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【叱ることには効果があるのか?】発達障害児支援の現場を通して考える

投稿日:2024年8月12日 更新日:

著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。

子どもたちは日々の活動の中で、望ましくない行動を時折見せることがあります。

そのような時に、関わり手が、〝叱る″べきかどうか?どのように〝叱る″べきかで悩むことは多いと思います。

著者も日々、子どもたちが見せる、やって欲しくない行動に対して、どのように関わればよいか試行錯誤しています。

 

それでは、そもそも、子どもの行動を変えたい場合に、叱ることには効果があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、叱ることには効果があるのかについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「村中直人(2024)「叱れば人は育つ」は幻想.PHP新書.」です。

 

 

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叱ることには効果があるのか?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

つまり年齢に関係なく、人間という存在は叱られることでは学ばないし、育たないのです。

 

著書の内容から、先に結論を述べると、叱ることを通して、人は物事を学習したり、うまく育つことはないと言えます。

もちろん、特定の行動の抑止力になる可能性はあるかもしれませんが、長い目で見て、人の成長に大きく貢献するとは考えられていないようです。

 

それでは、なぜ、叱ることは人の育ちに効果がないのでしょうか?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

叱られた子どもは、なぜ同じことを繰り返すのか。

その答えは、「防御システム」とも呼ばれる、脳の危機対応メカニズムにありました。

 

ネットワーク(防御システム)が活性化するとき、人は「闘争・逃走反応(Fight or Flight Response)」と呼ばれる状態になることが知られています。

 

重要なことは、この防御システムが人の学びや成長とは真逆のシステムであることです。

 

著書の内容では、叱ることが人の育ちに効果がない理由として、〝防御システム″が影響していると考えられています。

防御システム″とは、自分を守るシステムですので、叱責されるなど、自分のネガティブ感情を脅かされる状況において、強く活性化するシステムだと言えます。

つまり、叱責されることで、自己防衛機能(防御システム)が活性化し、〝闘争・逃走反応″といった戦うか・逃げるかという状態に陥り、多くの場合、逃げること(謝る・言う通りにするなど)を取る場合が多いと考えられています。

なぜなら、多くの場合、叱る人の方が、立場が上のケースが多いからです。

そして、自分の感情が脅かされる状態において、その状態を何とか免れようとする行動を繰り返しても、人は学習したり、成長することは難しいと言えます。

 

 

著者の経験談

最近、著者は療育現場で子どもたちを叱ることはほとんどなくなりました。

一方で、かつての著者は少なからず子どもたちを叱責する場面が多かったと思います。

当時の著者は、子どもたちが見せる望ましくない行動に対して、叱ること、注意することが大人の役割だと思っていました。

叱ることを通して、子どもによっては望ましくない行動を一時的に止めることもあります。

一方で、長期の子どもたちの育ちを考えた場合、叱ることは思いのほか効果がないと感じることが多くなっていきました。

それも、叱ることによる弊害を現場で感じる機会が増えたためです。

叱ることで子どもたちは、著者の顔色を見て行動するようになったり、〝どうせまた怒られる″といった怒られるか怒られないかで自分の行動基準を作っている様子が見えたからです。

そして、どこか大人に対して、〝安心感を得られていない″様子が直感的に感じられるようになったからです。

こうしたネガティブ経験を踏まえて、少しずつではありますが、著者は子どもたちを叱らずに対応することを考えるようになっていきました。

叱らずに対応し続けた結果、子どもたちは、大人への〝信頼や安心感の獲得″や望ましくない行動を自主的に修正しようとする様子が多く見えるようになっていきました。

もちろん、危険行為など命の危機に繋がる行動はる叱ることは必要だとは思いますが、それ以外には、いかに行動の修正を促せるような関わり方(叱責ではなく)の工夫がとても大切だと実感できるようになりました。

 

 


以上、【叱ることには効果があるのか?】発達障害児支援の現場を通して考えるについて見てきました。

子どもを注意せずに対応することは思いのほか難しいことでもあります。

それは、私たちが子どもの頃から親や先生から叱られる対応をされてきたことで、それは必要な関わりといったことが無意識下に刷り込まれていることや、本能的に相手のネガティブ行動を責めたくなる思いが潜んでいるからだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちがより良い育ちをしていけるように、自らの関わり方を常に見つめ直していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「療育で大切な視点-子どもへの「叱り方」について-

関連記事:「愛着に問題のある子の支援-「叱る」対応の問題点について-

関連記事:「【間違った〝叱り方″による問題点とは?】発達障害児支援の現場を通して考える

 

 

村中直人(2024)「叱れば人は育つ」は幻想.PHP新書.


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