自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴とする発達障害です。
自閉症には様々な行動面や心理面の特徴があると考えられています。
中でも、中枢性統合の弱さが自閉症の特徴として様々な書籍等で取り上げられています。
それでは、弱い中枢性統合とはどのようなものであり、そして、自閉症の人にはどのような特徴が見られるのでしょうか?
そこで、今回は、弱い中枢性統合仮説とは何かについて説明していきながら、自閉症の特徴について考えを深めていきたいと思います。
今回、参照する資料は「サイモン・バロン=コーエン(著)水野薫・鳥居深雪・岡田智(訳)(2011)自閉症スペクトラム入門 脳・心理から教育・治療までの最新知識.中央法規.」です。
弱い中枢性統合仮説とは何か?自閉症の特徴について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
自閉症の人は中枢性統合(情報を統合する能力)が弱いので、概観するよりも、むしろ細部に注目する傾向がある。
自閉症やアスペルガー症候群の人たちは、情報の細部よりも、文脈や全体像を把握するのに時間がかかるということである。
著書の内容から、自閉症の特徴には、様々な情報を統合することの苦手さ、つまり、〝弱い中枢性統合″があると考えられています。
一方で、自閉症の人たちは物事の細部に注意が向く傾向があると言われています。
人は様々な情報を関連づけることで物事の全体像を理解(把握)していきます。
例えば、車と言えば、車のメーカー、車体の情報(形、大きさ、色など)、車内の装置(ハンドル、アクセル、ブレーキ、ギア、スピードメーターなど)、など基本的な情報に加え、運転技術、免許取得の方法、交通ルールなど様々な情報が連想されます。
中枢性統合とは、こうした車にまつわる様々な情報を関連づけていくことですが、仮に中枢性統合に弱さがると、上記の中の特定の部分、例えば、車のメーカーに限定された情報を持っている(そこに注意が向きやすい)といった状態が強く見られます。
著者の周囲の自閉症に人たちにも、〝弱い中枢性統合″の特徴は見られます。
例えば、事務処理において、事務処理の全体像を把握し、その中で優先順位を決めて時間内に処理すると言った苦手さがあります。
一方で、通常人がなかなか見つけにくい情報の見落としなど、非常に細かな点に気づくことができる人や、一つの作業のスピードが非常にはやい人もいます。
子どもを例に上げると、様々な知識をざっくり知っているというよりも、ひとつの領域に非常に詳しい知識を持っているなど、物事の見方が限定しているなど定型発達児とは情報の統合の仕方が異なるように感じます。
例えば、道路標識、数字、人の誕生日、カレンダーの日付や曜日など非常に細かな点の知識(知識のネットワーク)が豊富にあるといったケースが多く見られます。
こうした特徴の背景には、〝弱い中枢性統合″の影響があると感じています。
弱い中枢性統合仮説の根拠とは
〝弱い中枢性統合仮説″の根拠として、これまで自閉症の人を対象とした様々な研究によって明らかになってきています。
研究で使用された課題には、例えば〝埋没図形テスト″といったターゲットとなる図形を決め(探すことを求められる図形)、さらにターゲットより大きな図柄からターゲットとなる図形を探す課題などがあります。
細部知覚が得意な自閉症の人たちは、定型発達の人と比べると、ターゲットとなる図形を見つけることが早いといった結果が児童と成人の両者において見られます。
このように、知覚テストを中心とした様々な研究により、自閉症の人の〝弱い中枢性統合仮説″の根拠が構築されてきたと言えます。
以上、【弱い中枢性統合仮説とは何か?】自閉症の特徴について考えるについて見てきました。
自閉症の特徴には、〝弱い中枢性統合仮説″以外にも様々なものがあります。
例えば、心の理論の弱さや実行機能の弱さなどがあります。
ここまで見てくると、自閉症の人たちには、様々な事柄で苦手さが目立つといった印象がありますが、弱さや苦手さへの理解は裏を返すと強さや得意なことへの理解にも繋がっていくと思います。
そのため、弱さや苦手さへの理解や配慮を持つ姿勢を大切にしていきながら、強みも同時に探していくという姿勢が重要になってくると考えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症の様々な特徴について理解を深めていきながら、療育現場において、適切な理解と配慮の力を身に付けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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サイモン・バロン=コーエン(著)水野薫・鳥居深雪・岡田智(訳)(2011)自閉症スペクトラム入門 脳・心理から教育・治療までの最新知識.中央法規.