〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
子どもとは親など特定の養育者との関わりを通して〝愛着″関係を築いていきます。
それでは、子どもが愛着関係を築いていく上で、男女差や子育て経験による違いなどがどのように愛着関係に影響すると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、子どもとの愛着関係について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、男女差及び子育て経験の違いを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「篠原郁子(2024)子どものこころは大人と育つ:アタッチメント理論とメンタライジング.光文社新書.」です。
子どもとの愛着関係:男女差の違い
以下、著書を引用しながら見ていきます。
まとめると、赤ちゃんの気持ちの存在がどの程度明確であると感じるかについての評定値は、男性と女性との間で差があり、女性の方がどちらかというと明確に心の存在を感じるという傾向がありそうです。
著書の内容から、一般的に女性の方が男性よりも子どもの〝心″の存在に目を向ける傾向が高いとの記載があります。
私たちは〝愛着″と言えば、何となく母親との絆を意識するケースが多いのではないかと思います。
それは、一般的に、子どもの〝心″の状態に目を向ける傾向が女性の方が高いという所から来ているのかもしれません。
もちろん、男性の中にも非常に子どもの〝心″の状態を深く理解することに長けている方もいると思います。
今回は、あくまでも、一般的な傾向を示したものです。
また、ここ最近では、男性が子育てをする機会(子どもと関わる機会)も増えています。
そのため、今後は男女による愛着関係の質の違いなどもさらに深く理解されるようになるかもしれません。
子どもとの愛着関係:子育て経験の違い
以下、著書を引用しながら見ていきます。
愛ちゃんに対して、具体的な内容を伴う心の状態を感じることは、赤ちゃんと接する経験の違いによって違いあり、今現在、赤ちゃんを育てているお母さん方の方が、より多くの内容にわたる赤ちゃんの気持ちを報告してくれました。
著書の内容から、赤ちゃんの気持ちに目を向ける傾向は、子育て経験の違いが影響していることが分かっています。
つまり、子育て経験のある大人(今現在子育中など)は、子どもの〝心″の状態により多くの意識を向ける傾向があると言えます。
この点に関しては、著者は療育現場で子どもたちと関わる前後で、著者自身にも同様の変化があったと実感しています。
療育現場で子どもたちと関わったことで、著者は子どもたちの〝心″の状態に目を向ける機会が増えたと感じています。
もちろん、そのような環境にいるので当然と言えば当然ですが、刻々と変化する子どもの〝心″に目を向け、それに対して〝応答″することは簡単ではありません。
著者の中には、〝様々なわからなさ″や〝どう応えていけばいいのかわからない戸惑い″などを多く経験することができました(もちろん、今も進行中です)。
このような子どもたちとの関わりを通して、子どものことを考える癖、自分の意識を子どもに向け続けることを学んでいったのだと思います。
つまり、目の前で関わる〝子どもの存在″がいて初めて、子どものことを想像する動機が生まれ、子どもの〝心″の状態を想像する経験と力が見についていくのだと思います。
もちろん、同じように子育て経験に関わっていても、子どもへの関わり方・気持ちの理解には人によって違いはあると思います。
一方で、著者が見てきた療育現場で子どもたちと関わるスタッフは、経験を重ねることで少しずつ子どもへの理解が深まっていることを目にしてきています。
こういった観点から、著者は子どもたちを〝育てる″ことで、初めて子どもたちの〝心″を言葉に置き換える力が身に付いていくのだと思っています。
以上、【子どもとの愛着関係について】男女差及び子育て経験の違いを通して考えるについて見てきました。
最近では、男性が育児に関わる機会も増えていますし、男女の差による愛着関係にも質的に違いがあることを述べている方もいます。
忘れてはならないのは、子どもにとって重要な他者(愛着対象となる)は一人の養育者から始まるということであり、それは、女性・男性など性別は重要ではないということ、さらに、子育て経験の有無を問わないことだと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちの心を理解していくために、日頃から子どものたちの様子をよく観察することを継続していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【愛着で大切な〝マインドマインデッドネス″について】療育経験を通して考える」
篠原郁子(2024)子どものこころは大人と育つ:アタッチメント理論とメンタライジング.光文社新書.