発達障害児・者には様々な感覚の問題が見られると言われています。
そのため、発達障害児・者支援に携わる人たちにとって、感覚の問題への理解と対応に関する知識は必須であると言えます。
感覚の問題を考えるにあたってとても大切な感覚として〝固有感覚″があります。
〝固有感覚″とは、筋肉の収縮及び関節の曲がり具合から生じる感覚だと言われています。
そして、〝固有感覚″には様々な種類があると言われています。
それでは、固有感覚には一体どのような種類があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、固有感覚にはどのような種類があるのかについて、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、4つの種類を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.」です。
固有感覚の4つの種類について
著書には〝固有感覚″の4つの種類が記載されています(以下、著書引用)。
重量感覚 運動感覚 位置感覚 抵抗感覚
それでは、次に、それぞれについて見ていきます。
1.重量感覚
以下、著書を引用しながら見ていきます。
物をもったときの重さを把握する感覚
〝重量感覚″は、荷物など物を持った時に重さを意識する感覚です。
私たちが、物を持つ際に、その物の重い軽いといった重量を筋肉の弛緩や関節の屈曲から感知して力加減を調整しながら物を持ち・運ぶことができるのも〝重量感覚″の働きがあるからです。
2.運動感覚
以下、著書を引用しながら見ていきます。
身体の加速度や方向を把握する感覚
〝運動感覚″は、走る(歩く)時の加速度や方向を意識する感覚です。
私たちは、だいたい50%の力で走ったり、100%の力で走るなど加速度を調節することが可能です。
また、右方向・左方向・前・後ろなど自分の体が進んでいる方向の把握も〝運動感覚″による働きです。
3.位置感覚
以下、著書を引用しながら見ていきます。
身体の各部の位置を把握する感覚
〝位置感覚″は、身体の関節や筋肉の位置を意識する感覚です。
例えば、ストレッチやマッサージなどは、目をつぶっていても、身体のどの部分が伸びているのかを把握することができます。
こうした働きは〝位置感覚″によるものです。
4.抵抗感覚
以下、著書を引用しながら見ていきます。
押す・押されるときの力を把握する感覚
〝抵抗感覚″は、押したり、押されたりする時に意識する感覚です。
例えば、相撲ごっこ、手押し相撲、綱引きなど、押す・押される、引く・引かれるなどの遊びはまさに〝抵抗感覚″を意識することのできる遊びです。
著者のコメント
今回見てきた4種類の〝固有感覚″を見ても、実に多くの種類の固有感覚が普段の生活で使用されていることに気付かされます。
著者自身、療育現場で発達障害など発達に躓きのある子どもたちと関わってきていますが、子どもたちの中には、〝固有感覚″が未発達だと感じる子どもも多くいます。
例えば、物を直ぐに落とす、少し押されると倒れる、体の位置がよく把握できていない、歩く速さ・足る速さをうまく調節できない、などこうした状態はおそらく〝固有感覚″がまだうまく育っていないからだと思います。
そして、〝固有感覚″の発達の理解が不足していると、例えば、物を直ぐに落とす→注意力不足が原因、といった間違った状態像の理解に繋がることも予測できます(もちろん、注意力の問題で物を落とす場合もあります)。
また、〝固有感覚″が未発達であると、生活の中の困り感に繋がったり、運動やスポーツで自分のやりたいことがうまくできないことに繋がる可能性もあります。
そのため、〝固有感覚″の理解と支援方法についての知識を備えておくことはとても大切なことだと感じています。
以上、【固有感覚にはどのような種類があるのか?】4つの種類を通して考えるについて見てきました。
私たちには普段の生活の中で原始感覚といったほとんど意識することのない感覚を様々な場面で使って生きています。
今回見てきた固有感覚も原始感覚の一つだと言われています。
そして、固有感覚にも様々な種類のものがあるという理解は、人間の感覚・身体のさらなる理解に繋がっていくものだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も様々な感覚について理解を深めていきながら、その知見を療育現場に活かす目を養っていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.