【心の理論とは何か?】誤信念課題が示す「人はどうやって心を読むのか」

心の理論

私たちは日常の中で、相手の言葉や表情、行動から「この人は何を考えているのだろう」「なぜこんな行動をとったのだろう」と自然に推測しています。このように他者の心の状態を読み取る力は、「心の理論」と呼ばれています。

では、人はどのようにして他者の心を理解しているのでしょうか?

その手がかりとなるのが、心の理論を測る代表的な課題である「誤信念課題」です。

この課題からは、私たちが他者の行動の背後にある「信念」や「意図」をどのように捉えているのかが見えてきます。

本記事では、誤信念課題をもとに「人はどうやって心を読むのか」という問いについて整理し、その理解の仕組みをわかりやすく解説します。また、療育現場での実践経験も踏まえながら、子どもたちの特徴や支援の視点についても簡単に解説します。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「林創(2016)子どもの社会的な心の発達 コミュニケーションのめばえと深まり.金子書房.」です。

 

 

スポンサーリンク

 

 

【心の理論とは何か?】誤信念課題が示す「人はどうやって心を読むのか」

著書の中では、〝心の理論″に関する課題の図が記載されています。

心の理論に関する課題は〝誤信念課題″とも言われており、様々な課題があります。

 


著書で記載されている課題は以下のようなものです。

①男の子が玄関のドアノブに手を伸ばす(玄関には傘の入った傘立てがある)

②ドアノブに手が届かない

③傘を取る

 

そして、次が課題となっています。

 

この後、男の子はAとBどちらを選択するでしょうか?

 

A:ドアノブで傘を開ける

B:傘をさして雨の中の外を歩く

 


多くの方は、Aという選択肢を選ぶと思います。

それは、①~③までの流れを見て、Aという選択肢の方が辻褄が合うと感じるからです。

つまり、男の子がドアノブに手が届かないため、玄関にある傘で開けようとする、というストーリーの方が、整合性が取れると思うからです。

 

一方で、Bの方を選んでも間違いではないような気がします。

つまり、男の子がドアノブに手を掛けようとした際に、雨が降っていることに気がつき、玄関の傘を取り、傘をさして外に行った、というストーリーでもおかしくはありません。

 

しかし、多くの人はAを選択します。

 

この理由として、以下、著書を引用します。

それでも、多くの人は「直感的」にAを選びます。

なぜでしょうか?それは私たちが、このようなドアのノブに手を伸ばす様子を見ると、男の子(他者)のドアを開けようとする「意図」を無意識に読み取ってしまう心の働きをもっているからです。

 

このように、他者の行動の背景にある「意図」を「直感的」に私たちは読み取ることをしており、こうした心の動きを〝心の理論″と言います。

定型児では、4歳~5歳頃に獲得するもの(心の理論の原型とも言われる行動はもっと前から見られます)、そして、自閉症児では、定型児よりも遅れて獲得すると言われています。

ここで、〝理論″と言われているのは、他者の行動の背景に心といった「意図」の働きを見ると、それが他の人にも働いているものだと応用できるからです。

例えば、物理法則で有名なものに、物を落とせば下に向かって落下することの背景には、重力といった目に見えない力が働いており(詳しくは、万有引力の法則)、この物理法則を直感的に知ることで、一般的に物は下に向けて落下するという汎用性のある法則を理解することができます。

〝心の理論″がなぜ〝理論″と言われるのかには、こうした背景があります。

 


さらに、心の働きには、「意図」以外にも様々なものがあります。

以下、著書を引き続き引用しながら見ていきます。

このように、ある行動を「しようとする」(意図)、「したい」(欲求/願望)、「思っている」(信念)、「知っている」(知識)などといった「心の状態(mental states)」によって理解する体系のことを「心の理論(theory of mind)」とよびます。

 

このように、「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」と考えられています。

 

 

スポンサーリンク

 

 

著者の経験談

冒頭でお伝えしたように、著者が関わる療育現場でも〝心の理論″に苦手さを持つ子どもたちが多くいます。

中でも、自閉症児に多くみれるという印象があります。

また、ADHDといった発達特性のある人には、自閉症の特性も併存するケースも多いため、様々な子どもたちに、強弱といったスペクトラムはありながらも、〝心の理論″の弱さが見られることも実感しています。

一方で、定型児よりも遅れながらも、様々な経験を重ねていく中で、〝心の理論″が育ってきたと感じることも多くあります。

〝心の理論″の獲得のプロセスには言語能力の発達が重要だと言われていますが、自閉症児と関わっていて感じることは、〝○○くんは今○○したいのかな?″などと、直感的に推論するというよりも、言葉で論理的に思考しながら他者の「意図」などを推論する様子が多く見られます。

そのため、療育現場で大切にしていることは、周囲の人たちがどういった心の状態にあるかを分かりやすく言葉で伝えていく経験を積み重ねていくことだと考えています。

そして、興味関心から他者との接点を多く作り、その中で、相手の心の状態を考える機会を作ることだと考えています。

 


以上、【心の理論とは何か?】誤信念課題が示す「人はどうやって心を読むのか」について見てきました。

〝心の理論″とは、言葉にすると一言ですが、その内容や研究知見の多さは膨大にあります。

また、著者のように療育現場に携わる人にとっては必須の知識でもあります。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も〝心の理論″への理解を深めていけるように、実践と知識の双方からの学びを大切にしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

自閉症の心の理論の特徴についてはこちらで紹介しています:関連記事:「【自閉症の心の理論】療育現場から見た特徴と理解のポイント」。

 

心の理論に関するお勧め書籍は以下の記事で紹介しています。

関連記事:「心の理論に関するおすすめ本【初級~中級編】

 

林創(2016)子どもの社会的な心の発達 コミュニケーションのめばえと深まり.金子書房.

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました