〝境界知能″とは、〝知的機能が平均以下であり、かつ「知的障害」に該当しない状態″の人たちのことを指します。
IQ(知能指数)で言うと、70~84のゾーンに当たります(71~85と記載されている文献もあります)。
〝境界知能″の子どものたちは、勉強面や生活面など様々な所で躓きが見られる場合があります。
それでは、境界知能の子どもの支援を考えた場合、どのような目標設定が大切になってくるのでしょうか?
そこで、今回は、境界知能の子どもの支援目標について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、低めの目標を設定することの大切さについて理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「梅永雄二(2024)教師、支援者、親のための境界知能の人の特性と支援がわかる本.中央法規.」です。
【境界知能の子どもの支援目標について】低めの目標を設定することの大切さ
以下、著書を引用しながら見ていきます。
基本的な考え方として言えることもあります。境界知能の場合、勉強面でも生活面でも平均に対して70~80%の目標設定を心がけるのがよいということです。
境界知能の子どもも能力がまったく伸びないわけではありません。本人のペースでじっくり学習していきます。そのための目安が70~80%なのです。
著書の内容から、〝境界知能の子どもの支援目標″は、勉強面・生活面において、70~80%といった低めの目標設定を心掛ける必要があるとされています。
それは、境界知能の子どもは様々な力を獲得していくのが〝ゆっくり″なため、本人の能力にあった課題設定を定型発達の水準(100%前後)より下げる、つまり70~80%程度に設定する必要があります。
例えば、言語理解に苦手さがある場合、平均的な基準値を設定して関わろうとすると、境界知能の子どもには、多大な負荷がかかると言えます。
言語理解力が、定型発達児と比べて、70~84の水準にあるため(あくまでも目安です)、理解するのに時間がかかるためです。
そして、境界知能の子どもは、知的障害の子ども同様に、生活から勉強まで様々な領域に躓きが生じやすいと考えられています。
そのため、全体的にハードルを下げてサポートしていくことが重要です。
一方で、境界知能の子どもの多くは、発達障害など他の障害との併存がなければ基本的には、通常級に所属していることが多くあります。
そのため、支援が受けにくい状態にあると言えますが、ここでは〝合理的配慮″の必要性の検討についても見ていきます。
合理的配慮の必要性について
〝合理的配慮″とは、簡単に言えば、それぞれの過ごしやすさを考え、それぞれに応じて対応を変えることを指します。
つまり、みんなと一緒(平等性)ではなく、一人ひとりの違いを理解した対応(公平性)を取っていくことです。
境界知能の子どもが他の障害の併存がなく通常学級に所属している場合、苦手な学習面へのサポートを得られることがあります。
つまり、合理的配慮を得られるということですが、それが可能かどうか、どの程度可能かどうかは、学校の考え方や担任の先生次第といった所が大きいため、まずは相談していくことが必要だと言えます。
関連記事:「【合理的配慮とは何か?】発達障害児・者支援の経験を通して考える」
著者の経験談
著者がこれまで見てきた子どもたちの中には、境界知能の可能性が高いと感じた子どもが少なからずいたと感じています。
境界知能の子どもは、周囲から見て努力が足りないなどと見られることもあるため、課題設定を本人の能力以上に設けてしまう場合があります。
著者は以前、明らかに境界知能の水準の子どもであったにもかかわらず、学校側が高いハードルを設定してしまったことで、その後、二次的な問題に至ってしまったケースに出会ったこともあります。
そのため、いかに課題のハードルを低く設定して、本人の学習への意欲が低下しない環境・対応方法を考えていくことがとても大切なことだと痛感させられました。
また、こうした子どもたちが通常学級でうまくやっていくためには、やはり、合理的配慮を受けることが必要だと思います。
例えば、注意力に苦手さがある場合には席を前の方にする、勉強に遅れがある場合には宿題の量を調整する、口頭理解が難しい場合には短く簡潔に説明したり視覚情報で伝えるなど、様々な方法があります。
合理的配慮がどの程度受けられるかどうかは、学校側の教育方針や担任の先生の考え方や他の先生との連携など様々な要因があると思います。
合理的配慮を受けることができた子どもたちは、学校への適応がとても高くなるといった印象もまた著者の実感としてあります。
以上、【境界知能の子どもの支援目標について】低めの目標を設定することの大切さについて見てきました。
境界知能の子どもに対しては、障害の判定が無い場合には、低めの目標設定がとても大切だと思います。
また、合理的配慮の視点も必須だと言えます。
そして、生涯にわたって支援が必要な人たちだとも言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も社会的にはまだまだ支援が行き届いていない境界知能の人たちへの理解と支援について、今後も学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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梅永雄二(2024)教師、支援者、親のための境界知能の人の特性と支援がわかる本.中央法規.