〝実行機能″とは、〝遂行能力″や〝やり遂げる力″とも言われています。
実行機能の力は、その後の学力や対人関係、そして健康などに影響していくと考えられています。
そして、IQなどに見られる遺伝的要因の強さよりも、環境要因の影響を強く受けると言われています。
つまり、支援の可能性が大いにあると言えます。
それでは、実行機能への支援にはどのような方法があるのでしょうか?
そこで、今回は、実行機能への支援について、個別の支援方法にフォーカスして理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「森口佑介(2019)自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学.講談社現代新書.」です。
実行機能への支援:個別の支援方法
著書には、以下の個別の支援方法が記載されています(以下、著書引用)。
反復練習
振り返り
運動
ロジャー・フェデラー
音楽
マインドフルネス
それでは、それぞれについて具体的に見ていきます。
反復練習
反復練習とは、特定の課題に対して、繰り返し練習を行うことです。
著書に記載されている反復練習の課題には、コンピューターを使用して、ルールが変更になる課題をドリルのように繰り返し解いていくことを要求されるものが載っています。
つまり、ルール変更への適応力を身につけていく課題です。
この研究結果から、反復練習により思考の実行機能の力が向上するという結果が出ています。
振り返り
反復練習で繰り返し練習する中で、ミスが生じることがあります。
このミスの要因を振り返ることで、ミスが減っていくことが分かっています。
自分がなぜ間違ったのかその要因を考えること、つまり、振り返ることで実行機能の力が高まるということです。
運動
コンピューターの前で、反復練習や振り返りを行う練習は、座って静かに取り組む作業です。
一方で、体を使った方が、学習効果が進む人たちもいます。
じっと座っていることが難しい人には運動が効果的だとされています。
テレビゲームを使用した研究では、座ってテレビゲームをするよりも、運動しながらゲームをする方が(スポーツゲームなど)思考の実行機能の向上に繋がることが分かっています。
ロジャー・フェデラー
ロジャー・フェデラーとは、有名なテニスプレーヤーの名前です。
実行機能の向上には、テニスやサッカーなどのスポーツが効果的だと考えられています。
例えば、テニスでは、戦いの中で自分の感情をコントロールしたり、ラケットコントロールを常に修正し続けるなど、実行機能の働きが強く影響すると考えられています。
ロジャー・フェデラーは、もともと感情的な性格だったと言われていますが、テニスの練習を通して、自己コントロールの力が身に付いたと言われています。
音楽
ピアノやギターなどの音楽は、思考の実行機能の力を向上させると言われています。
音楽と実行機能に関するこれまでの研究により、音楽活動は、思考の実行機能の力を高めるといったエビデンスが示されています。
マインドフルネス
マインドフルネスとは、今に意識を集中させることです。
自分の呼吸や五感に意識を向ける活動、例えば、ヨガや瞑想などが方法としてあります。
マインドフルネスによって、自己コントロール力といった実行機能の力を高める効果があると考えられています。
以上、【実行機能への支援①】個別の支援方法について考えるについて見てきました。
実行機能の力を高める個別の支援方法には様々なものがあります。
一方で、実行機能への練習方法とその効果に関する研究はまだまだ途上であると考えられています。
そのため、今後の研究によっては効果的な支援方法に変化が見られる可能性があります。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も、実行機能に関する研究知見を学んでいきながら、療育現場で関わる子どもたちに、その知見を活用していくことで支援の質を向上させていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【実行機能への支援②】集団の支援方法について考える」
森口佑介(2019)自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学.講談社現代新書.