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【実践をまとめることの意味について】発達障害児支援の経験を通して考える

投稿日:2023年5月18日 更新日:

著者は発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)を行ってきています。

長年の療育現場での実践を踏まえて、実践をまとめることの意味について考える機会が増えてきました。

 

それでは、実践をまとめることの意味はどこにあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、実践をまとめることの意味について、臨床発達心理士である著者の発達障害児支援の経験をもとに考えを深めていきたいと思います。

 

 

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実践をまとめることの意味について

著者は実践をまとめることの意味について、主に以下の2つの意味があると考えています。

 

①経験から意味を見つける

②実践の質を高める

 


それでは、それぞれについて具体的に見ていきます。

 

①経験から意味を見つける

療育現場での経験が増えてくると、蓄積された習慣からの〝慣れ″が出てきます。

例えば、子ども状態像の見極め方、子どもへの関わり方、プログラム運営の仕方、保護者支援の在り方など〝慣れ″には様々な内容があります。

もちろん、〝慣れ″ることはそれだけ自分の経験が身体化されたことでもあるため、非常に学習された状態だと言えます。

一方で、蓄積された経験を言葉にするなど(型にするなど)の作業を行わないと、より深い学びに進んでいくことは難しいと感じます。

また、職場には、職場独特の考え方・風土があるため、〝慣れ″た状態を続けていくと、会議などによく見られる同じ議論を違う言葉で伝え合う(繰り返す)という無限ループにハマってしまうこともあります。

 

そのため、〝慣れ″の状態からさらに先のステージ進むためには、〝経験から意味を見つける″という作業がとても大切になります。

〝経験から意味を見つける″ということは、自分が取り組んできた実践を言葉に置き換える、つまり、〝メタ的に理解″するということです。

自分を客観視するとも言えますが、これまで〝なんとなく○○していた″〝なんとなく○○の取り組みが習慣化していた″といった状態に対して、言葉でその実践をまとめていくということになります。

そして、言葉でまとめていく過程の中に実践の意味が見えてくることが多くあります。

もちろん、実践から意味を見つける作業に終わりはありません。

常に、現在進行中という作業になるかと思います。

しかし、この作業が次にお伝えする〝②実践の質を高める″に繋がってくるという意味で、とても重要な過程になります。

 

最後に補足しておくと、〝慣れ″てから実践をまとめるという形を取らずとも、日頃の現場での〝気づき″〝疑問″など小さなことから初めても大丈夫です。

ただ、療育での実践がまとまってくるためには、それ相応の時間が必要になると思います。

それは、子どもの発達は短期のスパンでは見えてこないことが多くあるからです。

その意味で、新しいプログラムの実践結果など、短いスパンでの発見があるものはまとめやすいと思います。

 

②実践の質を高める

実践の質を高めるためには、自分が取り組んできた実践をなんらからの方法で説明する力が必要になります。

人は、今の状態を客観視することができて次の段階へと進んでいけるからです。

例えば、スポーツなどで連敗が続いていたとしましょう。その際に、これまでの取り組みを継続するよりも、これまでの取り組みを修正していくはずです。

つまり、〝改良を加える″そのために〝現状を客観視する″ことが必要だということです。

療育での実践においても同様のことが言えます。

これまでの取り組みをまとめていきながら、そこに意味を見出すことで少しずつ実践してきたものが整理されていきます。

意味を見出し、意味同士の繋がりを見つけていくことで、次への実践の展望が見えてくることがあります。

そして、実践の質が高まるということは、自分が勤めている職場以外の環境や人にも納得のいく・説得力のある内容のものになっていることが重要です。

様々な人が実践内容を聞いて、納得感を持てるかどうかがとても大切な視点だと思います。

 

 


以上、【実践をまとめることの意味について】発達障害児支援の経験を通して考えるについて見てきました。

色々書いてはきましたが、著者自身もまだまだ未熟な状態であり、学びの最中です。

今後も、子どものたちとの関わりの中で、実践から様々な意味を見出し、形にしていく中で、さらに質の高い支援に繋げていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「【理論と実践の関係について】療育現場での実践を通して考える

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-実践, 発達障害

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