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【愛着スタイルの特徴について】愛着スタイル(Dタイプ)を通して考える

投稿日:2024年5月12日 更新日:

愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。

養育者と子どもとの間で交わされる情動交流の積み重ねは、後の〝愛着パターン″さらには、〝愛着スタイル″を形成していくと考えられています。

愛着スタイル″とは、簡単に言えば、人が他者と関わる際の対人様式(方略)のことを指します。

そして、〝愛着スタイル″には、大きく4つのタイプがあると言われています。

その4つの〝愛着スタイル″とは、〝安定型(Bタイプ)″〝回避型(Aタイプ)″〝不安型(Cタイプ)″に加えて、〝恐れ・不安型(Dタイプ)″があります。

 

関連記事:「愛着スタイルとは?4つの愛着スタイルの特徴について考える

 

それでは、4つのタイプのうち、Dタイプの愛着スタイルにはどのような特徴があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、愛着スタイルの特徴について、愛着スタイルのDタイプを通して理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「篠原郁子(2024)子どものこころは大人と育つ:アタッチメント理論とメンタライジング.光文社新書.」です。

 

 

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Dタイプの愛着スタイルの特徴

以下、著書を引用しながら見ていきます。

このDタイプは無秩序・無方向型と表されます。

 

SSPにおいて、アタッチメント対象である親を呼んだり近づこうとしたりするけれども、いざ親が来ると離れようとするといった、一貫性のない行動を見せます。

 

子どものなりのルール・方略が定まらないように見えるのです。「親に近づきたい、けれども同時に、避けたい」という矛盾した気持ち、どうしたいのか分からないような行動なども見られます。

 

Dタイプの愛着スタイル″とは、〝無秩序・無方向型″〝恐れ・不安型″などと表現されています。

著書にある〝SSP″とは、〝ストレンジシチュエーション法″のことであり、子どもと養育者の〝愛着スタイル″を測る方法になります。

そして、〝SSP″による〝Dタイプの愛着スタイル″とは、愛着対象への一貫性のない(ルール・方略のない)行動を見せるといった特徴があります。

例えば、養育者に近づきたい思いがある一方で、同時に避けたいといった相反する心理状態が交錯している特徴があります。

どのように養育者に近づいて安心感を得ればいいのか、その方略(ルール)が定まっていないと言えます。

 

Dタイプの愛着スタイル″の特徴は、その他の〝愛着スタイル(A・B・Cタイプ)″と比較すると〝組織化された対人方略がない=未組織化″と考えられています。

A・B・Cタイプ″の子どもは、〝組織化された対人方略″を持っているため、仮に〝不安定な愛着スタイル″であったとしても、自身が持つ愛着スタイルがうまく環境に適応できていれば、特段、問題ではない可能性があります。

一方で、〝未組織化″である〝Dタイプ″は、〝対人方略が定まっていない″ため、環境適応上大きな問題に繋がる(現に繋がっている)可能性があります。

 

 


それでは、〝Dタイプの愛着スタイル″をすぐに問題だと見なしてよいのでしょうか?

以下、この点について見ていきます。

 

Dタイプの愛着スタイルを理解する上での注意点

以下、著書を引用しながら見ていきます。

まだ研究が重ねられているところでもありますが、特段、心理臨床的な問題を抱えていない、ごく一般的な家庭の子どもと親を対象とした調査であっても、15%程度がこのDタイプに分類されるという方向があります。ですから、Dタイプと見られる子どもであっても、直ぐに何か重要な問題があると見なすことはできません。

 

著書には、これまでの研究知見を踏まえて言えば、ごく一般的な家庭においても、15%がDタイプに分類されていることもあり、直ぐにDタイプを問題として見なすことには注意が必要だと記載されています。

つまり、〝Dタイプの愛着スタイル″をすぐに問題視することは危険であると言えます。

一方で、見逃してはいけない重大な問題が〝Dタイプの愛着スタイル″に多い〝虐待″ケースです。

虐待″以外にも親が〝精神疾患″を持っているケースも〝Dタイプ″に多いと言われています。

虐待″について言えば、最も頼りたい養育者が危険な存在であるといった認識があるため、本能的に近づきたい思いがある一方で、回避しようとする行動が同時に見られるのも想像できるように思えます。

 

 


以上、【愛着スタイルの特徴について】愛着スタイル(Dタイプ)を通して考えるについて見てきました。

Dタイプには〝虐待″など問題となるケースがある一方で、普通の家庭においても一定の割合で存在すると言われています。

そのため、Dタイプ=問題であるといった認識を持つことには注意が必要だと言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も愛着への理解を深めていきながら、療育現場にその知見を応用できるように学びを深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【愛着スタイルの特徴について】愛着スタイル(A・B・Cタイプ)を通して考える

 

 

篠原郁子(2024)子どものこころは大人と育つ:アタッチメント理論とメンタライジング.光文社新書.

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