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不安定な愛着

【子どもに見られる不安定な愛着の特徴ついて】療育経験を通して考える

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愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。

子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。

愛着″で大切な視点として、〝人生早期″の関係構築が重要であると考えられています。

一方で、〝人生早期″の愛着に躓きがあると、その後の対人関係・社会適応において問題となる行動を示す場合が出てきます。

 

 

それでは、不安定な愛着のある子どもには、どのような特徴があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、子どもに見られる不安定な愛着の特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岡田尊司(2014)母という病.ポプラ新書.」です。

 

 

子どもに見られる不安定な愛着の特徴について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

愛着が不安定な子どもにみられやすい問題は、幼児期には、不安が強く母親と別れるのに抵抗する傾向や落ち着きなく動き回る傾向、癇癪や激しさ、お漏らしやイタズラ、素直でなく頑固な傾向、わざと困らせる行動や攻撃的行動などだ。

 

著書の内容から、子どもに見られる不安定な愛着の特徴とは、幼児期には、母子分離への不安や抵抗、多動性、癇癪、攻撃性の強さなどがあります。

著者はこれまで療育現場で未就学児との関わりもありますが、不安定な愛着の子どもには、母子分離への過度な不安、ADHDと見分けることが難しい多動な様子(併存していることもあります)、すぐに癇癪やパニックを起こすなど感情のコントロール力が極端に弱い、相手を困らせる行動をする、など、関わり方の難しさを感じる内容が豊富にあったように思います。

一方で、適切な対応や支援を行うことで、上記の〝問題行動″は少しずつ減少していくことからも〝早期発見・早期支援″はとても重要だと実感しています。

 

 


しかし、著書の〝問題行動″に対して適切な対応をしていかないと、以下のような状態像へと発展する場合もあると考えられています(以下、著書引用)。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)や反抗挑戦性障害といった行動上の問題に発展する。一部では情緒不安定な傾向が強まり、思春期以降、気分障害や境界性パーソナリティ障害に発展する場合もある。

 

著書の内容にある〝反抗挑戦性障害″は、ADHDの〝二次障害″として見られることがよくあると言われています。

つまり、〝一次障害″としてADHDがある状態において、その子どもの状態に合わない環境・対応などが長期化することで、〝二次障害″としての〝反抗挑戦性障害″へと発展していくといったものです。

著者は学童期の子どもとの関わりの中で〝反抗挑戦性障害″だと思われる児童と関わったことが少なからずあります。

こうした児童に共通する背景には、本人に合わない環境での関わりの長期化や虐待ケースが多いといった印象があります。

もちろん、〝早期発見・早期支援″によって、症状は時間をかけてよくなる場合も多くあります。

一方で、早急に介入をしないと、思春期以降には〝素行障害″へとさらに状態が悪くなってしまうことが多いと言われています。。

 

 


以上のケースは周囲から見ても目に見える形で〝問題行動″がエスカレートしていく場合です。

一方で、著書には、一度〝問題行動″が落ち着き、過度に良い子になったり、一時的に〝問題行動″が見られなくなるケースもあると言われています。

しかし、こうしたケースにおいても以下のような〝問題行動″へと発展する可能性があると考えられています(以下、著書引用)。

思春期以降、何らかの挫折をきっかけとして、不安障害や摂食障害、うつなどの気分障害、非行や薬物などへの依存、境界性パーソナリティ障害などの問題を呈してくることも少なくない。

 

著書の内容から、〝問題行動″が落ち着いたと思われるケースにおいても、思春期以降に生じる何らかの経験(挫折など)が引き金となり、様々な〝精神障害″へと問題が顕在化することも少なからずあると言えます。

著者も療育現場では、これまで見られていた〝問題行動″が減少し、だいぶ落ち着いてきたと感じていた子どもが、小学校高学年になってから、再度、別な形で〝問題行動″が見られるようになったケースもあります。

これまで落ち着いていた分、〝問題行動″が生じるきっかけにばかり目が向いていましたが、その子どもの場合、背景には〝発達障害″、中でも〝ASD″の発達特性が背景にあり(それまで気づかれずにいた)、それが要因となって‟問題行動″が顕在化してきたのだと今では感じています。

発達障害″は、先天性のものですので、〝愛着障害″と言った後天性とは異なるもののようですが、安定した〝愛着″とはその人の中に〝心の安全基地(他者への信頼感)″が確立されている状態だと言えます。

つまり、〝発達障害″に対する周囲の適切な理解や対応がないと、〝愛着″が不安定な状態になっていくことは想像できます(長期化すると〝愛着障害″へのリスクを高める)。

これは裏を返せば、〝発達障害″が仮にあったとしても、本人への理解や支援が適切に行われていれば、安定した愛着を築いていくことができるのだと言えます。

 

 


以上、【子どもに見られる不安定な愛着の特徴ついて】療育経験を通して考えるについて見てきました。

これまで見てきことから、不安定な愛着はその後の人生において様々な障壁を生むことに繋がります。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちが安定した愛着関係を築いていけるように、一人ひとりの子どもたちのことを深く理解していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「発達障害の二次障害について:ADHDを例に考える

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岡田尊司(2014)母という病.ポプラ新書.

-不安定な愛着

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