〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。
一方で、幼少期の愛着形成がうまくいかないことで、〝愛着障害″に繋がる危険性があります。
そして、愛着障害のある子どもへの関わり方として、誤った対応方法があると言われています。
それでは、どのような対応方法が愛着障害の子どもに対してまちがった関わり方だと考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、愛着障害のある子どもへの誤った対応として、厳しく叱る・叱らないといった2つの対応から理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「米澤好史(2024)発達障害?グレーゾーン?こどもへの接し方に悩んだら読む本.フォレスト出版.」です。
愛着障害の子どもへの誤った対応①:厳しく叱る
以下、著書を引用しながら見ていきます。
「叱る」という対応は、愛着の絆がうまく結べていないこどもにとっての解決策にはなりません。
愛着の問題を抱えるこどもは、感情の発達が未熟なため、この振り返りができません。自分で自分の気持ちがわからないのですから、当然です。もちろん相手の気持ちもわかりません。
著書の内容から、〝厳しく叱る″対応は、愛着障害の子どもへの対応として誤った対応だと考えられています。
それは、愛着障害の子どもは、感情が未発達なため、厳しく叱って反省を促しても、自分の気持ちがよくわからないため(相手の気持ちもわからない)振り返りができないからです。
振り返りを行うためには、子どもが自他の感情をある程度は理解しており、例えば、相手に対して嫌な行動をしてしまったことで、相手が○○の理由から嫌な思いをしたといった感情理解が必要になってきます。
相手の嫌な思いが理解できるということは、同時に、その子自身にとっても嫌な気持ちになってしまったという感覚・理解も必要だと言えます。
こうした感情理解ができるからこそ、叱られることで自分の行動を修正しようといった振り返りの意味が出てくるのだと言えます。
また、愛着障害の症状の程度によって、振り返りの効果に違いが出てくることも考えられます。
一方で、厳しく叱責されることで、ネガティブ行動(パニック、攻撃行動など)が助長してしまったり、叱る大人を極端に回避するなど、マイナスとなる行動が増えていくリスクがあると言えます。
それでは、子どもが起こす様々な困った行動に対して、一切〝叱らない″対応はよいのでしょうか?
次に、この点の問題について見ていきます。
愛着障害の子どもへの誤った対応②:叱らない
以下、著書を引用しながら見ていきます。
まったく叱らなければいいのかというと、それも違います。(中略)どんどん自己高揚して、やりたい放題やってしまう特徴があるからです。
自分を叱れない相手を舐めてしまうのです。
安心基地がありませんから、「自分のほうが優位なんだ」という感覚を得ることで安心感を得ようとするためです。
著書の内容から、〝叱らない″対応もまた、愛着障害の子どもへの対応として誤った対応だと考えられています。
その理由として、叱らないことで子どもは相手のことを舐めてしまい、子どもは何をやってもいいと勘違いしてしまい(自己高揚していく)、どんどんマイナス行動がエスカレートしていくからです。
こうした子どもの特徴として〝安全基地の欠如″があります。
安全基地がないと、困ったときに自分のことを守ってくれる存在がいないため、誰も頼らずに自力でなんとかしないといけない状況に陥ってしまいます。
そのため、その対処法として、相手のことを下に見たり命令・支配することで、安全の感覚を得ようとする心理が働くのだと言えます。
このように、〝厳しく叱る″も〝叱らない″ことも誤った対応だと言えます。
以上、【愛着障害の子どもへの誤った対応】厳しく叱る・叱らないはなぜ状況を悪化させてしまうのか?について見てきました。
愛着障害の子どもへの対応として、目の前のネガティブな行動への対処療法では効果は期待できないと言えます。
〝愛情の器モデル″など、様々な知識をもとに長期的な関わり、支援体制作りなどが重要だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育経験及び知識・理論からの学びを通して、愛着に問題のあるケースについての理解・対応力を高めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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米澤好史(2024)発達障害?グレーゾーン?こどもへの接し方に悩んだら読む本.フォレスト出版.