争・逃走反応″といった〝戦うかor逃げるか″といったモードになったり、あるいは、過度な恐怖を感じることで〝不動化″といった身体が動かない状態(酷い場合気絶することもある)になることがあります。
そして、〝感覚過敏″のある人たちは、〝防衛反応″が発動しやすいことが特徴としてあると著書には記載があります。
さらに、〝感覚過敏″があると以下の特徴もあると考えられています(以下、著書引用)。
防衛反応は、不安な状況に対応するための機能です。よって、防衛反応が出やすい感覚過敏の人は、同時に「不安性の高さ」ももっています。
たとえば自閉症を抱える人では、感覚過敏と不安性の高さの両方を抱えている人が多いことが知られています。
著書の内容から、〝感覚過敏″と〝不安の高さ″は関連し、そして、自閉症の人には、この両者の特徴が出やすい傾向があると考えられています。
著者がこれまで関わることがあった自閉症児・者の中でも、特に〝感覚過敏″が強い方には〝不安性が高い″といった特徴が確かにあったと思います。
こうした方は、外の世界に対して、一見すると些細なこと(本人としては重大なこと)でも、恐怖や不安を強く感じることがあります。
一方で、安心できる環境(人・物・空間)を整えていくことで、過敏性が減り、同時に不安感も軽減されていった人も多く見られています。
支援のポイントとして、自閉症の特性の理解に加え、感覚の過敏性についての理解と対応についても取り組みを進めることが大切だと感じています。
以上、【感覚過敏の原因について】発達障害児支援の現場を通して考えるについて見てきました。
感覚過敏の原因には、①感覚情報の過剰な入力、②防衛反応の発動、の2つがありました。
これらの原因について、深く理解していくことで、感覚過敏への対応策も少しずつ見えてくるのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も感覚過敏の理解を深めていきながら、その知見をより良い発達理解と発達支援に繋げていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【感覚過敏への支援方法について】療育経験を通して考える」
前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.