〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。
安定した愛着を形成する上で大切なキーワードとして、〝安心基地″〝安全基地″〝探索基地″の3つの基地機能があると言われています。
それでは、安定した愛着を形成する上で必要な〝探索基地″がうまく育たないとどのような行動が見られるのでしょうか?
そこで、今回は、愛着形成に必要な探索基地の欠如による2つの行動特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「米澤好史(2024)発達障害?グレーゾーン?こどもへの接し方に悩んだら読む本.フォレスト出版.」です。
愛着形成に必要な探索基地の欠如による2つの行動特徴
以下、著書を引用しながら2つの行動特徴について見てきます。
姿勢や服が乱れる
自己評価が低い
それでは、次に、以上の2つについて具体的に見ていきます。
1 姿勢や服が乱れる
以下、著書を引用しながら見ていきます。
こられが起こる理由は、感情のコントロールができず、ポジティブな感情を増幅してくれる<探索基地>がないために、姿勢をピンとただし、身だしなみを整えようとする〝意欲″がわいてこないからです。
〝姿勢や服が乱れる″状態は探索基地の欠如による1つ目の行動特徴です。
姿勢の崩れや衣服をだらしなく身に付けている状態は、本来、意欲のエネルギー源となっている探索基地がないことが一つの原因だと考えられています。
探索基地があることで、子どもは外の世界へと冒険心を持って動きだし、探索を終えて基地に戻り愛着対象者に探索内容を報告することで、次の冒険への意欲(ポジティブな感情)が湧いてきます。
そして、ポジティブな感情の増幅は、姿勢を正すこと、衣服を綺麗に着用することにも繋がっていると言えます。
著者の療育経験を振り返って見ても、確かに探索基地の欠如といった愛着の問題を持つ子どもの多くに、姿勢の悪さや衣服の乱れが見られていたように思います。
もちろん、子どもの中には、運動機能のコントロールの苦手さなども影響して姿勢の悪さや服の乱れが生じることもあります。
一方で、愛着の問題もまた姿勢や服の乱れに繋がる可能性があるといった視点も大切だと言えます。
2 自己評価が低い
以下、著書を引用しながら見ていきます。
探索基地がないということは、ポジティブな感情を増やし意欲を育んでくれると感じられる人、不安や怒りなどのネガティブな感情を減らしてくれると感じられる人がいないということです。
そうした状況下では、こどもは自分に自信をもつことができませんから、自己評価もおのずと低くなります。
〝自己評価が低い″状態は探索基地の欠如による2つ目の行動特徴です。
さらに、著書には、自己評価の低さには〝自己否定″と〝自己高揚″の2つがあると記載されています。
〝自己否定″とは、その名の通り、自分はダメだ、うまくいかないなどと自己を否定する言動(行動)・様子が見られます。
〝自己高揚″とは、他者よりも自分を優位に置き、他者を支配しようとする言動(行動)・様子が見られます(ダメな自分を許容できないために)。
人は、ポジティブな感情を持つことで、意欲のエネルギーが高まり、様々な事柄に挑戦しようとします。
その結果、成功経験が増えていき、自己評価を高めていくことに繋がっていきます。
愛着の問題は、逆に、自己評価の低さに大きく関連していると言えます。
著者の療育経験を振り返って見ると、愛着の問題を抱えている子どもの中に、自己高揚のタイプが非常に多く見られていたように思います。
このタイプは、他者を下位に見て指示を出すことが多く、時に命令口調になったり、自分はすごい存在であることを強く訴える様子が見られていたように思います。
こうした行動は、探索基地の欠如といった愛着の問題という背景を抑えておかないと、誤った解釈に繋がってしまうと感じます。
そして、誤った解釈はさらに子どもとの関係性の悪化に繋がっていくと言えます。
以上、【愛着形成に必要な探索基地の欠如による2つの行動特徴】療育経験を通して考えるについて見てきました。
探索基地の完成は愛着形成のゴールだと言われています。
そして、探索基地の形成以前に、安心基地と安全基地の形成がとても大切だと考えられています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を通して、子どもの愛着の問題について理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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