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【叱ることを手放す前さばきの視点について】発達障害児支援の現場を通して考える

投稿日:2024年8月17日 更新日:

著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。

子どもたちは、活動の中で、時折、望ましくない行動を取ることがあります。

このような場合に、著者は〝叱る″べきか、どのように〝叱る″べきかで悩むことがあります。

その一方で、〝叱る″以外の対処法もあると実感しています。

 

それでは、叱ることを防ぐ(手放す)ための方法として、どのようなものがあると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、叱ることを手放す前さばきの視点について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「村中直人(2024)「叱れば人は育つ」は幻想.PHP新書.」です。

 

 

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叱ることを手放す前さばきの視点

以下、著書を引用しながら見ていきます。

私が叱ることを手放すために重要だと考えるようになったことがあります。それは、「ことが起こるその前に何をするのか」という視点です。

私はこれを「前さばき」と呼んでいます。

 

叱らなければいけない状態が発生しないよう、事前に重要なメッセージを伝え、理解し、学んでもらうことが重要なのです。

 

著書には、叱ることを手放す視点として、〝前さばき″の方法が記載されています。

叱る″ことは、基本的に望ましくない行動(叱る側から見て)を見た後に行うものです。

つまり、事後的なものだと言えます。

一方で、〝前さばき″とは、〝叱る″状況が発生しないように事前に対策を講じるといった事前の対応だと言えます。

他の記事でも書きましたが、事後的な〝叱る″という行為は、相手の学習に繋がらないため、行動の改善が薄いと考えられています。

 

関連記事:「【叱ることには効果があるのか?】発達障害児支援の現場を通して考える

 

そのため、〝叱る″という状況を可能な限り予防するという視点(〝前さばき″の視点)がとても大切だと著者も感じています。

 

 


それでは、次に、〝前さばき″の重要性について、著者の療育現場での経験を踏まえて述べていきます。

 

著者の経験談

著者の療育現場には様々な発達特性が見られる子どもや、発達の速度がゆっくりである子どもたちが多くいます。

こうした子どもたちは、脳の特性上、衝動的な行動を取ったり、周囲の状況が理解できずに望ましくない行動を取ることがあります。

例えば、他児が使っている物を勝手に取る、他児が近づくと手が出る、順番やルールが守れない、他児が嫌がっていても自分のペースで行動する、他児が気になることを平気で言っていまう・・・・・など多くの内容があります。

こうした行動が脳の特性からくる、あるいは、経験不足からくる、誤った学習をしているなどの知識や理解がないと、関わる大人はどうしても〝叱る″という手段を講じてしまうと思います。

以前の著者も決して多くはありませんでしたが、悪いと思った行動に関しては〝叱る″という行動を取っていたと思います(それも、知識や理解の不足からくるものでした)。

叱る″には、即効性はありますが、持続性や行動の修正などの発展性がほとんど期待できないこともこれまで経験から実感しています。

そのため、大切になってくるのが、今回取り上げた〝前さばき″、つまり、事前に〝叱る″状況を生み出さないような予防的視点だと感じています。

例えば、他児が使っている物を勝手に取る→できるだけ環境を分けて過ごす・他児が使っているということを事前に伝える、順番やルールが守れない→事前に活動の約束事を決め伝えておく(完璧を目指さずできたところをしっかりと褒めていく)、など事前にできることは多くあります。

中には、〝前さばき″の対応が難しいものもあるかと思いますが、○○のように行動すると良いといった次回に繋がるフィードバックもまたとても効果があると感じています。

大切なことは、叱責をくり返すことで、子どもが望ましい行動を学習する機会が奪ってしまわないように、大人との信頼関係の構築や自尊心をしっかりと育んでいくことだと思っています。

前さばき″の視点を持ち、対応することで、著者は子どもたちを褒める機会が逆に増えたことも実感としてあります。

 

 


以上、【叱ることを手放す前さばきの視点について】発達障害児支援の現場を通して考えるについて見てきました。

発達障害があると、日頃から怒られる場面が増えてしまうことがあります。

怒られることは、望ましい行動の学習に繋がるのではなく、ただ、恐怖によって行動が制限されてしまう(周囲の顔色を見て委縮するなど)ことになります。

そのため、特定の人に子育てが集中しすぎないように支援機関と繋がる、支援者同士が共に協力して子どもたちを育てていくといったネットワークが非常に大切だと思います。

もちろん、発達特性や発達に関する知識もとても大切です。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場を通して、子どもたちのより良い育ちに少しでも貢献していけるように、前さばきの視点を強化していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【叱ることの効果について】発達障害児支援の現場を通して考える

 

 

村中直人(2024)「叱れば人は育つ」は幻想.PHP新書.



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