〝愛着‟とは〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
愛着に問題があると、〝愛着障害″へと繋がる場合もあります。
最近では、子どもだけではなく〝大人の愛着障害″についても関心が高まってきています。
一方で、〝大人の愛着障害″については、正式な疾病概念は存在していません。
関連記事:「【大人の愛着障害は診断可能なのか】大人の愛着の問題について考える」
そのため、今回は、〝大人の愛着障害″を〝愛着の問題″という形で捉えながら話を進めていきます。
それでは、大人の愛着障害(愛着の問題)に至る原因として、どのような要因があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、大人の愛着障害(愛着の問題)の原因について、愛着形成がうまくいかない養育者の7つの特徴を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「村上伸治(2024)心のお医者さんに聞いてみよう 大人の愛着障害 「安心感」と「自己肯定感」を育む方法.大和出版.」です。
大人の愛着障害の原因:愛着形成がうまくいかない養育者の7つの特徴
著書には、大人の愛着障害(愛着の問題)の原因に繋がる養育者の7つの特徴についての記載があります(以下、著書引用)。
典型例は明らかな暴力や無関心
親自身が不安定な状態
親が別のことにかかりきりで、結果的に関心をもたれなかった
条件つきの愛情で、素の自分を見てもらえなかった
親が忙しそう、しんどそう
「しっかりした子」とほめられ、甘えることができなくなった
自閉スペクトラム症があると、愛着未形成のまま学校生活へ
それでは、次に、7つの特徴について具体的に見ていきます。
1.典型例は明らかな暴力や無関心
不安定な愛着(中でもDタイプに相当する)の中でも、特に、愛着障害に繋がる最たるものは、虐待ケースです。
虐待にも、身体的虐待・心理的虐待・性的虐待・ネグレクトなど様々なものがあります。
このように、不適切な養育環境で育った子どもたちは、その後の人生において、自他への信頼感の欠如や精神疾患の発症のリスクを高めてしまうこと、また、脳へのダメージ(脳の形そのものが変形してしまう)など、様々な所において支障が生じると考えられています。
親自身が不安定な状態
親の情緒が安定していないと(様々な背景要因があります)、気分でコロコロと子どもへの関わり方が変わることがあります。
子どもにとって、養育者の態度が一貫していることが心理的安全基地になる条件としてとても大切です。
もちろん、多少の気分の変調はあるにせよ、大幅に態度が変ってしまうと、子どもは混乱し、心理的な安全基地の感覚を得ることが難しくなります。
親が別のことにかかりきりで、結果的に関心をもたれなかった
結果的にネグレクトのケースになってしまう状態です。
親が別のことにかかりきりになる背景には様々あると言えますが、例えば、仕事に多くの時間が取られてしまうことで、ほとんど子どもと情緒的な交流を持つ時間が取れないなどがあります。
条件つきの愛情で、素の自分を見てもらえなかった
条件付きの愛情とは、本来理想となるありのままの子どもを愛する状態とは大きく異なるものです。
例えば、親の言うことを聞いた状態のみ愛される、試験やテストでうまくいったときだけ認められるなどがあります。
素の自分ではなく、あくまでも、親の理想に応えた時だけ認められている状態です。
親が忙しそう、しんどそう
子どもが親の忙しさ・大変さを察して行動している状態です。
親からすると、こうした子どもは自律的に振る舞っており、早熟なようにも見えますが、子ども自身からすると、本当は親に甘えたいがそれが叶わない状態(我慢している状態)が続いていると言えます。
「しっかりした子」とほめられ、甘えることができなくなった
忙しい親の手伝いや兄弟の手伝いをする子どもに、親がしっかりした子と褒め・認めることで、子ども自身が親を甘えることが難しくなってしまった状態だと言えます。
そのため、子どもは常に、親に甘えず(わがままを言わず)、しっかりした子どもを演じ続けるサイクルに入っていると言えます。
自閉スペクトラム症があると、愛着未形成のまま学校生活へ
ASD(自閉スペクトラム症)など、子どもに発達障害がある場合には、愛着形成が遅れる、あるいは特異的な愛着形成を示す場合があります。
そのため、養育者から見てどのように関わったらいいかがわからず、安定した愛着形成が遅れる、あるいは未形成の状態が続く場合があります。
以上、【大人の愛着障害の原因】愛着形成がうまくいかない養育者の7つの特徴について見てきました。
愛着形成で大切となるのが、子ども自身が親の愛情をどのように感じているかが大切だと考えられています。
そのため、親自身が子どもに愛情を注いでいると感じていても、それが子どもに伝わらない場合には、うまく愛着が形成されない場合があります。
また、安定した愛着形成は、いつからでも、誰とでも(養育者以外の人でも)可能だと考えられています。
そのため、できるだけ早期に愛着への理解と介入を行う視点が重要だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育経験の中で、子どもとの関わりを通して、安定した愛着形成の重要性を実感していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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村上伸治(2024)心のお医者さんに聞いてみよう 大人の愛着障害 「安心感」と「自己肯定感」を育む方法.大和出版.