著者は長年にわたり、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)をしてきています。
療育(発達支援)をしていく上で、子どもの〝発達段階″といった〝子どもが時間変化の中でどのような成長過程を辿っていくのかという道筋″を理解しておくことが大切です。
もちろん、子どもの成長・発達の速度や質は個々に応じて異なりますが、○歳は○○を獲得する時期、〇歳は○○の特徴(課題)が見られる時期など、おおよその目安があると考えられています。
そして、〝発達段階″を理解することは、子どもの発達の躓きを理解することにも通じていきます。
それでは、2~3歳頃の年齢において、どのような発達段階の特徴(発達課題)があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、子どもの発達段階(2~3歳頃)について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「宮尾益知(2017)0歳から大人、進学から就職へのすべてがわかるハンドブック 発達障害の基礎知識 改訂版.河出書房新社.」です。
子どもの発達段階:2歳頃
以下、著書を引用しながら見ていきます。
一般的に2歳頃に「自我」が形成される準備がととのいます。
子どもが他者の意図と自己の意図を統合して自己の意志を形成していくことが自我の芽生えです。
著書の内容から、2歳頃の〝発達段階″における重要な発達課題として、〝自己意識(自我)″の形成があります。
2歳前までは外の世界に注意が向いていた状態が、徐々に自分に意識が向くことで、自分という存在を意識するようになってくる段階だと言えます。
〝自我″の芽生えに必要な要素(安定した自我の形成)として、著書にあるように、関わる大人が子どもの気持ちや意図を汲みとっていくことです。
関わり手の存在が安定したものだと認識できることで、自他の統合がバランスよく行われていきます。
著者がこれまで見てきた発達障害児においては、〝自我″の形成が遅れる(偏る)傾向があると感じています。
それには様々な要因があるかと思いますが、例えば、自閉症児においては、他者の存在の気づきが希薄であるため(人よりも物に注意が向きやすい)、自他を統合していく中で、自分とは何か?という〝自我″の形成・気づきが遅れるのだと思います。
関連記事:「【自閉症の人は自分の気持ちに気づきにくい?】自閉症の心の理論の特徴について考える」
子どもの発達段階:3歳頃
以下、著書を引用しながら見ていきます。
この時期になると、自我が強くなり自分の要求を通そうとし、親のいうことを聞かなくなります。
子どもと親のバトルの時期かもしれません。
著書の内容から、3歳頃の〝発達段階″における特徴(発達課題)として、〝自我がより強くなる時期″だと言われています。
2歳頃に〝自我″の芽生えがあり、その後、3歳頃になるとさらに〝自我″が強くなっていきます。
そのため、何でも自分の思いを押し通そうとしたり、親のいうことを聞かないなど、親子の〝バトルの時期″だとも言えます。
この時期に大切なことは、子どもの意思を尊重することも必要な一方で、親も根負けせず、時には我慢することも子どもに伝えていくことが必要だと考えられています。
著者のこれまでの未就学児との関わりから、自閉症児などは遅れて〝自我″が芽生えるため、3歳頃になると、愛着行動や社会的参照視などが増加する傾向があると感じています。
その後、4~5歳頃になると、少し遅れて〝自我″がより強くなり、自分の欲求を何が何でも押し通そうとする様子も出てくることで、対応に苦慮した過去を思い出します。
そのため、特定の一人の大人に負担がいかないようにチーム(家庭内での連携も含めて)で連携して関わる工夫を取ることが大切だと感じています。
関連記事:「【自閉症児の愛着の発達について】〝愛着4段階説″を通して考える」
以上、【子どもの発達段階:2~3歳頃】療育経験を通して考えるについて見てきました。
2~3歳頃は、子どもに自我が芽生え、その自我がより強くなっていく時期だと言えます。
そのため、親子の綱引き(お互いの思いがぶつかり合う)の時期とも表現できます(かつての著者が大学でそう習いました)。
大切なことは、こうした自我の形成・高まりが発達上大切だということを理解していきながら、特定の大人に負担が偏らないサポート体制が必要だと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育経験を通して、子どもたちの発達を理解する目を養っていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
宮尾益知(2017)0歳から大人、進学から就職へのすべてがわかるハンドブック 発達障害の基礎知識 改訂版.河出書房新社.