不登校児童の生徒数が増加する中で、子どもに関わる大人は、子どもが学校に再登校することを目標として関わる場合も多いと言えます。
しかし、無理な再登校への促しは、親子関係の悪化、子どもの二次障害のリスクを高める可能性があります。
一方で、子どもは何も学校だけで社会で生きていく力を学んでいくわけではないといった考え方もあります。
それでは、不登校の子どもにとって学校は絶対に戻るべき環境・行くべき環境だと言えるのでしょうか?
そこで、今回は、学校は絶対に必要なものなのか?について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、不登校をキーワードに理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「本田秀夫(2025)発達障害・「グレーゾーン」の子の不登校大全.フォレスト出版.」です。
【学校は絶対に必要なものなのか?】不登校をキーワードに考える
以下、著書を引用しながら見ていきます。
学校に行くことが必ずしも重要なわけではありません。大事なのは、子どもが社会に出ていくための土台づくりをすることです。
「学校以外に楽しく通える場所」があれば、そこで勉強をしたり、仲間と交流したりすることができます。社会に出ていくための土台づくりという意味では、それで十分です。
学校に行っていなくても、親子関係が良好で、社会参加の土台づくりに取り組めていて、本人が社会参加への意欲を失っていなければ、心配はりません。
著書の内容を踏まえると、学校は子どもが行きたいと思える動機や学びたいことがあれば行く意味が出てきます。
一方で、不登校の背景要因がまったく調整・改善されずに無理に登校を促すことは得策ではないと言えます。
そして、著書にもありますが、学校以外の場所で、子どもが社会に出ていくための基礎・土台が作れる場所(勉強や仲間との交流など)があれば、仮に学校に行っていなくても問題はないと記載されています。
大切なことは、学校以外に子どもが安心できる居場所があるということ、その前提として、親子関係が良好であること、子どもが社会に出ていこうとする意欲が保たれているということです。
もちろん、学校以外の居場所作りは地域によって見つけにくい状況があったり、世間の目を気にして学校になんとか再起しようとするなど、個々の環境や考え方に違いがあると言えます。
一方で、今後はますます社会が多様化していく中で、学校の在り方・通い方、学校以外の居場所の重要性などにおいて、価値転換が起きると著者は考えています。
著者の経験談
著者は昔も今も〝学校は絶対に必要なものなのか?″といった問いを持ち・考えることがあります。
その答えは、イエスでありノーでもあります。
つまり、人によって異なるからです。
ただ、一つ言えることは、学校に無理に通い続けることで、精神状態が悪化し続けた場合には、他の選択肢を考えることは間違いなく必要だということです。
著者は、不登校経験はありませんが、学校が大嫌いになり、それでも無理に通い続けた経験があります(不登校一歩手前だったと思います)。
その状況で得られたことは、ほとんどなかったと言えます。一方で、その時受けた心身へのダメージはその後の人生において、大きな負債となって跳ね返ってきたと感じています。
著者がそんな状況においても、学校に通い続けることができた要因の多くは友人関係にあったと言えます。
つまり、友達と関わりたい・関係を断ちたくないといった思いが最後の希望だったと思います。
逆に言えば、他者と関わり続けようといった動機だけは、プラスの要素として得ることができたのだと思います。
もちろん、それは、著者が友人関係にたまたま恵まれていただけで、そうでなければ、登校を続ける意味・価値はなかったと思います。
そして、その時の大きな負債となったものは(自信の喪失や勉強への向き合い方の迷い、挑戦する姿勢の衰退など)、後々の自分の人生において、自分で考えながら獲得していくことになります。
そして、そのためには多大な時間と、自分に合った環境を見つけていく自己選択の連続があったと感じています。
仮に、学校嫌いになった状態の頃に、もっと早くに自分に合った環境や考え方・価値観などを転換させることができていれば、負債は小さくすんでいたかもしれません。
著者のこうした経験から言えることは、〝学校は必要な要素がありながらも、他の環境・選択肢も考える必要があった″と今では結論付けています。
つまり、対人交流においては良い環境であったが(著者にとっては)、それ以外において良い環境ではなかったと言えます。
今後、ますます社会が多様化していく中で、学校の在り方・通い方、学校以外の居場所の重要性への検討は必要になってくると考えています。
以上、【学校は絶対に必要なものなのか?】不登校をキーワードに考えるについて見てきました。
学校という環境は子どもが社会との接点を持ち、社会性を身につけていくための場所だと言えます。
一方で、同じような力を身につけていける他の環境があれば、学校という一つの環境にこだわり続ける必要はないのかもしれません。
大切なことは、子どもが意欲のエネルギーを維持できる環境の構築だと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も不登校への理解を深めていきながら、著者の身近にもいる不登校児への関わり方について対応策を柔軟に考えていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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本田秀夫(2025)発達障害・「グレーゾーン」の子の不登校大全.フォレスト出版.