〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。
子どもが幼稚園や保育園など未就学の時期には、大人の存在が非常に重要だと言われています。
一方で、学童期(6歳頃~12歳)といった小学生の時期には、どのような愛着の特徴があるのでしょうか?
そこで、今回は、学童期に見られる愛着の重要性について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、〝仲間関係″を持つことの大切さを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「L・アラン・スルーフ・バイロン・イーグランド・ エリザベス・A・カールソン・ W・アンドリュー・コリンズ(著)数井みゆき・工藤 晋平(監修)(2022)人間の発達とアタッチメント 逆境的環境における出生から成人までの30年にわたるミネソタ長期研究.誠信書房.」です。
学童期の愛着の重要性:〝仲間関係″の大切さ
以下、著書を引用しながら見ていきます。
行為主体性やエゴ・レジリエンスが高いと評価された子どもは、ほとんどの場合、親密な友人関係を維持でき、集団において機能的に行動し、そして、ほとんど孤立していなかった。
著書の内容から、〝自己有能感″や〝自己調整力″の高い子どもは、よい〝仲間関係″を形成し維持することができ、集団への適応が良く、孤立していないとの記載があります。
そして、〝自己有能感″や情動調整などに見られる〝自己調整力″は、愛着関係が影響していると考えられています。
そのため、安定した愛着関係を築き上げていくことは、〝学童期″の〝仲間関係″においてポジティブな影響があると言えます。
著者の経験談
著者のこれまでの友人関係を振り返って見ても、自分に対して自信があり、自分の気持ちをうまくコントロールできる人は集団での適応が高いといったイメージがあります。
それも当然のことで、自分に自信があれば、新しい環境や出来事に対して挑戦しようといった行動が見られます。
そして、新しい環境における出会いの中で、様々な他者との関わりを通して、自分の気持ちが揺れ動くことはよく起こることです。
その中で、自分の感情に振り回されず、そして、他者の感情にも振り回されずに、自分の気持ちをコントロールできることは、友人関係をうまく形成・維持するために大切なことだと思います。
著者は発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしています。
療育現場にいる子どもたちは、どこか〝自己有能感″が低く、〝感情のコントロール力″もまた得意ではないといった印象があります。
一方で、様々な経験を積み重ねていくことで、〝自己有能感″が高まり、そして、〝感情のコントロール″力もゆっくりと時間をかけながら向上したと感じる子どもたちは多く見られます。
こうした子どもたちのポジティブな発達は、〝仲間関係″においてもプラスの影響があると実感することがあります。
裏を返せば、よい〝仲間関係″を持つことが〝自己有能感″や〝感情のコントロール″力の向上に寄与していると感じます。
例えば、遊びの中で、他の子どもが分からないところを助けたり、他の子どもたちをリードするなど、様々な遊びを提案し集団を引っ張る様子が見られることがあります。
こうした子どもたちは、高学年になるにつれて徐々に、よい〝仲間関係″の中で身に付いた〝自己有能感″の高まりなどから、向社会的行動やリーダーシップを発揮するといった状態像の変化を感じることがあります。
また、かつては些細な出来事において、イライラしたり癇癪気味になっていた子どもが、自分の気持ちとの付き合い方が少しずつうまくなっていった(折り合いをつける力の向上)ケースも多く見られます。
こうした子どもたちもまた、よい〝仲間関係″の中で、自己を調整する力を学習している所が大いにあると感じています。
そして、〝自己有能感″と〝感情のコントロール″の育ちは、大人との〝愛着関係″が基盤となっており、その基盤が〝学童期″においては、〝仲間関係″の中で発揮され、そして、こうした力は、よい〝仲間関係″を持つことでさらに強化されていくのだと思います。
以上、【学童期に見られる愛着の重要性】よい〝仲間関係″を持つことの大切さについて見てきました。
よい〝仲間関係″を持つことは、〝学童期″以降には特に大切だと実感させられます。
それは、〝大人″との距離が物理的接近を要していた乳児期・幼児期と比べて、さらに距離が離れていく(表象的接近)からです。
そして、よい〝仲間関係″を通して、子どもは自分に対する自信、そして、他者を信頼する力を高めていくことができるのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちがよい仲間関係を形成・維持できるように、様々な観点からサポートしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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L・アラン・スルーフ・バイロン・イーグランド・ エリザベス・A・カールソン・ W・アンドリュー・コリンズ(著)数井みゆき・工藤 晋平(監修)(2022)人間の発達とアタッチメント 逆境的環境における出生から成人までの30年にわたるミネソタ長期研究.誠信書房.