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【子どもの発達段階:1~1歳半頃】療育経験を通して考える

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著者は長年にわたり、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)をしてきています。

療育(発達支援)をしていく上で、子どもの〝発達段階″といった〝子どもが時間変化の中でどのような成長過程を辿っていくのかという道筋″を理解しておくことが大切です。

もちろん、子どもの成長・発達の速度や質は個々に応じて異なりますが、○歳は○○を獲得する時期、〇歳は○○の特徴(課題)が見られる時期など、おおよその目安があると考えられています。

 

そして、〝発達段階″を理解することは、子どもの発達の躓きを理解することにも通じていきます。

 

それでは、1~1歳半頃の年齢において、どのような発達段階の特徴(発達課題)があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、子どもの発達段階(1~1歳半頃)について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「宮尾益知(2017)0歳から大人、進学から就職へのすべてがわかるハンドブック 発達障害の基礎知識 改訂版.河出書房新社.」です。

 

 

 

子どもの発達段階:1歳頃

以下、著書を引用しながら見ていきます。

1歳の頃、もっとも重要な発達課題は愛着です。

 

愛着の目標は、思春期以降に独立して生きていくだけの基盤を持てることです。

 

発達障害のある子どもは、生まれながらに持つ本人の資質などが原因となり、この年齢が遅れる傾向があります。

 

著書の内容から、1歳頃(前後)の〝発達段階″において、最も重要な発達課題は〝愛着″になります。

愛着″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。

つまり、1歳頃に養育者(特定の大人)が自分の事を守ってくれる存在(安全・安心の基地)になっているかどうかが大切だと言えます。

そして、〝愛着″は、その後の対人関係の基盤を形成するほど大切なものになっていきます。

 

関連記事:「愛着で重要な内的作業モデルについて【心の中に大切な人がいることの重要性】

 

一方で、発達障害など発達に躓きのある子どもたちは、愛着形成が定型発達児とは異なる様相を示す場合もあります。

それは、愛着形成の遅れ、愛着形成の質的な違いなどがあると言われています。

 

関連記事:「障害児との愛着形成について【定型児との違いはあるのか?】

関連記事:「自閉症児との愛着形成は可能か【定型児との違いはあるのか?】

 

著者もこれまでの未就学児との関わりを通して、自閉症児などは異なる愛着形成のパターンを示すものだと感じています。

そのため、関わる養育者からすると、自閉症児との間に、スキンシップの取りにくさ、大人に対する反応の弱さなど関わりの難しさを感じる場合もあると思います。

そのため、発達障害児に見られる愛着形成の特徴(知的障害や自閉症など)について、理解をしていくことが支援者として必要なことだと感じています。

 

 

子どもの発達段階:1~1歳半頃

以下、著書を引用しながら見ていきます。

1歳すぎの発達で大切な課題として、「社会的参照」があります。社会的に「良いこと」「悪いこと」を他者に問い合わせることをいいます。

 

間違ったことをすると変な感じがするという感覚の原点が、この社会的参照です。

 

著書の内容から、1~1歳半頃の〝発達段階″における重要な発達課題として〝社会的参照″があります。

社会的参照″とは、〝他者(特定の養育者など)の表情を頼りに自分の行動の良し悪しを決める″ことなどを指します。

例えば、子どもがハサミを触ろうとした際に、母親の〝不安そうな表情″を見て触るのを止める行為などがあります。

また、〝社会的参照″が可能になるためには、〝共同注意″といった他者と視線を共有する行為の育ちが必要になります。

 

著者がこれまで見てきた自閉症児は、特に、〝共同注意″の発達が遅れて見られることが特徴としてありました。

そのため、善悪の行動基準を他者に合わせることが難しく、自分の興味関心で物事を進める傾向が強かったように思います。

一方で、人への関心が高まってくると、視線の共有も増えていき、その中で、〝社会的参照″も見られるようになっていくことも実感としてあります。

 

関連記事:「自閉症児の共同注意について:現場での経験を通してその意味を考える

 

 


以上、【子どもの発達段階:1~1歳半頃】療育経験を通して考えるについて見てきました。

一般的に子どもが発達していく過程(基盤となる育ち)には、順序性・方向性があると考えられています。

つまり、発達段階を知ることは、発達の順序性・方向性を理解することにも繋がってきますし、さらには、そこから逸脱する子どもの発達の特徴を理解する手助けにもなると感じています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育経験を積み重ねていく中で、子どもの発達を捉える目を養っていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

宮尾益知(2017)0歳から大人、進学から就職へのすべてがわかるハンドブック 発達障害の基礎知識 改訂版.河出書房新社.


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