〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。
安定した愛着を形成する上で大切なキーワードとして、〝安心基地″〝安全基地″〝探索基地″の3つの基地機能があると言われています。
それでは、3つの基地機能にはどのような違いがあるのでしょうか?
また、どのようなメカニズムを持って発展していくのでしょうか?
そこで、今回は、愛着で大切な3つの基地機能について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、安心基地→安全基地→探索基地のメカニズムについて理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「米澤好史(2024)発達障害?グレーゾーン?こどもへの接し方に悩んだら読む本.フォレスト出版.」です。
愛着で大切な3つの基地機能について
まずは、3つの基地機能についてそれぞれ見ていきます。
1.安心基地
以下、著書を引用しながら見ていきます。
<安心基地>とは、とくに不安や心配などがないときでも、「一緒にいると心地がいいな」という安心感を得られる基地のことです。
著書の内容から、安心基地とは、〝一緒にいると心地がいい″といったポジティブな感情を引き出してくれる存在(基地機能)のことです。
愛着の問題の多くは、安心基地の欠如だとも言われているため、子どもとの関わりの中で、安心感をどのように感じることができるのか?安心感を抱くことがとても難しいのか?といった視点を持ちながら行動を分析していくことが必要だと言えます。
著者も愛着の問題を抱えている子どもとの関わりにおいて、楽しい感情を共有することの難しさを感じることが多くあります。
一方で、○○の遊びをしていて楽しい、○○の話をしていて楽しいといった快の感情の共有経験の積み重ねが、その後の子どもの安心基地の基盤を形成していく上でとても大切だと感じています。
2.安全基地
以下、著書を引用しながら見ていきます。
自分が何か嫌な気持ちになっても、「この人が必ず守ってくれる/自分は守られている」という信頼感です。
著書の内容から、安全基地とは、〝自分のことを必ず守ってくれる/守られている″という信頼感が得られる存在(基地機能)のことです。
先ほど見た〝安心基地″との違いは、不安や恐怖、悲しみや怒りなどネガティブな感情が起こっても守ってくれる存在のことを指します。
著者の療育経験を通して見ても、子どもとの信頼ができてくると、子どもの状態が仮に悪いものであったとしても、以前よりもはやく気持ちのリカバリーできるようになっていくことを実感しています。
3.探索基地
以下、著書を引用しながら見ていきます。
探索基地は、居心地のいい基地からいったん離れ、また基地に戻ってくるという動線のなかで確認される機能です。
<探索基地>は、いわば愛着形成のゴールです。探索基地が機能すれば、「愛着形成が完成した」と言えるのです。
著書の内容から、探索基地とは、〝安心・安全基地から離れ、また戻ってこれる、そしてまた離れることができる″といった確信感が得られる存在(基地機能)のことです。
例えば、子どもが信頼のおける人から離れても活動ができ、その人に過ごしの活動内容を後に報告するなどが該当します。
そして、探索基地の確立は、愛着形成のゴールだと言われています。
著者がこれまで見てきた愛着形成がうまく確立されている子どもには、何かをする前に〝やってもいい″と確認を取ったり、様々な活動内容を事後的に報告しにくる様子が多く見られていたように思います。
安心基地→安全基地→探索基地のメカニズムについて
以下、著書を引用しながら見ていきます。
この3つの基地機能こそが、愛着という「特定の人と情緒的に結ばれるこころの絆」の正体なのです。
実際には、①安心基地→②安全基地→③探索基地という順番でつくられていくことになります。
著書の内容から、3つの基地機能のメカニズムとして、①安心基地→②安全基地→③探索基地という順番でつくられていくと考えられています。
著者がこれまで長く関わりのあった子どもと信頼関係がうまく構築できたケースにおいて、まずは著者が①安心基地になれているかどうかがとても大切だと実感しています。
例えば、子どもにとって好む関わりを行うこと、興味関心の世界を共有できた経験などは、子どもの中にポジティブな感情を生起させ、〝この人といると居心地が良い″と感じることの経験の蓄積をもとに、徐々に関係性が深まっていったように感じます。
そして、うまく②安心基地が形成されていく中で、子どもが持つ様々なネガティブ感情に対しても、うまく対応できるようになっていったと思います。
最終的には、子どもが何か行動を起こす際に、事前に確認をとってきたり、行動後に報告するといった行動、つまり、③探索基地の形成が見られるようになっていくことも実感としてあります。
以上、【愛着で大切な3つの基地機能】安心基地→安全基地→探索基地のメカニズムについて見てきました。
今回見てきた3つの基地機能に関する知識は、愛着障害のある子どもへの理解と接し方に大きなヒントを与えてくれるものだと感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を通して、愛着に問題のあるケースにおいて、理解と対応力を身につけていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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米澤好史(2024)発達障害?グレーゾーン?こどもへの接し方に悩んだら読む本.フォレスト出版.