〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
〝愛着関係″を築いていくためには、子どもの〝発信″に対して、養育者の〝応答性″が重要だと言われています。
ここで、大切なキーワードに〝敏感性″があります。
それでは、〝敏感性″とは具体的にどういったものを指すのでしょうか?
そこで、今回は、愛着で大切な〝敏感性″について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、4つのプロセスを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「篠原郁子(2024)子どものこころは大人と育つ:アタッチメント理論とメンタライジング.光文社新書.」です。
〝敏感性″の4つのプロセスについて
生まれたばかりの赤ちゃんは養育者との関わりと通して〝愛着関係″を発達させていきます。
子‐養育者との〝愛着関係″の発達の中に、子ども(赤ちゃん)の〝発信(泣いたり・笑ったりする)″に対する大人の〝応答性(発信に対する気づきと反応)″の中に〝敏感性″があります。
それでは、以下、〝敏感性″の4つのプロセスを見ていきます(以下、著書引用)。
(1) 赤ちゃんが発するシグナルに「気づく」
(2) 赤ちゃんが発するシグナルを「正しく解釈する」
(3) 赤ちゃんが求めていることに「適切に応える」
(4) 赤ちゃんが求めていることに「すみやかに応える」
以上が、〝敏感性″の4つのプロセスです。
赤ちゃんとの関わりとなっていますが、〝敏感性″は、子ども‐大人が良い〝愛着関係″を築いていくためにとても大切だと著者は感じています。
そのため、生後以降の子どもへの〝関わり方″においても重要だと思います。
それでは、以下に4つの〝敏感性″について具体的に見ていきます。
(1) 赤ちゃんが発するシグナルに「気づく」
赤ちゃんは自分の快不快の感情を泣いたり・笑ったりするなどして大人に〝発信″します。
赤ちゃんの〝発信″に対して、まずは〝気づく″ことが養育者(関わり手)にとってとても大切です。
療育現場でも、子どもたちは様々な〝発信″をします。
一方で、その〝発信″はどこか分かりづらく〝気づきにくい″場合も多くあります。
そのため、〝何か変だ″〝何かいつも違う″といった〝違和感″を著者はとても大切にしてます。
〝発信″行動の背景には、何か〝伝えたいことがある″といった思いが存在していることを理解することがとても大切です。
(2) 赤ちゃんが発するシグナルを「正しく解釈する」
次に、〝発信″行動の意味を〝正しく解釈する″ことが必要です。
〝正しく″とありますが、著書にもありますが、〝共感的姿勢″を持ってできるだけ歪みの無い形で子どもの〝発信″の意図・意味を汲みとる姿勢が大切だということです。
療育現場でも、著書は子どもたちの〝発信″の意図・意味を理解しようと〝共感的姿勢″を持って関わるようにしています。
著者なりに都合の良い解釈をしないように、できるだけその状況・文脈を含めて理解するようにしています。
その中で重要なことは、〝子どもの目線に立つ″ということです。
これが簡単なようで難しいことでもあります。
(3) 赤ちゃんが求めていることに「適切に応える」
赤ちゃんの〝発信″の意図・意味を解釈したら、次に〝どう関わるか″が求められます。
泣いている赤ちゃんであれば、抱っこしたり、ミルクをあげたり、オムツを交換するなどがあるかと思います。
療育現場でも、子どもたちの〝発信″行動の意図・意味を解釈したら、次に〝対応″が必要になっていきます。
〝対応″で大切なこともまた、〝共感的姿勢″だと著者は感じています。
つまり、子どもから見て、〝この人は自分のことをわかってくれる(くれようとしている)″〝この人に相談すればよい方向に行く″といった、共感性に加えて、良い解決策を提案できることが大切だと感じています。
例え、良い解決策がなくても〝共感的姿勢を持って一緒に考えようとしてくれる大人″には子どもは自然と心を寄せていくことが多いと思います。
(4) 赤ちゃんが求めていることに「すみやかに応える」
赤ちゃんがあやして欲しいと泣いている状態において、〝すみやかに応える″ことは大切です。
もちろん、子どもの〝発信″に対して、即時的にすべて〝応答″することは難しいですが、著書にはタイミングが大切だと記載されています。
つまり、〝ちょっと待っててね″など子どもに声をかけることで、子どもが無理なく待てるなどの範囲を指しています。
療育現場でも、〝すみやかに応える″ことはとても大切です。
もちろん、複数の児童を見ているため、即時的に応答することは難しいですが、子どもたちが〝しっかりと応えてもらえた″という経験の積み重ねが、大人との信頼関係、そして、自己肯定感の高まりにも繋がっていくと感じています。
最後に、以上の4つのプロセス全体を見た時に大切な点を見ていきます(以下、著書引用)。
(1)から(4)は実際には行ったり来たりしています。
子どものシグナルに対して正答することが大人の役割なのではありません。子どもにとって大人が、自分が発したシグナルに目を向けて、やりとりをする相手でい続けてくれることが、安心できる、嬉しいことなのだと思います。
以上、【愛着で大切な〝敏感性″について】4つのプロセスを通して考えるについて見てきました。
愛着で大切な〝敏感性″といった概念は、赤ちゃん-養育者との関わりに留まらず、大人になっても人間関係を良いものにしていくためにとても大切な視点だと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちと良い関係性を築いていけるように、自身の〝敏感性″についても見つめ直していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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篠原郁子(2024)子どものこころは大人と育つ:アタッチメント理論とメンタライジング.光文社新書.